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『ICO』と『ワンダと巨像』のファンにとって、『人喰いの大鷲トリコ』は2016年最大の話題作の1本だった。2009年半ばに開発が発表された上田文人によるこのアドベンチャー大作は、それから待たされること7年、2016年12月にようやくPS4でリリースされたのだが、待った甲斐は十分にあった。
『人喰いの大鷲トリコ』は年末商戦に向けてリリースされた他のビッグタイトルとは大きく異なるゲームだ。少年となって犬と猫と鳥を掛け合わせたような “大鷲” トリコと共にのんびりと謎の世界を旅していくこのゲームは、カメラワークにやや問題を抱えているが、世界から寄せられていた熱い期待に十分に応えてくれている。
少年とトリコのエモーショナルな旅は、アクション満載のアドベンチャーというよりは瞑想的なもので、2人の友情の美しさはゲーミングの歴史に確実に名を残すことになるだろう。『人喰いの大鷲トリコ』はファンの願いを叶えつつ、ファンの期待以上を届けてくれている。今回はこのゲームをプレイすべき理由を5つピックアップしてみた。
1:美しいアートワーク
上田文人の過去作品と同じく、『人喰いの大鷲トリコ』のアートワークは圧倒的な美しさを誇っている。水彩画と油絵を組み合わせたかのようなスタイルは素晴らしく、他のゲームの多くが成し遂げることができていない夢のような世界を提供してくれている。芝生を見るだけでも魅了されてしまう筆致で描かれた風景は本当に息を呑む美しさだ。
2:可愛いトリコ
トリコは尻尾から強力な雷撃を放てる巨大な “大鷲” なのだが、要所要所で面倒を見る必要があるという、可愛い魅力も備えている。『人喰いの大鷲トリコ』では、○ボタンひとつでいつでもどこでもトリコを撫でることができるようになっているのだが、この操作は、ビデオゲーム史上最高のボタン操作のひとつと言えるだろう。
トリコは本物の動物のような動きをするので、現実世界でペットを飼っているプレイヤーならば、トリコの細かい動きに自分のペットを重ね合わせるだろう。そして、ゲームを進めていくにつれ、2人の友情はより一層深まっていく。エサのタルを与える、トリコの頭に登るなど、どのアクションをしている時も、トリコが本当に生きているように感じるはずだ。
3:最高のアクション
ネタバレになってしまうので具体的には書かないが、『人喰いの大鷲トリコ』にはビデオゲーム史に残る感動的なアクションシーンがいくつか盛り込まれている。トリコと少年が協力して進んでいく様子は後年まで語り継がれるだろう。トリコと一緒に重要な局面を乗り越えるたびにプレイヤーのトリコへの感情移入度数が高まり、それがゲーム終盤に向けて徐々にビルドアップされていくこのゲームは、非常にエモーショナルだ。
4:見事なペース
ビッグタイトルの多くは、ゲームスタート直後からプレイヤーを派手な爆発や銃撃戦に放り込むが、『人喰いの大鷲トリコ』は小さな空間でゆっくりと時間をかけてトリコと触れあうことからスタートする。
このイントロがこのゲームのアドベンチャーのペースを設定している。プレイヤーが世界を救う必要はない。『人喰いの大鷲トリコ』は、生命の息吹が感じられるこぢんまりとした空間の中で、ゆっくりと友情の成長を見届けていくゲームなのだ。
5:リラックスした雰囲気
『人喰いの大鷲トリコ』の世界を探索していくと、美しい風景、スローペースなゲームプレイ、そしてトリコとの触れ合いが徐々に融合し、ひとつの美しい雰囲気を作り出していくことに気が付くはずだ。
このゲームはのんびりと1日を過ごしたい時、またはハードなアクションが続く他のゲームに疲れてしまった時にピッタリだ。他のゲームでは中々見られないユニークな雰囲気とトーンを誇る『人喰いの大鷲トリコ』は気持ちが安らぐゲームと言えるだろう。

