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『ストリートファイターV』はアーケード版よりも家庭用ゲーム機版が先にリリースされたシリーズ初の作品だったこともあり、近年、格闘ゲームの操作方法の常識が変化を迎えつつある。
もちろん、前作『ストリートファイターIV』の家庭用ゲーム機版から格闘ゲームを始めたプレイヤーは多く、その何割かは付属の純正コントローラー(ゲームパッド)でプレイする “パッド勢” だった。しかし、トッププレイヤーたちはアーケードコントローラー(アケコン)を使っていた。
こう書いたものの、近年起きている操作方法の変化はアケコンからパッドへのシフトだけではない。他にもいくつかの選択肢が存在し、中にはトーナメントでの使用が許されるべきかどうかの議論を生み出している製品も存在する。
今回はCapcom Pro Tour 2019シーズンのトーナメントで確認できる5つの操作方法を長所短所や使用しているプレイヤーなどと一緒に紹介しよう。
01
◆アーケードコントローラー
主な使用プレイヤー:ときど・ふ~ど・藤村・ボンちゃん
格闘ゲームの王道コントローラーと言えるのがアーケードコントローラー(アケコン)だ。
アーケード筐体のコントローラーをそのまま抜き出し、アイコニックなレイアウト “スティック+6(8)ボタン” を維持しているこのコントローラーは『ストリートファイターII』時代からこのシーンの主力コントローラーであり続けており、以降の全シリーズがこのコントローラーをベースにデザインされている。
アーケードコントローラーはボタンを最も快適なポジションで操作することができる。トリガーやアナログスティックをぎこちなく操作する必要はない。ボタンを押すだけで最高の形で入力することができる。
アーケードコントローラーには他にもいくつかの明確なアドバンテージがある。『ストリートファイターV』で必要なボタンは6個だが、アーケードコントローラーの大半にはボタンが8個用意されているため、残りの2個を他の操作に割り当てることができる。
PlayStation 4のDUALSHOCK 4をはじめとするデフォルトのゲームパッドもボタンは8個だが、ボタン3個を同時押しするためには両手を奇妙なポジションに持っていく必要があるため、残り2個のボタンがそれぞれ「弱・中・強P同時押し」と「弱・中・強K同時押し」にアサインされている。
一方、アーケードコントローラーなら弱・中・強同時押しは非常に簡単なので別のボタンにわざわざアサインする必要はない。つまり、Vトリガー発動などプレイヤーの好みに合わせた他の操作を残り2個のボタンにアサインできるのだ。
また、アーケードコントローラーはルックスがクールだ。オリジナルのアートワークでカスタマイズされたアーケードコントローラーはトーナメントで注目の的になる。
02
◆DUALSHOCK 4
主な使用プレイヤー:Punk・NuckleDu・Phenom・MenaRD・竹内ジョン
上に挙げている使用プレイヤーにはコントローラー以外にも共通点がある。全員が『ストリートファイターV』のトッププレイヤーというのもそうだが、全員が20代前半の若手だ。
『ストリートファイターIV』で『ストリートファイター』シリーズを知った当時の彼らは「ただ楽しくプレイしている」だけの幼い少年であり、アーケードコントローラーを買う資金も理由も持ち合わせていなかったのだ。
とはいえ、DUALSHOCK 4をはじめとするゲームパッドにもメリットがある。一番大きなメリットはDパッド(十字キー)だ。簡単に言えば、親指を軽く動かすだけのパッド勢のガード操作はスティックを倒さなければならないアケコン勢のそれよりも理論上ははるかに早い。
そして、アナログスティックとDパッドが備わっており、両方をキャラクターの操作に使えるDUALSHOCKにはいくつかトリックがある。
アナログスティックでひとつの方向に固定しつつ、Dパッドで移動をしているプレイヤーがいる。このような操作をすれば一瞬で前に出たり、特殊な技をクイック入力したりすることが可能なのだ。
しかし、複数の方向の入力は特定のコントローラーでのみ可能でスタンダードではないという理由から議論が起きている。
03
◆hitBOX
主な使用プレイヤー:ウメハラ・Automattock
hitBOXは、ウメハラがその改造版 “Gafro Box”(Garfo/ガフロがカスタマイズしたHit Box。通称ガフロコン)を解説している動画が字幕付きで公開されると、海外の格闘ゲームコミュニティを中心にビッグトピックとなった。
ガフロコンを使えばガイルの必殺技などを非常にシンプルかつ効果的に繰り出せることをウメハラが解説したあとhitBOXにまつわる様々なデマが生まれ、最後にはCapcomがhitBOXのトーナメント使用を禁止することになった。
その後、純正hitBOXのトーナメント使用は許可されることになるのだが、このタイプのコントローラーにまつわる議論は収束していない。
移動の左右同時押しをするとあとで押したボタン入力を優先する仕様になっているSOCD Cleanerが採用されているhitBOXの亜種が存在し、これらの使用は禁止されたままだ。また、純正のレイアウトにボタンが追加されている亜種も存在し、これもまたプレイヤーに大きなアドバンテージをもたらすと言われている。
カスタマイズの許容範囲が広く、それを好むプレイヤーも少なくない『ストリートファイター』シーンでは、今後もコントローラーのチートに関する議論はある程度続くことになるだろう。
hitBOXがもたらすメリットは否定できない。高速の方向&ボタン入力と正確なデジタル入力が可能になる。明日から『ストリートファイターV』をプレイしようと思っている人に対して、多くのプレイヤーがhitBOXを使えとアドバイスを送るだろう。もちろん、このようなレバーレスコントローラーがトーナメントから禁止されない前提での話だが。
04
◆6ボタン ゲームパッド
主な使用プレイヤー:Problem X・Snake Eyez・本記事のライター
使用プレイヤー数は多くないが、EVO 2018王者のProblem Xが表面にボタン6個が配置されているゲームパッドを使用しているという事実は、このタイプのゲームパッドにも何かしらのメリットがあることを示していると言える。
このタイプは3製品が主力として知られている。ひとつはMad Catzの《STREET FIGHTER V FightPad PRO》だが、これはリリース直後からディスク型のDパッドが酷評された。ふたつめは、そのMad CatzがXbox 360用にリリースしたFightpadでコンバーターを接続すれば今も使用できる。そして最後が、Problem Xも使用している《Hori Fighting Commander Pro》だ。
アーケードコントローラーと純正ゲームパッドの中間的な存在と言えるこのタイプは、Dパッドと6ボタンを表面に配置しているため、トリガーボタンを嫌うプレイヤーに好まれている。また、ボタンをアーケードコントローラーのように扱える特殊なグリップデザインの製品も存在し、多用途性もある。
ちなみに、筆者が使用している理由はシンプルだ。セガサターン時代に格闘ゲームをプレイしていたからだ!
このタイプの使用プレイヤー数は多くないと書いたが、海外に関しては、その主な理由は「入手の難しさ」にある。まず、Mad Catzの《STREET FIGHTER V FightPad PRO》は大コケした。彼らはDパッドを改良したモデルをのちに発表したが、それでも相手にされなかった。
その結果、これは笑える話だが、当時Amazonでこのゲームパッドを注文すると、オリジナルと改良バージョンのどちらが届くか分からないという状況が生まれた。
Mad CatzがXbox 360用にリリースしたFightpadは安価だが、言うまでもなく中古品を探す必要があり、状態もピンキリなので注意が必要だ。また、《Hori Fighting Commander Pro》は、生産台数が少なかったという理由から高額で取引されている。
05
◆その他のコントローラー
主な使用プレイヤー:Smug・BrolyLegs・Luffy
『ストリートファイターIV』時代に優秀なダッドリー使いとして知られていたSmugは、筆者の個人的な意見を言えば決して格闘ゲーム向きではないXbox 360純正ゲームパッドで細かい入力を行っていた。
その類い稀なスキルと長年のプレイで刻まれたマッスルメモリーを備えている彼が、『ストリートファイターV』でも同じコントローラーを使っているのは驚きではない。
BrolyLegsは先天性関節拘縮症を抱えるトップレベルの『ストリートファイター』プレイヤーだ。しかし、筋肉の成長が止まってしまっている彼だが、身体障害者のためにデザインされているコントローラーではなく、頬と舌を駆使してXbox 360純正ゲームパッドを使用している。
クラシックなゲームパッドを使用している最も有名なプレイヤーは、EVO 2014王者、フランス出身のLuffyだ。
Luffyは複数のコンバーターを接続したPlayStation(PS1)純正ゲームパッドを使用している。PS1純正ゲームパッドはデジタルコントローラーの逸品と呼べる製品で、アナログトリガーも感圧ボタンも備わっていない。Luffyがこのゲームパッドに快適さを感じているのは明らかで、『ストリートファイターV』までこのゲームパッドを使い続けている。
これが何よりも重要だ。どのコントローラーをどんな理由で選んでも構わないが、自分が最も快適に扱える製品、操作性とトーナメントの両方で常に最高の結果が得られる製品を使うべきだ。
このような複数の操作方法は、格闘ゲームが他のesportsとは異なる性格を持っていることを示している。
オーバーウォッチリーグでも複数のブランドのキーボードとマウスが使われているじゃないかと言う人がいるかもしれない。しかし、レトロなゲームパッド、奇妙なデザインのhitBOX、美しいアートワークが施されたアーケードスティックが混在するCapcom Pro Tourは完全に異なる世界だ。
◆Information
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