ジェシー・アウグスティヌスやミッケル・バンのようなプロスノーボーダーがスキルを披露している動画をチェックしたことがある人は、具体的に何を意味するのかは分かっていなくても、《ジブ / Jib》という言葉を聞いたことがあるはずだ。《ジブ》とは、スロープスタイルイベントやプライベートセッションで確認できるボックスやレールなどの人工フィーチャーを使ったライディングを指す。
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第4話: ジェシー・アウグスティヌス
第4話あらすじ: プロスノーボーダーとして活躍するジェシー・アウグスティヌスが、自身のキャリアを振り返る。彼にスノーボードを与えた父とのエピソードなど、さまざまな「初めて」について語る。【プロ選手たちの「初めて」を振り返る(シーズン3/日本語字幕)】
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ジブの歴史
《ジブ》そのものの生みの親ではないが、カリフォルニア出身のサーフ・スケートボード・スノーボードのパイオニア、トム・シムスがこのタイプのトリックのメインストリーム化を助けたのは事実だ。
1970年代後半からスケートボードブランドSIMS Skateboardsを展開していたシムスはスケートボードシーンで大成功を収めていたが、その成功に甘んじることなくスノーボードにも進出し、1980年代中頃にいくつかのモデルを生み出すと、トップライダーたちを集めてチームを組み、さらにはマーケティングを展開した。
そして、チームに選ばれてSIMS Snowboardsのスノーボードでライディングするようになったテリー・キッドウェル、キース・キメル、ボブ・クライン、マイク・チャントリーは、すぐにスケートボード系トリックをスノーボードでも簡単にメイクできることに気が付いた。スケートボードのグラインドトリックの派生である《ジブ》もその中に含まれていた。
同時に、SIMS Snowboardsのチームフォトグラファーを担当していたバド・フォーセットが彼らのライディングを捉えたフォトを雑誌 “International Snowboard Magazine” へ送るようになるとチームの露出が増え、スケートボードにインスパイアされた《ジブ》をはじめとする革新的なライディングが世界的人気を獲得していった。
この結果、1990年代前半までにスケートボードシーンとスノーボードシーンの大規模なクロスオーバーが発生した。スケートボードに慣れ親しんでいた世代がキッドウェル、キメル、クライン、チャントリーを追従して《ジブ》を含むスケートボードトリックをスノーボードで試すようになったのはごく自然な流れだった。
02
スケートボードとの違い
スノーボードの《ジブ》は、スケートボードのグラインドトリックに似ている。スケートボードでグラインドトリックをメイクした経験がある人なら、スノーボードの《ジブ》をすぐに楽しめるだろう。なぜなら、スタンスや身体の動きが同じだからだ。実際のところでは、多くの人がスノーボードの《ジブ》の方が簡単だとしている。
とはいえ、スノーボードの《ジブ》にはグラインドと大きく異なる部分がある。なぜなら、誰もが知っている通り、スノーボードは両足をボードに固定するからだ。片足を上げようとすれば、そのままボードも持ち上がるので簡単にジャンプできる。
一方、スケートボードではそのようなジャンプはできない。なぜなら、足を上げるだけではボードが持ち上がらないからだ。その代わり、スケートボードでは《オーリー》をメイクする。ボードのテール(最後部)を足で叩くことでボードのノーズ(最前部)を持ち上げるのが《オーリー》だ。つまり、スケートボードではスノーボードよりも身体を細かく丁寧に動かす使う必要があるのだ。
また、トリックの練習もスノーボードの方が簡単だ。なぜなら、柔らかい雪の上に倒れることができるからだ。スケートボードでは、トリックメイクに失敗すればコンクリートに叩きつけられることになる。
03
How to ジブ
しかし、《ジブ》はそこまで簡単ではない。スケートボードでグラインド系トリックをメイクした経験がない人ならひときわ難しく感じるだろう。しかし、次のステップを踏んでいけば比較的簡単に楽しめるようになる。
- レールやボックスなどのフィーチャーに向かって直進する。ターンやスピードチェックは最低限に抑える。
- フィーチャーの終点、もしくはその少し先に視線を投げ、自分が向かう方向を意識する。
- 中速域までスピードアップする。スピードが高ければ高いほど、フィーチャーの後部を使うことになる。
- フィーチャーに近づいたらジャンプして上に乗る。スノーボードは両足に固定されているので、基本的には、スノーボードなしで飛び乗るイメージをすればOK。
- スピードをキープしてフィーチャーの終点までライディングしたあと、雪の上に着地する。つま先や踵のどちらかに重心が寄らないように意識する。
- 膝を使って衝撃を吸収しながら着地して、着地エリアに凹みを作らないようにする。そのまま直進を続けて、スローダウンできるタイミングで止まる。
上記すべてのステップで、スノーボードのベース(底)をフラットにキープして、エッジを使わないようにする。エッジを使おうとすればバランスを崩してしまう可能性がある。ちなみに、エッジがスムーズな《ジブ》専用カスタムボードを持っているライダーもいる。
まずはスノーパークのシンプルなボックスから始めよう。ボックスは幅があるのでレールよりもバランスが取りやすい。自信が深まったらレールなどの細くてチャレンジングなフィーチャーにトライしてみよう。
04
ジブに適したスノーボード
スノーボードの《ジブ》には “フリースタイルボード” が最適だ。“フリースタイルボード” は軽量&フレキシブルなショートボードで、ノーズとテールの形状が同じ “ツインチップ” なら、スタンスを気にせずにライディングできる。
Never Summer ProtoSlinger、YES Jackpot、Endeavor Pioneer、Niche Wraith、Burton Paramount、Slash Happy Place、CAPiTA Scott Stevens Pro、Lib Tech Skate Bananaあたりがベテランライダーとビギナーライダーの両方にオススメのモデルだ。
スノーボードに本格的に取り組んでいるライダーであろうと、スノーボードやフリースキーのイベントを観戦するのが好きなカジュアルライダーであろうと、《ジブ》ができるようになればスノーボードがさらに好きになるはずだ。ジブ未経験なら今冬に是非ともトライしてみよう。イメージよりも簡単だ!