拡張パック『 妖の森ウィッチウッド 』の時点で、『 ハースストーン 』には 1,500枚以上 のカードが存在する。 ここまでの長い歴史の中で、我々は数多くのミニオンカードやスペルカード、そしていくつかの馬鹿げたカードを確認してきたわけだが、その中で最も大きなインパクトを与えたカードはどれだろうか? 『ハースストーン』というゲームのテーマとスタイルを定義づけたカードはどれだろうか?
『 World of Warcraft 』ユニバースの世界観を存分に楽しませてくれるカード、デジタルカードゲーム史上に残るトンデモな瞬間を生み出すカード、盤面にしか姿を現さないカードなど、『ハースストーン』には様々なカードが存在するが、今回はその中から このゲームを象徴するアイコニックなカード を10枚選んでみた。
ラグナロスが栄誉の殿堂入りをしてしまって寂しく思っている人は多い。『ハースストーン』初期、この強力な炎の王は、このゲームを世界的に有名な存在に押し上げた理由の全てをその体内に秘めていた。
多くの人にとって、《 炎の王ラグナロス 》は『World of Warcraft』で初めて倒したレイドボスのひとりとして記憶されているはずだが、このカードを持っている人は、彼を火球連発マシンとして使用することができた。
様々なデッキにスムーズに組み込めたこのカードが栄誉の殿堂入りをするのは不可避だった。しかし、このカードは、プレイヤーが狙ったミニオンを確実に排除する能力と、盤面を無視してランダムな敵1体に8ダメージを与えて勝利を引き寄せる能力で、永遠に我々の記憶に残るだろう。少なくとも彼のその偉大さは、《 サルファラス 》に引き継がれている。
《 希望の終焉ヨグ=サロン 》の素晴らしさは筆舌に尽くしがたい。この旧神を『ハースストーン』史に残るミニオンにした理由を完全に理解するためには、オンライン上に投稿されているハイライト映像をひとつチェックすれば良い。
どの映像でも構わない。たとえば、 下の映像 を見るだけでもその凄さが分かるはずだ。
《希望の終焉ヨグ=サロン》は『ハースストーン』の中で最もワイルドと言える瞬間を生み出せるカードだ。盤面をクリアできるこのカードは、不可能と思われていた逆転を実現できたが、一方で窮地に追い込まれている自分に最後の一撃を放つこともあった。
弱体化されたあとも対戦で頻繁に見かけられたこのカードは、『ハースストーン』史に残る最高の瞬間のいくつかを生み出すのに寄与した。
《 チルウィンドのイェティ 》と言えば、4マナ4/5の代表格で、実に優秀なカードだ。しかし、シャーマンはこのカードでは満足しない。そこで登場するのが《 炎まとう無貌のもの 》だ。
たった4マナで7/7が得られるこのカードを出せば、対戦相手は沈黙するしかない。もちろん、オーバーロードで2マナを先借りすることになるが、このパワフルなミニオンを盤面に出せるのだから次のターンの手が弱くなっても問題ない。
当然ながら、このとんでもないミニオンがマッチの前半から使えたという事実は、『ハースストーン』シーンの中で大きな議論を生み出し、多くのプレイヤーがこのカードは問題ありと判断した。なぜなら、このカードへの対抗策を講じるのが非常に難しかったからだ。
このカードがきっかけで、マナコストを大幅に上回る能力を持つカードを説明する際に「 4マナ7/7 」という言葉が使われるようになった。
《 おしゃべりな本 》は、その強烈な能力だけではなく、トーナメントシーンで数々の "超ラッキー" な瞬間を生み出したことでも『ハースストーン』史の中に名前を残している。具体的に言えば、その瞬間は2回で、しかもひとつのマッチの中で起きた。 下の映像 を見てもらえば分かるはずだ。
Pavel は《 動物変身 》と《 炎の大地のポータル 》で戦況を一変させ、勝利を引き寄せたばかりか、この年の ワールドチャンピオン も手にすることになった。
ランダムドローの能力は『ハースストーン』シーンの中でそこまで高く評価されていないが、《おしゃべりな本》は、 ランダムドロー系 カードが『ハースストーン』の重要な構成要素のひとつであることを示している。
『ハースストーン』を数百回、数千回プレイしたという人がいれば、1回しかプレイしたことがない人もいるが、どちらも《 ロード・ジャラクサス 》が盤面に出された瞬間、問題が発生したことを理解するはずだ。
元『ハースストーン』ゲームディレクターの Ben Brode の言葉を借りれば、このカードは " プレイヤーの体の芯まで震えさせる雄叫び " なのだ。
今回紹介している他のカードと同じく、《ロード・ジャラクサス》もアイコニックだ。なぜなら、他のカードゲームでは見かけないスペシャルな能力の持ち主だからだ。
このカードを出せば、自分のヒーローが破壊されてこのカードが新しいヒーローになり、新たな能力を手に入れることになった。あまりにも衝撃的なカードだったため、 Team 5 が拡張パック『 凍てつく王座の騎士団 』でこのアイディアを見直し、各ヒーロークラスにデスナイトを用意することに繋がった。
《ドクター・ブーム》 © Blizzard / Alex Garner
《 ドクター・ブーム 》はおそらく『ハースストーン』史上最も議論を呼んだカードだった。プレイヤーは「バランスを修正しろ」というリクエストを大量に送りつけたが、 Team 5 はひとつも聞き入れなかった。
《ドクター・ブーム》は、2体召喚した1/1 のブームボットが最大4ダメージを見舞う中、本体は7/7を維持するというとんでもないカードだった。この結果、『ハースストーン』シーンでは " ドクター・バランス " という皮肉めいた言葉が流布した。
現在、このカードは " ワイルド " の中にしか存在しないが、相変わらずその 異常とも言える優れたコストパフォーマンス が愛されている。以前のようなメタを振り回すほど強力な存在ではなくなったが、しばらくは我々の記憶から消えないだろう。
しばらくの間、《 海賊パッチーズ 》をドローした瞬間は『ハースストーン』史上最悪と言われていた。
壊血病に冒されたような姿をしている《海賊パッチーズ》は、他の海賊カードを使った時に召喚されて、テンポを大きく変えてくれることに価値があるカードだったからだ。ドローして手札に存在していても問題はなかったが、その価値は召喚時には遠く及ばなかった。
その《海賊パッチーズ》が今回のリスト入りを果たした理由は、『ハースストーン』のトーナメントシーンのメタを丸1年左右したことにある。
海賊カードとのシナジー効果によって海賊ウォリアーや海賊ローグなどのデッキが生み出されたが、海賊カードとのシナジー効果がないシャーマンデッキさえも、そのインパクトの大きさから 例外的な中立カード として《海賊パッチーズ》を組み込んでいた。
《 ドブネズミ 》は『ハースストーン』にユニークな効果をもたらすカードとして独特の立場を築いている。
我々はこのゲームの中でミニオンのトレード、スペルによる危険回避、カードの排除などを良く行っているが、対戦相手の手札からランダムにミニオンを召喚できるカードはなかった。《ドブネズミ》はコンボ系デッキのプレイヤーには非常に迷惑なカードだった。
対戦相手のゲームプランを完全に狂わせることができるという意味で、《ドブネズミ》は唯一無二のカードだった。
2018年初頭からこのカードがスタンダードで使用できなくなったことは大きな損失として受け止められており、その結果、多くのプレイヤーがこのカードをクラシックに含めるように求めている。
残念ながら彼らの願いは叶いそうにないが、《ドブネズミ》に似た方法、または完全に新しい方法で対戦相手の手札に変化を加えるカードが今後増える可能性は十分にあるだろう。
《 精神支配技師 》は盤面に4体目のミニオンを出すかどうか考えているプレイヤーに恐怖をもたらすカードだ。リードを広げるためにリスクを負って4体目を出すか、《精神支配技師》によって自分のミニオン1体が相手の味方になることを考えて4体目を出すのを諦めるか。このカードを持っているプレイヤーとのマッチはこの判断に悩まされることになる。
また、このカードには「 ランダムな1体を自分の味方にする 」と明記されているが、盤面に出ているミニオンの中でいつも最強のミニオンが選ばれているように感じているプレイヤーは多い。
『ハースストーン』の歴史の中で、この中立カードはメタに何回も組み込まれてきた。戦況を一変させる能力を秘めているこのカードは、対戦相手に恐怖を与えることができる。
《 アジュア・ドレイク 》が栄誉の殿堂入りを果たす前は、『ハースストーン』シーンの全プレイヤーが5マナのカードとしてこのカードをデッキに組み込むかどうかに頭を悩ませていた。
《アジュア・ドレイク》は実に万能なカードで、どのデッキにもすんなりと組み込めた。また、それなりのスタッツ、カードドロー、呪文ダメージも備えていた。
《 炎の王ラグナロス 》や《 シルヴァナス・ウィンドランナー 》と同じで、《アジュア・ドレイク》も組み込めるデッキタイプの数の多さから、『ハースストーン』を代表する存在となった。このカードほど万能で強いカードは現在存在しない。