ゲーム

操作方法を変えたビデオゲーム

家庭用ゲーム機の歴史はコントローラーの歴史でもある。現れては消えていくその運命の中で、ゲームの操作方法を変えるという偉大な功績を遺したゲームがある。
Written by Red Bull UK
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Play Station Dual Shock Lead

Play Station Dual Shock Lead

© William Hook http://www.flickr.com/photos/williamhook/2505466922/

時として、成功が約束されていたものでも失敗する。SF作家Neal Stephensonが考案し、 Kickstarter上で大きな話題となっていた剣を使用した対戦型格闘ゲーム『Clang』が昨年秋に開発中止を発表した。
ファンから50万ドル以上の資金を集めたものの、開発に更に資金が必要なことが判明し、また新しいコントローラーを剣として使用するこのゲームに対し投資家たちが尻込みしてしまったことがその原因だ。
「Clangにハードウェアの並行開発が加わることが、ゲームへの投資を考えている少数の人たちが不安に思うようなリスクを追加することになってしまいました」と開発チームは書面にてコメントを発表している。もしゲーム会社大手のActivisionが 「ギターヒーロー」の次に新しいコントローラーを生みだせない状況にあるのだとしたら、Clangのようなスタートアップ系ゲームが成功する可能性は小さいと言えるだろう。
しかし、ひとつの革新的なゲームが新しいコントローラーを生み出すことがある。そしてそのインパクトはゲームのプレイ方法そのものを永遠に変えてしまう。前述のStephensonのバーチャルライトセーバーは日の目を見ないかもしれないが、以下にゲームの操作方法の歴史を変えたゲームの数々を紹介する。

Sega Missile

Segaが開発した世界初のアーケードゲームのひとつ『Missile』は、そのジョイスティックが特徴だ。1969年に登場したこのゲームの筐体には、戦闘機の操縦かんタイプのジョイスティックが採用されており、プレイヤーはそれを使用して敵戦闘機を狙い撃つ。しかし、このゲームが革命的だったのは、そのジョイスティックによってキャラクターまたは物体をXY軸で操作できたという点だ。このアイディアはその後20年間に渡り、ミリタリーゲーム及び2Dの横スクロールゲームに大きな影響を与えた。そして40年以上が経った今でもこのアイディアは生き続けており、今でもアーケードゲームの大半はこのようなジョイスティックが採用されている他、家庭用ゲーム機のアナログスティックの登場にも大きな影響を与えている。

Pong(Home-Pong)

Pong

Pong Controller

© Atari

伝説的なゲーム『Pong』は実は世界初のビデオゲームではなく、初の卓球ゲームでさえないが、このAtariの生み出したクラシックヒットは「テレビに接続する家庭用ゲーム機」時代の先駆けとなった。プレイヤーがパドルを上下させるために使用したダイヤルは部品が簡単に調達できたため、家庭用ゲーム機として簡単に再現することができたのだ。1972年に発売されたオリジナルに続き、アメリカの大手百貨店の協力の元で開発されたこの家庭用ゲーム機版『Pong』はビデオゲームを一気にメインストリームへ押し上げた。初の家庭用ゲーム機Magnavox Odyssey、及び初の卓球ゲームはRalph Baerが生み出したが、見事なブランディングと病み付きになるゲーム内容を誇る『Pong』はAtariを羽ばたかせ、Atariがビデオゲームをバーの片隅から家庭へ移し、その後のアーケードゲームの隆盛の礎を築いた。

ドンキーコング

NES controller

NES controller

© Nintendo

1981年にアーケードゲームとして登場した 任天堂の『ドンキーコング』は、 マリオ初登場作品であると同時にプレイヤーが初めてジャンプできるゲームとしてその名を歴史に残している。その操作はファミリーコンピュータ、そしてその後に続く数々の家庭用ゲーム機のコントローラーのデザインに大きな影響を与えた。尚、『ドンキーコング』はファミリーコンピュータのローンチタイトルのひとつに採用されたため、十字キーとABボタンという仕様を一般層へ浸透させるのに多いに役立った。このコントローラーのデザインはゲーム会社がより複雑なゲームを開発することを可能にし、1985年の宮本茂によるヒットタイトル『スーパーマリオブラザーズ』を始め、数々の格闘ゲームや『 ファイナルファンタジー』シリーズに代表される見下ろし型RPGなどにも大きな影響を与えた。結果的に任天堂のライバルたちはこのコントローラーのデザインを次々に真似することになり、今でもたとえば Xbox OneのABXYボタンのレイアウトなどに任天堂の影響が明確に残されている。

スターフォックス64

Lylat Wars

Lylat Wars

© Nintendo

N64 Rumble Pak

N64 Rumble Pak

© Nintendo

スーパーファミコンで発売された『 スターフォックス』の続編にあたるこのゲームは、今の家庭用ゲームでは当たり前になっているシステム「フォースフィードバック」が初めて採用されたゲームとして知られている。初の振動パック対応となったこのゲームは、NINTENDO64のコントローラーの背部に差し込まれた振動パックがゲーム内のイベントに合わせて振動することにより、プレイヤーのゲームへの熱中度が増すようになっていたが、この技術はすぐにライバルメーカーに真似されることになった。尚、この技術は今でも採用され続けており、たとえばPS3/Xbox360の『 グランド・セフト・オートV』では、車で道路を走っていると、路面上の凹凸に合わせコントローラーが振動し、さながら本物の車を運転しているような感覚が味わえるようになっている。

サルゲッチュ

ファミリーコンピュータのコントローラーやNINTENDO64の振動パックよりも今の私たちの操作方法に大きな影響を与えたのが『サルゲッチュ』だ。『サルゲッチュ』はSonyのアナログコントローラDUALSHOCKの初対応ソフトとして発売された。NINTENDO64のコントローラーが十字キーとひとつのアナログジョイスティックを採用していたのに対し、DUALSHOCKは2本のアナログスティックを採用していた。この仕様によってプレイヤーは片方のスティックで動作を、もう片方で視点を操作することが可能になり、3Dワールドをより自由に動けるようになった。『サルゲッチュ』シリーズは近年リリースされていないが、このゲームが当時革命的だったのは確かで、この操作方法は今でも『 コール オブ デューティ』シリーズや『 アサシン クリード』シリーズなどに採用されており、もはや3Dゲームのスタンダードになっている。

Wii Fit

Wii Fit

Wii Fit

© Nintendo

任天堂が2006年に発売したWiiはモーションコントロールの採用により大ヒットとなったが、続いて発売されたWii Fitも、付属していたバランスWiiボードと共にゲーム業界の流れを変えたゲームだ。しかし、バランスWiiボードは体重を測ったり、ヨガをしたりするためだけの健康器具ではなく、開発会社はすぐにこのボードをコントローラーとして使用する方法を見つけ出し、『ファミリースキー』や『Shaun White Snowboarding』などでは屋内でスキーやスノーボードが手軽に楽しめるようになった。尚、続編として『Wii Fit Plus』そして『Wii Fit U』が発売されている。

Doodle Jump

iPhoneのアプリにおける最大のヒットは『 Angry Birds』ということになるのかも知れないが、iPhone初のヒットゲームではない。2009年初頭に発売された『Doodle Jump』がiPhone専用ゲームとしての初ヒット作だ。このゲームは画面上に十字キーを表示させる代わりに、iPhoneのタッチスクリーンと加速度センサーを使用してキャラクターをひたすら上へ登らせていくというシンプルなゲームとして大ヒットとなった。そしてこの指先だけで行える操作性に着目したRovioが『Angry Birds』を開発したのは周知の事実である。

未来

Steam Controller

Steam Controller

© Valve

昨年ValveがSteam Controllerを発表した。ValveはSteam Machineを通じてPCゲームとそのパワーをリビングルームへ持ち込もうとしており、このコントローラーがそのインターフェイスとなる。このコントローラーはアナログスティックを採用する代わりに、より精度が高く、また自由にアサインが可能なトラックパッドを採用しており、ソファから気楽にマウスと同等の精度が得られるようになっている。Steam Machinesのブレイクを担うのがどのゲームになるかは現時点では予想できないが、既にSteam上に『Half-Life』、『Portal』、『Left 4 Dead』などのヒット作を抱えていることから、Valveにはコントローラーの歴史を変える可能性があると言えるだろう。
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