スポーツとしてのスノーバイクは急成長を遂げており、アクションスポーツのアスリート&ファンを魅了しつつある。
スノーモービルのヤング&アクティブバージョンと見られることもあるスノーバイクは、アクションスポーツを愛する者たちに全く新しいクリエイティビティの息吹とほぼ無限のポテンシャルをもたらしており、このエキサイティングで新しいスポーツが今後数年間でどこまで発展するのかに誰もが注視している。
壮大なバックカントリーでのフリーライディング、モトクロススタイルのハイスピードレース、またはクレイジーなフリースタイルコンテストと、スノーバイクでは多様なカテゴリーが続々と生まれており、アクションスポーツシーンの才能あるアスリートたちを惹きつけている。
また、各カテゴリーはそれぞれ急速に発展しており、ライダーたちはスノーバイクに秘められた可能性を見出しながら、自分たちの限界をプッシュしている。
手作りの改造パーツから始まったスノーバイクだが、その後テクノロジーが大きく発展したおかげで、近年では堰を切ったかのような急速な進化を遂げており、ライダーたちはこのミステリアスなマシンを乗りこなしながら、これまで考えられなかったような雪上でのコントロールスキルを習得している。
スノーバイクの生まれ故郷はアイダホのバックカントリーだが、現在ではヨーロッパや日本、米国、カナダなど世界各地のライダーたちが参入している。このスポーツがさらなる未開の地へと進むのは時間の問題だろう。
今回は、スノーバイクのクレイジーな世界について知っておくべき基礎知識を紹介しよう。
Q1:スノーバイクってどんなマシン?
スノーバイクは、基本的にはスノーモービルとモトクロスバイクをかけ合わせたマシンだ。
標準的なダートバイクのフレームとエンジン、サスペンションをベースに、前後ホイールを取り外し、フロントに1本のスキー、リアに専用設計のスノーモービルトラックを装着すれば、雪山がライダーに突きつけるあらゆるコンディションに対応できるスペシャルマシンが出来上がる。
Q2:スノーバイクはどうやって入手できる?
スノーバイクはまだスノーモービルやダートバイクのように店頭で購入できるほど普及していないが、自分のスノーバイクが欲しいと考えている人にグッドニュースがある。TimbersledやMotoTraxといったブランドからスノーバイク用の改造キットが市販されているので、自宅ガレージでほんの数時間作業すればダートバイクをスノーバイクに変えられるのだ。
もちろん、春が訪れて雪がなくなったあとは、ホイールを再装着してダートトラックを攻めることができる。
尚、スノーバイクのトラックシステムには、ロングトラックとショートトラックという2つの選択肢がある。
ロングトラックはレースやバックカントリーでのフリーライディングに適しており、後発のショートトラックは回転系やバックフリップなどのトリックを楽にメイクできるためフリースタイルに適している。
Q3:スノーモービルにできなくて、スノーバイクにできることは?
スノーバイクとスノーモービルの大きな違いは、重量と操縦性だ。
スノーモービルとは異なり、スノーバイクは軽量で敏捷性に優れているため、タイトなツリーラインや急斜面、テクニカルなジャンプの攻略がはるかに簡単だ。また、軽量のスノーバイクは大型のスノーモービルより滞空時のコントロール性にも優れており、クラッシュしてライダーの上にかぶさった際のダメージもやや小さい。
また、体重をかけて傾けられるという特徴が、ライディング全体に大きな違いをもたらしている。傾けることでより自在にマシンをコントロールができるので、コーナーリングスキルも際限なく高められる。
細いボディがフリースタイル(FMX)モトクロスライダーたちが培ったスキルを応用するのを極めて簡単にしているので、今後さらにテクニカルなトリックが生まれる可能性も高い。
Q4:スノーバイクシーンを牽引するリーダーたちは?
ここまで読めば簡単に分かるはずだが、スノーバイクは、スノーモービルやモトクロスのみならず、様々なシーンで活躍するアスリートたちを惹きつけている。
ライディングスキルとバイクの構造がパーフェクトにクロスオーバーしているモトクロスライダーたちは、スノーバイク全カテゴリーの牽引役に最適のようだ。
ロビー・“マッド”・マディソン、ロニー・ファイスト、レーガン・シーグといったモトクロスレジェンドたちはもちろん、アクセル・ホッジスなどの若手ライダー、ロブ・アデルバーグやジャクソン・ストロングなどのトップレベルライダーまで、多くのFMX / モトクロスライダーがこのワイルドで新しいウインタースポーツの最前線で活躍している。
ロビー・マディソン、ロニー・レナー、そしてスノーバイクレジェンドのレーガン・シーグたちが映像シリーズ『Powder Hounds』で雪山を巡りながら限界をプッシュしていることもあり、近年はスノーバイクのフリーライド的側面に注目が集まっている。このような映像は、バックカントリーでのスノーバイクが遂げてきた進歩とこれからの未来を提示している。
「スノーバイクを限界ギリギリまでプッシュして、可能性を確認するのはクールだね」と語るのは、アイダホでスノーバイクを初体験したマディソンだ。
「みんなでこのスポーツとコンセプトを進化させているし、みんなも雪山でトライしてもらいたいね。これまでで一番楽しいライディングだった」
8分
Powder Hounds:エピソード1
この “スノーバイク・パーティ” へ新たに加わった元FMXライダーが、イタリア出身のアルバロ・ダル・ファラだ。
かつてRed Bull X-Fightersのライダーとジャッジを務め、現在はDaboot FMX Teamのオーナーとして活動するダル・ファラは、2017年のウインターシーズンに向けて自慢のKawasaki 450 Magnetをスノーバイクに改造し、長年の夢だったドロミーティ山中のパークやピステ、パウダースノーでのライディングを楽しんだ。
「スノーバイクのライディングは、砂地でダートバイクを走らせるのに似ている。砂漠では重心を後側にキープして、荷重を抜かないようにする必要があるけれど、スノーバイクも同じ要領だ」とダル・ファラは説明する。
「スノーバイクに乗れば、絶対にスリルを感じられるはずさ。モトクロスの情熱を雪山にも持ち込みたい気分にさせてくれるんだ」
すっかりスノーバイクの虜になったダル・ファラは、冬になると自らが率いるDaboot FMX Teamのライダーたちを続々とスノーバイクへ誘い込んで、一緒にドロミーティの雪山を楽しんでいる。
しかし、スノーバイクに夢中なのはモトクロスライダーだけではない。
これまで長年に渡ってスノーモービルに熱中してきたMTBプロライダーのダレン・ベルクロスは、最近スノーバイクに切り替えて、冬季MTBトレーニングプログラムの一部に取り入れている。
「MTBとスノーバイクは直線上に位置していると思うよ」とベルクロスは語る。「体の反応、タイミング、ハンドアイコーディネーションなど、あらゆる部分が似ているんだ」
Red Bull Rampageでも活躍するベルクロスは、スノーバイクでのドロップとMTBでのドロップの相似性を発見しており、スノーバイクに出会って以来、毎冬を雪山で過ごしている。
「スノーバイクで山を駆けるたびに驚きがあるし、その可能性の大きさを日々学んでいるよ。ものすごく楽しいね!」
申し訳ございません。この動画は現在視聴できません。
しかし、現在のスノーバイクシーンを牽引している存在といえば、間違いなくブロック・ホイヤーだろう。
モトクロス / アリーナクロス / スノーモービルのプロライダーとして活躍した経験を持つホイヤーは、ワールドクラスのスノーバイクライダーに必要な全ての条件を備えており、その通りのパフォーマンスを見せている。世界各地の様々なイベントで勝利を収めているホイヤーは、現在スノーバイクレースシーンで “ナンバーワン” の称号を手にしている。
Q5:スノーバイクにはどんなコンテストやイベントがある?
スノーバイクの歴史はまだ短いが、イベントやコンテストの定着化が進んでいる。2017年に初めてX Gamesに採用され、スノーバイククロス(レース)とスノーバイクベストトリック(フリースタイル)の2イベントが開催され、当然ながら、これは非常に大きなステップとなった。
X Gamesへの採用によってスノーバイクへの注目度は俄然高まり、レースとフリースタイルの両カテゴリーにトップアスリートが多数参加するようになっている。
X Gamesのベストトリックでゴールドを獲得したロブ・アデルバーグのパフォーマンスをチェック!
また、X Gamesに続く形で、カナダ国内選手権Snow Bike MX Championshipが発足している他、ジャクソンホール・ヒルクライム世界選手権(ワイオミング州ジャクソンホールで開催されているスノーモービルのヒルクライムイベント)でスノーバイクの特設カテゴリーSnow Bike King of the Hillが併催されるなど、ワンオフイベントも世界各地で頻繁に開催されている。
Q6:スノーバイクに適した場所は?
スノーバイクに最適なのは、ディープパウダーの広大なバックカントリーだ。
アルバロ・ダル・ファラのようなトップライダーでない限り、大半のスキーリゾートはゲレンデ近くにスノーバイクを持ち込むのを許可しないだろう。つまり、ブリティッシュコロンビア、ロシア、日本、スウェーデンなどの人里離れたロケーションや、スノーバイク発祥の地アイダホが理想的だ。
ヨーロッパ・米国・日本ではスノーバイクを体験できるツアーが企画されており、カナダ・ウィスラーにはヘリでアクセスする究極のスノーバイク体験を提供する業者も存在する。
Q7:スノーバイクに必要なウェアは?
スノーバイクに乗るアスリートたちを見れば分かるが、スノーバイクのウェアはスノーモービルとモトクロスのミクスチャーだ。スノーバイクライダーの大半は、次のような組み合わせを選んでいる:
- モトクロス用ヘルメット
- スノーモービル用ゴーグル
- スノーモービル用アウターウェア
- モトクロス用ブーツ
Scott SportsやFXRのようなブランドは、数年前からスノーモービルライディングに特化したアウターウェアを手がけており、スノーバイクでもパーフェクトに機能するラインアップを用意している。
スノーモービル専用ブーツも存在するが、スノーバイクのライダーたちはギアやリアブレーキを操作しやすいサイズと形状を備えたモトクロス用ブーツを選んでいる。
Q8:スノーバイクでビッグエアはメイクできる?
これは “ビッグ” な質問だ。トラックやシステムが進化し、ライダーたちも空中でのコントロールに慣れてきているため、スノーバイクのジャンプサイズは日を追うごとに大きくなっている。
とはいえ、通常のモトクロスライダーが丘や砂漠、レーストラックなどでメイクしているジャンプサイズにはまだ遠く及ばないのが現状だ。
しかし、スノーバイクの発展に伴い、さらに多くのライダーがバックカントリーでスノーボード級のギャップやクリフドロップに挑むようになるはずだ。また、スノーバイク用レースサーキットでメイクされるジャンプも大型化するだろう。
個人的な意見を言えば、ライダーがクリフドロップからそのまま斜面を駆け上がり、もうひとつのビッグドロップに挑めるようになればエキサイティングだ。
スノーバイクライダーがスキーやスノーボードのスノーパークにある70フィート(約21m)級の大型キッカーやヒップ、その他のジャンプに挑むシーンはまだ見られないが、ごく近い将来に見られるようになることに期待したい。エアの滞空時間が長くなれば、トリックの種類も増えるはずだ。
無限の可能性を秘めているスノーバイクの未来に注目しよう。
Q10:スノーバイクの最新映像はどこでチェックできる?
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