Members of the Oracle Red Bull Racing team work on the car before the start of a race.
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F1

【F1はチームスポーツ!】構成スタッフとその役割を知る

F1ではドライバーたちに脚光が集まりがちだが、彼らを支えるチームスタッフはそれぞれどのような役割を担っているのだろうか? 高度なチームスポーツとしてのF1に着目してみよう。
Written by Mathieu Fageot
読み終わるまで:5分Published on
F1レースの中継を観ていると、オーバーテイクに喝采を送る、あるいはレース展開を不安げに見守るチームスタッフの姿が必ず映し出される。しかし、ピットガレージを埋め尽くしているこの人たちは何者なのだろう? なぜあれほど多くの人員がF1チームには必要なのだろう?
レースに欠かせない存在ながら、比較的知られていないチームスタッフのそれぞれの役割について解説しよう。
01

チームプリンシパル

まずはF1チームを率いるチームプリンシパルから紹介しよう。チームプリンシパルの主な仕事は、チームスタッフの業務の管理と組織全体を代表することとチーム全員がそれぞれの業務を遂行するために必要なものを備えることだ。また、チームプリンシパルはドライバーたちと直接コミュニケーションを取る役割も担う。
レッドブル・レーシング創立以来チームプリンシパルを務めるクリスチャン・ホーナー

レッドブル・レーシング創立以来チームプリンシパルを務めるクリスチャン・ホーナー

© Mark Thompson/Getty Images/Red Bull Content Pool

レッドブル・レーシングのチームプリンシパルを務めるのはクリスチャン・ホーナーだ。クリスチャンは2005年にチームプリンシパルに就任して以来、コンストラクターズタイトル6回・ドライバーズタイトル6回(2023シーズンを圧倒的な強さで支配するマックス・フェルスタッペンがまもなく7回目を追加しようとしている)を見届けてきたモータースポーツシーンのビッグネームだ。
クリスチャンと同じくTV中継に登場する機会が多く、F1パドックで大きな影響力を持つトト・ウォルフもライバルチームのメルセデスでチームプリンシパルを務めている。
ドライバーたちとほぼ同等に重要なチームプリンシパルは、FIAレギュレーションとF1スポーティングコード(スポーツ規定)が遵守されているかどうかを確認する役割を担っていることでも知られている。
02

エンジニア

察しの通り、エンジニアたちはサーキットで最も重要なポジションのひとつを担っており、そのタスクは最も多岐に渡る。では、エンジニアたちは実際にどのような業務を担当しているのだろう?
まず、パフォーマンスエンジニアと呼ばれる人たちはシャシー関連のあらゆる要素に加え、その多様なセッティングやパフォーマンス予測についても責務を負っている。
ドライバーはエンジニアたちと密接に働きながらレースウィークエンドを戦う

ドライバーはエンジニアたちと密接に働きながらレースウィークエンドを戦う

© Mark Thompson/Getty Images/Red Bull Content Pool

また、ギアボックス運用やブレーキングマップおよびローンチ(マシン発進)のアシスト、エンジンのモニタリングなどを担うコントロールエンジニアも存在する。
エアロダイナミックエンジニアはその名からも想像できるように、フォーミュラカーの空気力学的側面を担当する。彼らは収集したデータをサーキットからチーム幹部やデザインファクトリーに送り、すべてが計画通り運用されるようにしている。
一方、エンジンエンジニアはF1パワーユニットのパフォーマンスや安全性に関連する全パラメーターの責任を負う。パワートレインの準備・調整の責任を負う彼らはドライバーたちがコース上で得たフィードバックを考慮しながらデプロイメント(編注:回生システムから蓄電したエネルギーの放出)をコース上のどこで行うかについて管理する。
ストラテジーエンジニアはチームのパフォーマンスを評価するが、同時にライバルたちのパフォーマンスにも目を光らせている。また、彼らはレース中に起こりうる様々な戦略シナリオを検討し、チームが取るべきリアクションを予測する。
03

テクニカルディレクター

テクニカルディレクターは先に説明したすべてのエンジニアリング業務を統轄するポジションで、シャシーからエンジン、タイヤまでのマシンのすべての要素を完ぺきに調和・機能させる役割を担う。
レッドブル・レーシングの全チャンピオンマシンを設計してきたエイドリアン・ニューウェイ

レッドブル・レーシングの全チャンピオンマシンを設計してきたエイドリアン・ニューウェイ

© Mark Thompson/Getty Images/Red Bull Content Pool

04

チーフメカニック

チーフメカニックはピットガレージ内にいる大勢のメカニックを監督する。チーフメカニックはマシンのあらゆる仕様が正しいことを確認しつつ、様々なメカニカルトラブルを解決してマシンのすべてのセッティングを高い基準に仕上げている。
05

メカニック

ドライバーはピットガレージの支えがなければ無力だ。裏舞台で作業するメカニックたちは高性能で信頼性が高く、何より安全なマシンをドライバーに提供できるように全力を注いでいる。
統率の取れたタイヤ交換作業を行うピットクルー

統率の取れたタイヤ交換作業を行うピットクルー

© Mark Thompson/Getty Images/Red Bull Content Pool

マシンがピットへ戻ってくると、メカニックたちは通常のチェック項目を確認し、マシンに燃料を補給し、レース中のピットストップで驚速タイヤ交換作業を行う。ちなみに、以下の映像でも確認できるように、F1メカニックたちは無重力空間でもタイヤを交換できる!

2分

無重力ピットストップ

2019シーズンに3回も最速ピットストップ記録を更新したアストンマーティン・レッドブル・レーシングが新たなチャレンジに挑む。 ロシア国営宇宙公社ロスコスモスの協力を得た彼らは、F1マシンRB1(2015年)をモスクワ近郊にあるガガーリン宇宙飛行士訓練センターへ持ち込み、自分たちに限界が存在しないことを証明することにしたのだ!

06

データサイエンティスト

データサイエンティストは走行中のマシンからリアルタイム送信される膨大な量のデータ(エンジンパフォーマンス、空力効率、油圧、タイヤのグリップ、ブレーキの摩耗度など)を分析する。
これらのデータのおかげで、テクニカルチームとドライバーたちはコース上で起きている事象を常時正確に把握できる。技術の進歩に合わせてマシンを開発していくこともF1チームの使命なのだ。
07

最後に

当然ながら、今回のリストはF1チームのすべての職務を網羅しているわけではなく、サーキットに帯同する専門職のみを取り上げている。F1チームでは、レースの現場に帯同するスタッフ以外にもファクトリー勤務の従業員が多数存在する。2022年、オラクル・レッドブル・レーシングの全従業員数は800人を超えた。
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