The depth S.S. Yongala shipwreck sourrounded by small fishes.
© Liz Rogers
ダイビング

世界各地の沈船ダイビングスポット

スコットランドの冷たい海からグレートバリアリーフまで、世界各地の沈船(レック)ダイビングスポットを紹介する。
Written by Brooke Morton
読み終わるまで:6分Published on
Diving close to the bug of the U.S.S. Kittiwake shipwreck.

U.S.S. Kittiwake

© Predrag Vuckovic

沈船には人の想像力を駆り立てる何かがあり、私たちは人の命を奪った恐怖のストーリーや、世界の海を股にかけた豪華絢爛な船が壊れ海底に沈む光景などを思い描かずにはいられない。そしてその「何か」は冒険好きのダイバーやフォトグラファーを磁石のように魅了し続けている。今回はその中からオススメのスポットを紹介する。

簡単に楽しみたいなら

U.S.S. Kittiwake
特徴:浅瀬ゆえに1日中ダイビングが楽しめる
場所:ケイマン諸島
このスポットは沈没船探険の初心者に理想的だ。グランド・ケイマン島のSeven Mile Beachで2011年に沈められた全長76.5mのKittiwakeは、沈められる前に危険物がすべて取り除かれている他、ドアとハッチもすべて外され、どの船室にも最低ひとつは出入口が確保されている。
レックダイビングの経験があるダイバーならば、この船の5つの階層をすべて行き来することが可能だ。一番海面に近いのは操舵とコンパスが備わっている操舵室となっている。また2つの高圧室とダイビングベルもハイライトとなっている。
A diver coming out of the insideof the shipwreck.

U.S.S. Kittiwake

© Stephen Frink

世界最大の沈船

S.S. President Coolidge
特徴:豊富な兵器類、アクセス便利、ルートマップ完備
場所:バヌアツ
この沈船はスキーリゾートのようなものだ。この巨大外洋船を改造した軍輸送船には様々なルートマップが用意されており、初心者から中上級者までが楽しめる。この世界最大の沈船はバヌアツのEspiritu Santoの沖に位置しているため、アクセスも非常に便利だ。
初心者の場合は、まず水深20mの艦首を目指すのが良いだろう。その先、水深33mにはライフルやガスマスク、ヘルメットなどが沈んでいる。これらを楽しんでもまだ満足できないというダイバーは、ガイドの指示に従いながら、2つの貨物倉庫や医療室に潜ることも可能だ。
Divers doiv the U.S.S. President Coolidge

S.S. President Coolidge

© National Geographic/Getty Images

パラボラアンテナへのダイブ

U.S.N.S General Hoyt S. Vendenberg
特徴:エレベーターシャフトでフリーフォールが楽しめる
場所:フロリダ州キーウェスト
上級者向けのこのスポットでは、11個のエレベーターシャフトのひとつから158mのバンジージャンプのようにダイビングし、好きなフロアを探索できる。尚、ダイビングのテクニックが不足している人でもこの米空軍のミサイル追跡艦のエレベーターシャフトでフリーフォールを楽しめる。
2009年に沈められたこの艦は危険物がすべて取り除かれており、またドアはすべて外され、出入口にはトーチが備え付けられるなど、安全性の向上も計られている。この艦の特徴は、艦内に生息している2m級のイタヤラとパラボラアンテナで、パラボラアンテナは内部の探索を楽しんだ後に通り抜けることが可能だ。尚、この艦はSF映画『ヴァイラス』の舞台として使用されたため、通路にはロシア語が書かれている。
A Diver diving through the ship’s huge satellite.

U.S.N.S. General Hoyt S. Vandenberg

© Marko Wramén

冷たい海を好むなら

S.M.S Coln
特徴:歴史が感じられる
場所:スコットランド
ダイビングショップScapa ScubaのインストラクターKieran Hattonは、スコットランド北部オークニー諸島のScapa Flowの冷たい海水について、「冷たい水が嫌なら、ダイビングはやめた方がいい」と言う。その冷たいScapa Flowには1919年、第一次世界大戦で沈んだドイツ海軍の戦艦が複数沈んでいる。
その中でHattonが勧めるのが全長155mのドイツ海軍巡洋艦S.M.S. Colnで、この艦は右舷を上にした状態で水深36mに沈んでいる。
「20世紀初頭の美しい戦艦の数々を楽しむことができる。あと腕程の長さの銃も沈んでいるよ」(Hatton)
The S.M.S. Coln shipwreck lying on its 	bow side.

Animation of the S.M.S. Coln

© 3deep Media

海洋生物の宝庫

S.S. Yongala
特徴:海洋生物の生態が楽しめる
場所:オーストラリア
S.S. Yongalaのデッキにはトビエイが生息し、艦尾にはタマカイが泳いでいる。またウミヘビ、ウミガメ、カクレクマノミなども1911年のサイクロンによって沈んだこの全長109mの蒸気船の内部に生息している。この沈船はグレートバリアリーフ海洋公園内、クイーンズランド州のCape Bowling Greenの12海里沖に沈んでいる。水深が28mで海流もあることからアジも多く生息しているこのスポットは、上級者向けだ。
The depth S.S. Yongala shipwreck sourrounded by small fishes.

S.S. Yongala

© Liz Rogers

第二次世界大戦の遺産

S.S. Thistlegorm
理由:第二次世界大戦の軍需品が確認できる
場所:エジプト
この沈船は閉所恐怖症の人には向いていないが、軍需品が詰まった部屋を数多く抱えている。英国海軍所属のこの商船は1941年に2発の爆弾を受け、 エジプトのSharm el-Sheikh付近の紅海に沈んだ。戦時中に沈んだため、倉庫には数多くの軍需品が眠っている。
この艦に挑むダイバーたちはBedfordのトラックやNorton 16Hのバイクの数々を眺めながら、自分の吐き出した空気が鏡のようになっている各部屋の天井にぶつからないように進んでいく。この船は水深30mにあり、また船尾が左舷に傾いていることから方向感覚が失われがちで、肉体的にも精神的にも疲弊しやすいので注意したい。
A motorcycle inside the S.S. Thistlegorm shipwreck.

S.S. Thistlegorm

© Bullspress / Solent News

ナイトダイビングに最適

神国丸
理由:旧式の給油船と豊富な海洋生物が楽しめる
場所:ミクロネシア
魚雷発射管から入り、煙突から抜け出ること−これはミクロネシアのトラック諸島に沈む神国丸の機関室に潜る際に教えられるインストラクションだ。全長165mの長さを誇るこの船の内部は迷路のような構造になっている。
長年現地でテクニカルダイバーを務めているBob Bodkinは、「深く潜る度に、この船の実態が掴めてくる」とその魅力について語っている。尚、この給油船は珊瑚に覆われているため、カニなど様々な海洋生物が生息しており、ナイトダイビングにも最適なスポットとして知られている。
神国丸

神国丸

© Adam Horwood

ダイビングをしない人には

Eduard Bohlen
理由:海の力を再確認できる
場所:ナミビア
ダイビングする必要がないからと言って、簡単に行ける場所ではない。フォトグラファーChristian Ghammachiは、「行くのは不可能に近い。上空を飛ぶだけだ。行くにはライセンスとガイドが必要で、特殊車両に乗らなければならない」と説明している。
この沈船は、1909年、船の墓場として知られるナミビアのSkeleton Coastの南の深い霧の中で沈没したが、そこは現在海岸から800m内陸に入った砂漠となっている。海に対する人間の無力さを改めて教えてくれる非常に貴重な光景だ。
The Eduard Bohlen shipwreck already covered by sand.

Eduard Bohlen shipwreck

© Christian Ghammachi