『TEKKEN 8』の三島一八
© Bandai Namco
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『TEKKEN 8』:10の違い

大人気格闘ゲームシリーズの最新作が2024年1月26日に発売される。新機能やシステム、新キャラクターなど主な特長をまとめてみた。
Written by Joe Ellison
読み終わるまで:11分Published on
『鉄拳』シリーズは格闘ゲームジャンルにおける画期的な存在だが、それだけではない。このシリーズは1990年代からすべてのメジャーコンソールを進化させ続けており、その比類なき影響力と継続力の余波は、より広範なゲーミング業界全体に及んでいる。
バンダイナムコの最新作『TEKKEN 8』も同じだ。前作から10年近く経ってリリースされる今作は、これまでを上回る魅力的な新キャラクター、美しいステージ、そして強烈システムとモードを備えている。
本記事では『TEKKEN 8』のプロデューサーとディレクターとのインタビューを絡めながら、最新作の重要ポイントを列挙していく。尚、《鉄拳ボール》の復活が今回のリストに入っていないという事実は、今作がいかに強烈な作品に仕上がっているかを証明していると言えるだろう。では早速を見ていこう。
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最高のビジュアル

Unreal Engine 5で開発された初の格闘ゲームになる『TEKKEN 8』は、プレイ直後からこのタイトルが第9世代コンソールのために開発されたことを教えてくれる。4Kよりも目に優しくスムーズで、各ステージとキャラクターのディテールが追求されている。
『TEKKEN 8』の美しい対戦画面

『TEKKEN 8』の美しい対戦画面

© Bandai Namco Studios

また、これまで発表されてきた新機能の中でファンが一番驚いたのは何かという質問に対し、デザイナーのマイケル・マレー氏(Michael Murray)氏とディレクターの池田幸平氏はともに「グラフィックス」と回答している。
このように『TEKKEN 8』は内部に改良が加えられているが、ゲームプレイも優秀だ。『鉄拳』シリーズはガードが難しく、延々と続くコンボの犠牲にならないためにはかなりの知識が必要とされてきたが、『TEKKEN 8』はシリーズ最高の激しい対戦が楽しめると同時に、難しい状況からの抜け出しや動きの選択肢が少し増えている印象だ。
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対戦を大いに盛り上げる新機能群

最近の『鉄拳』シリーズでは、HQがある程度減ると一発逆転のチャンスが得られるレイジシステムが採用されていたが、今作ではヒートと呼ばれる新システムが採用されている。
大きな違いは、ヒートシステムは使用するタイミングが限定されていないところにある。結果、今作にはヒートでパワーアップしたりコンボを延ばしたりできるベストタイミングを自分で計算するというタクティカルな側面が加わった。ラウンド最終盤での対戦相手の仕掛けに対応するために残しておくか、それともいきなり使用して一気呵成に出るかはプレイヤー次第だ。
『TEKKEN 8』ディレクターを担当している池田幸平氏は、今作をアグレッシブなタイトルにしている理由のひとつとしてヒートシステムを挙げており、次のように説明している。
「格闘ゲームでは、対戦するプレイヤー2名の実力が拮抗していると、攻撃的なプレイをするのが難しくなるときがありますが、今作では “カウンターを狙っていくぞ” と前に出られます。攻撃を仕掛けていくのが楽しいデザインになっています」
Arslan Ashのようなプレイヤーがビッグトーナメントでヒートシステムをどのように活用していくのかに注目したい。
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オフラインが楽しくなるストーリーモード

ストーリーモードがすべてだった時代は過ぎ去った(ちなみに最近は復活している)。誰もが知っている通り、オンラインプレイがすべてを変えたのだ。
しかし、『鉄拳』シリーズの開発チームはプレイヤーたちをすぐに引き込める大騒乱のストーリーを生み出すために時間と予算を注ぎ続けてきた。今作のストーリーは『鉄拳7』からの続きで、依然として風間仁と三島一八の親子喧嘩の行方が世界の命運を握ることになる。
親子喧嘩はまだ終わらない

親子喧嘩はまだ終わらない

© Bandai Namco Studios

もちろん、親子喧嘩はもういい加減にして欲しいと思う人もいるかもしれないが、Unreal Engine 5を最大限活用しながら、長年ストーリーを楽しんできたファンに報いてくれる非常に楽しいモードになっている。
AAAタイトルのようなストーリーが展開されたかと思えば、カットシーンから対戦(街中での印象的なバトルを含む)にシームレスに切り替わり、ボタンを連打しなければならなくなる。
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使いやすい新キャラクター陣

『鉄拳7』の後半に追加されたキャラクターの一部がかなり特殊だった(『ウォーキング・デッド』のニーガンを覚えているだろうか?)ことを踏まえると、今作はかなりまともに思える。少なくとも現時点では、『TEKKEN 8』は新キャラクター3人とともにルーツに立ち返っているようだ。
その新キャラクターの筆頭がレイナで、小さな町なら簡単に燃やしてしまいそうな強力な電撃系の技を備えている。デザイナーのマイケル・マレー氏はレイナをシリーズ史上最もエキサイティングなキャラクターのひとりとしており、技の多さと強気な性格からすぐに人気を獲得するだろうと予想している。
一方、ディレクターの池田幸平氏はもうひとりの女性新キャラクター、アズセナを気に入っている。このペルー出身のキャラクターはシリーズ屈指のテクニックを誇り、対戦相手の攻撃を回避できる構えを備えている。池田氏は「ですので、自分が相手よりも遙かに上手いように思えます」と評価している。
新キャラクタ―最後のひとりは、スーツが似合うフランス人スーパースパイのヴィクター・シュヴァリエだ。俳優ヴァンサン・カッセルが声を担当しているこのキャラクターはレイヴン部隊の生みの親で、ストーリーモードに前半から深く関わってくる。
性格とプレイスタイルの両方における華麗さに期待できるヴィクターは近距離戦闘を得意としているが、『鉄拳7』のノクティスを彷彿とさせる技も持ち合わせている。目が離せないキャラクターだ。
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派手なバトルが楽しめる多様な新ステージ群

『TEKKEN 8』には対戦相手に絶対に勝ちたいと思わせる美しくて印象的な新ステージがいくつも用意されている。
ヴィクターのステージとなるフランス・パリのセーヌ川に浮かぶ豪華客船からオーストリア・ウィーンの道場まで、今作はプレイヤーの目を引くステージが目白押しで、その多くが新キャラクターたちに絡んでいる。たとえば、アズセナのホームステージとなるOrtiz Farmペルー・マチュピチュの丘の上に位置しており、彼女の性格にパーフェクトにマッチしている。
新ステージのひとつ “Ortiz Farm”

新ステージのひとつ “Ortiz Farm”

© Bandai Namco Studios

Ortiz Farmはディレクターの池田幸平氏がかなり情熱を注いだステージで、次のように解説している。
「私はマチュピチュをはじめとする歴史のあるロケーションや世界遺跡が好きですので、それを上手く取り込みたいと思っていました。アルパカをステージに配置するのも楽しかったですね」
「『鉄拳6』をプレイした方なら、ユニークなサウンドトラックと羊が用意されていたあるステージ(Hidden Retreat)を思い出すでしょう。今作ではアズセナのステージ “Ortiz Farm” でアルパカを使って似たようなステージを作ろうとしました」
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プレイを瞬時に学習するAI

人工知能はほぼすべてのエンターテインメントに進出しつつあるが、ゲーマーがAIを実感できる機会はほとんどなかった。しかし、それも『TEKKEN 8』で変わる。
この作品の《Super Ghost Battle》モードでは、最新AIがプレイヤーの動きを信じられないレベルの細かさで学習するため、数回バトルをするだけで自分のゴーストを作り出せる
また、プレイする回数が増えるほどそのゴーストの精度が高まり、しかも、フレンドのプレイスタイルをゴースト化することもできるので、CPU対戦が退屈に感じたり、Wi-Fi接続が不安定になったりしたときもフレッシュな対戦を楽しめる。
ゴーストデータとの対戦は『鉄拳6』のオンラインモードから可能だったが、今作の《Super Ghost Battle》モードはゲーミングシーンにおける機械学習の大きな一歩だ。尚、『TEKKEN 8』のリリース時に収録される32人すべてのゴーストデータの生成が可能だ。
マレー氏はこの機能がプレイヤーのモチベーション維持に役立つことを願っており、「AIと対戦しているときは、人間と対戦しているように感じますが、どういうわけか、負けたときに実際の対人戦よりも嫌な思いをしないのです」と語っている。というわけで、ゴーストに負けても気落ちする必要はないことを覚えておこう。
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大幅にアップデートされたデビル仁

デビル仁は、賛否両論の『鉄拳』シリーズ主要キャラクターのひとりだ。これまではマスターするまでが難しいと評価されてきたが、今作では開発チームのデザイナーたちがデビル仁のプレイスタイルを大きく変更し、アクセシビリティを大幅に向上させた。
扱いやすくなったデビル仁

扱いやすくなったデビル仁

© Bandai Namco Studios

デビル仁をメインのひとりに据えてきたデザイナーのマイケル・マレー氏は、今回の変更は自分にとって祝福であり呪いであるとジョークを飛ばしている。
「これまでのデビル仁はコンボがテクニカルで、入力も手間でしたが、今作ではかなり洗練されているので、プレイしやすくなったと思います。ですので、個人的には、難しいデビル仁の習得に費やしてきたこれまでの時間を考えると苛つきますね。今作では簡単ですから! ですが、彼を選び、彼のクールな魅力に気付くプレイヤーが増えると思います」
アップデートが加えられていくことを踏まえると、どのファイターが弱体化されるか分からないが、2014年がデビル仁の年になる可能性は少なくない。
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強化されたアドバイス付きリプレイ機能

『鉄拳7』のシーズン3で初登場した《My Replay & Tips》が『TEKKEN 8』で大幅にアップデートされた。《Arcade Quest》と《Super Ghost Battle》のすべての対戦が記録されるため、好きなタイミングで戻って見直せる。しかも、過去の対戦のどこが良くなかったのかをリアルタイムで教えてくれるのだ。
このモードは格闘ゲーム史上最も優秀なトレーニングモードのひとつと言えるかもしれない。デザイナーのマイケル・マレー氏は確実にそう感じているようだ。
現実世界でも格闘技を嗜んでいるマレー氏は、マッスルメモリの構築がパフォーマンスにポジティブな影響を与えることを知っており、今作の《My Replay & Tips》が初級プレイヤーを中級、上級プレイヤーに育ててくれると信じている。
「リプレイの途中で一時停止して “あなたはこの攻撃をガードしましたが、反撃を入れていません。この状況での最適な反撃はこちらです” などと教えてもらえます」
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初心者に嬉しい新操作方法

今作には、ボタンを押すことで画面端にインターフェイスが表示され、キャラクターのおすすめ技とコンボが簡単に出せるようになる操作方法《スペシャルスタイル》が用意されている。
新規プレイヤーに有用なスペシャルスタイル

新規プレイヤーに有用なスペシャルスタイル

© Bandai Namco Studios

この操作方法は経験豊かなプレイヤーには影響がないかもしれないが、新規プレイヤーにはまさにゲームチェンジャーになる可能性がある。対戦中にL1ボタンを押すと空中コンボ、下段、投げ、得意技などのリストが表示されるので、あとはその指示通りの簡単なボタン入力をするだけだ。
技表が視界に入るため邪魔に感じる人もいるかもしれないが、強烈な技を出したり、練習を重ねずにコンボを延伸したりしたいプレイヤーや、対戦を通じてメインとは違うキャラクターを試してみたいプレイヤーにはおすすめだ。
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アーケード時代へのラブレター

ここまでの『TEKKEN 8』に関する情報を読んでもまだノスタルジアを掻き立てられていない人がいるなら、《Arcade Quest》を試してもらいたい。このモードでは、バーチャルアーケードを自由に動いて『鉄拳』プレイヤーとしてのレベルアップを目指していく。
ノスタルジアに満ちている《Arcade Quest》

ノスタルジアに満ちている《Arcade Quest》

© Bandai Namco Studios

《Arcade Quest》は『鉄拳』シリーズを良く知らない新規プレイヤーには非常に有用なモードだが、古参ファンが《Super Ghost Battle》のような最新機能を学ぶのにも適しているモードだ。ちなみに、《Super Ghost Battle》は《Arcade Quest》をプレイして解放する必要がある。
しかし、自分のアバターをカスタマイズして他のアバターと交流しながら、ミニトーナメントやチャレンジに参加していくこのモードは、何よりもまず急速に姿を消しつつある現実世界のアーケードへのラブレターだ。池田氏は「プレイヤーとコミュニティが集まって楽しい時間を過ごせる空間毎日遊びに行ける空間を作りたいと思っていました」と説明している。
また、マレー氏も「『TEKKN 8』開発中はパンデミック下だったので、イベントやトーナメントなど、かつて楽しんでいたものが楽しめなくなってしまいました。今作では、アーケードと同じように、プレイヤーにプレイを続けるモチベーションを与えたいと思っていました」と続けている。
『TEKKEN 8』は2024年1月26日にPS5 / Xbox Series X|S / PCでリリース予定。