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『スターフォックス ゼロ』:5つの提言
リリースが来年にずれ込んだ任天堂ファン待望の新作が20年前と同じ成功を収めるには何が必要なのか?
一般の人たちは『スターフォックス』シリーズはもはや任天堂のお気に入りではないと考えているだろう。正式なシリーズ作品は2006年の『スターフォックス コマンド』で止まっており、1997年の『スターフォックス64』の 3DS版『スターフォックス64 3D』がその後リリースされてはいるが、基本的には10年近く忘れ去られていたのだ。しかし、昨年ついに待望の復活が発表された。
任天堂は昨年の E3で『スターフォックス』の新作を用意しているというビッグニュースを発表。続く今年のE3では、その新作『スターフォックス ゼロ』が前面に押し出され、近年苦境に立たされているWii Uの切り札として年末商戦にリリースするとしていた。しかし、最近になってそのリリースが2016年4月にまでずれ込むことが発表された。
これはシリーズとWii Uのファンにとっては大ダメージだったが、今作が前作までと同じ「マストタイトル」という高評価を得るためには、デッドライン以外にも取り組まなければならない点がいくつかある。
ヴィジュアルの改良
『スターフォックス』の1作目はゲームプレイよりもそのヴィジュアルが話題となった。現在の基準から考えればかなりお粗末だが、1993年当時に スーパーファミコンのようなコンソールでピクセルよりもポリゴンを押し出していたそのヴィジュアルは非常に素晴らしく、このゲームが3D時代への布石になったという意見も多い。また、1997年にリリースされた続編『スターフォックス64』も、ニンテンドー64の性能を最高の形で引き出した美しいヴィジュアルが話題となった。
一方、『スターフォックス ゼロ』は現時点公開されているヴィジュアルに関して、過去作品のような高い評価は受けていない。確かに、任天堂と共同開発のプラチナゲームズはここ数ヶ月でヴィジュアルを進化させており、60fpsのスムースなパフォーマンスも馬鹿に出来ないが、ファンたちがこれまで体験してきた「驚愕」レベルとは言いがたい。よって、この先にWii Uの能力を限界まで引き出すようなステージが公開されることに期待したい。なぜなら現在起きている「『ゼロ』はゲームキューブのようなヴィジュアルだ」という嘲笑は、かなり的を得ていると言えるからだ。
デュアルスクリーンの改良
今年のE3で『ゼロ』を試遊したプレイヤーたちの批判の対象になったのが、デュアルスクリーンのゲームプレイだった。今作では、テレビ画面にこれまで通りの機体を背後から眺めるような視点で表示されると同時に、Wii U GamePadにコックピット視点も表示される。Gamepadを傾けたり、回転させたりすることでコックピットから周囲を見渡し、精度の高い射撃ができるようになっているのだが、ステージによっては自機の下を狙うために両画面を見なければならない。これは「言うは易く行うは難し」だ。
2画面を見なければならない今作の仕様は、プレイヤーの集中力を失わせることになり、操作方法も非常に理に叶っているものの、慣れなければ上手く機能しない。 スーパーファミコンのオリジナルがそうだったように、実際のスペースバトルがスタートする前に全体的なチュートリアルがプレイできるようにして欲しい。
オンラインマルチプレイヤーの導入
任天堂は今年6月、『スターフォックス ゼロ』にはオンラインマルチプレイヤー機能が実装されないことを発表していたが、公式サイトにインターネット接続が表記されていることから、オンラインマルチプレイヤー機能に期待したい。最近のリリース予定日のずれ込みを考えれば尚更期待したくなる。というのも、『スターフォックス64』のハイライトはあの4人同時プレイだったからだ。あのモードは、プレイヤーたちが自分たちのスキルを披露しながら友人とバトルできるという非常に楽しいものだった。しかし、Wii UではGamePadの複数台接続が不可能なため、オンラインマルチプレイヤーがその楽しさを復活させる唯一の方法となる。祈りに祈りを重ねて待ちたい。
原点回帰のゲームプレイ
『スターフォックスアドベンチャー』を憶えているだろうか? 恐らく憶えていないだろう。というのも、このゲームは典型的な『スターフォックス』とは違い、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』と同じスタイルの3Dアクションゲームだったからだ。Rareによって開発されたこのゲームの内容は特に酷くはなかったが、アーウィンからフォックス・マクラウドを降ろしたことで、多くのファンから不評を買った。これは『スターフォックス アサルト』と『スターフォックス コマンド』にも言える。というのも、両作共に興味深い進化を遂げていたが、このシリーズを有名にしたバレルロールの楽しさは感じられなかったからだ。しかし、嬉しいことに『スターフォックス ゼロ』はクラシック作品、特に『スターフォックス64』を重点的にベースにして開発されている。いずれにせよ、このシリーズの特徴を上手く活かせれば、再び大成功を収められるだろう。
シリーズ復活に繋がる新要素
『スターフォックス ゼロ』は少なくともデザインでは、ハードコアなファンのすべての要求に応じているように思える。今作が『スターフォックス64』のデザインをベースにしているのは任天堂を褒めるべき部分で、彼らが往年の熱心なファンたちの声に耳を傾けている証拠だ。しかし、旧作の模倣は旧作を超えることにはならない。そして『スターフォックス』シリーズが定期的にリリースされるようなメインシリーズへ進化するためには、任天堂は過去と同時に未来にも光を当てる必要がある。
『スターフォックス アサルト』と『スターフォックス コマンド』が、いずれも内容がやや異なり、結果も賛否両論だったにせよ、未来への取り組みだったという意見もあるだろう。しかし、このシリーズに本当に必要とされているのは、クラシックなゲームプレイを新しいレベルへ引き上げるモダンな再調整だ。オンラインマルチプレイヤー、スケールアップしたオープンワールド、RPGスタイルなどがその答えになるのかも知れないが、いずれにせよ、『 スーパーマリオ』シリーズや『ゼルダの伝説』シリーズ同様、今の時代に沿った形で新しい部分も開発しなければならない。