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『ストリートファイター』が格闘ゲームに与えた影響:前編

『ストリートファイター』が格闘ゲームに与えた影響について考察する。
Written by Amos Yeo
読み終わるまで:5分Updated on
29年経っても未だに勢いは衰えず。人気シリーズ『ストリートファイター』の最新作が2016年2月18日にリリースされた。前後編で構成される今回の記事では、『ストリートファイター』シリーズ、特に最初の2作がいかにして格闘ゲームというジャンルを形成していったのか、その軌跡を追っていく。
『ストリートファイター』が格闘ゲームに与えた影響:後編は こちら
01

伝説の始まり

多くの人にとって、最初にプレイした『ストリートファイター』シリーズは『ストリートファイターII』のはずだが、このシリーズの歴史はオリジナルの『ストリートファイター』がリリースされた1987年8月まで遡る。オリジナルではプレイヤーは格闘家リュウを操作して(2プレイヤー対戦の場合、プレイヤー2はケンを操作)、5つの国をまたいで10人の敵と戦う。
オリジナルの『ストリートファイター』は時間の流れに勝てなかったのかも知れないが、このシリーズ、そして格闘ゲームというジャンルそのものの基礎となる部分を世に広めることになった。
まず、『ストリートファイター』は、あの波動拳や昇竜拳、竜巻旋風脚などの必殺技のコマンドリストが秘密裏に用意された史上初のゲームだった。これらのコマンドはアーケードでは公開されておらず、プレイヤーは自ら試して見つける必要があった。また、今では数多くの格闘ゲームのスタンダードになっている、キックとパンチでそれぞれ弱・中・強が用意された6ボタンレイアウトを初めて導入したのもこのゲームだった。
『ストリートファイター』のリュウ vs. バーディ

『ストリートファイター』のリュウ vs. バーディ

© Capcom

02

格闘ゲームの基本形

オリジナルの『ストリートファイター』はそこまで大きな印象を残さずに終えたが、次の『ストリートファイターII』は大ブレイクを果たした。
美しく描かれたスプライトとステージを体験しようと、多くのファンがアーケードでコインを投入してプレイを重ねた。オリジナルのコンセプトを進化させた『ストリートファイターII』には何度もプレイしたいと思わせる魅力が数多く備わっていたのだ。そのひとつが、プレイヤーが好きなキャラクターを選べる1対1の格闘ゲームというフォーマットだった。
この作品で初めて8人のキャラクターの中から好きなキャラクターを選択するシステムが導入された。そして、オリジナルから引き継がれた格闘家リュウとケン、中国の刑事春麗、力士のE.ホンダ、ブラジルの野生児ブランカ、元米空軍特殊部隊のガイル、ロシア人レスラーのザンギエフ、そしてインドのヨガ行者のダルシムという8人は、それぞれユニークな必殺技を持っていた。
更に、格闘ゲームにおける最も重要な機能のひとつであるコンボシステムが初めて導入されたのも『ストリートファイターII』だった。面白いことに、コンボシステムはバグから生まれた。車を壊すボーナスステージで連続攻撃が出せることに気が付いたリードプロデューサーの船水紀孝は、プレイヤーが入力するには難しすぎるという理由からこのバグを残したのだが、結果的にそのバグが現在の格闘ゲームに欠かせない機能になった。
『ストリートファイターII' -CHAMPION EDITION-』のキャラクターセレクト画面

『ストリートファイターII' -CHAMPION EDITION-』のキャラクターセレクト画面

© Capcom

03

世界的な人気

キャラクターの数の多さとコンボシステムの導入によって『II』は今までになかったタイプの奥深いゲームになり、この1対1の対戦格闘ゲームは一気に広まっていった。ゲーマーたちはこのゲームの登場によって、ハイスコアを競うのではなく、プレイヤー同士が技術を競い合うことが可能になった。ある意味、『ストリートファイターII』は現代のトーナメントシーンを生み出すきっかけになったのは当然の結果だったと言える。
『ストリートファイターII』の成功はアーケードブームと格闘ゲーム人気を生み出した。アーケードはいつの間にかゲーマーたちが集い、誰が最強なのかを決める場所になり、そのような競争が生まれるに従い、トーナメントも開催されるようになっていった。
EVOとして知られるEvolution Championship Seriesもアーケードシーンから生まれ、1995年にサンフランシスコで第1回が開催され、『ストリートファイターII』と『スーパーストリートファイターII X -Grand Master Challenge-』と『ストリートファイター ZERO』が起用された。そしてこのトーナメントが成長し、動員が増えるにつれ、シンガポールのXian、米国のSnake Eyez、日本のウメハラなど数多くのスタープレイヤーが生まれ、EVO 2004のウメハラとJustin Wongの対戦など、記憶に残る瞬間も数多く生み出された。
04

更なる進化

『ストリートファイター』は次々と新しい機能を導入してシリーズの進化に挑んできた。『ストリートファイター』で始まった必殺技、『スーパーストリートファイターII X -Grand Master Challenge-』のスーパーコンボゲージ、『ストリートファイターIV』のセービングアタック等を追加することで、彼らはこのシリーズを長期に渡り新鮮な状態に保ってきた。
そして『ストリートファイターV』でもVゲージと新キャラクターが追加され、人気シリーズの最新作は新しい形でファンを再び虜にするだろう。『ストリートファイターII』の人気と話題性はゲーム史上最高と言えるものだったが、『ストリートファイターV』も同じく後世に残る作品になるだろう。