ここ最近、ウルトラディスタンス・サイクリングの人気がサイクリストたちの間で急速に高まっており、プロ並の長距離と過酷さにトライするアマチュアライダーの数が日に日に増えている。また、グラベルバイク / アドベンチャーバイク市場の成長もあり、愛車とごくわずかな必需品だけでタイムを競い合いながら大陸横断を試みるサイクリストたちも増えている。
しかし、全てのイベントが同じ内容というわけではない。そこで今回は、世界で最もタフなウルトラエンデュランス系サイクリングイベントを選出した。
ウェールズで300km以上の距離を1日で巡るレースにしろ、キルギスタンの荒れた路面と格闘するレースにしろ、過酷さに立ち向かう気概を持つサイクリストだけがエントリーできるイベントばかりだ。
1. Transcontinental Race(ヨーロッパ)
《開催日程:2019年7月26日》
2019年に7回目の開催を迎えるTranscontinental Raceは、ヨーロッパを横断するセルフサポート(自給自足)レースだ。
スタート / フィニッシュ地点、そして必ず通過しなければならない4カ所のチェックポイントが設定される以外、ルートの選択は参加者の判断に任されている。総走行距離は4,000km前後だが、もちろんこれは地図を読み取り、正しいルートを選んだ場合だ。
2019年はブルガリアの黒海沿いをスタートし、ブルガリアの山岳地帯、セルビア、イタリアなどを通ってフランス西部の街ブレストを目指すレースが展開される。途中に何度も待ち構えるヒルクライムはそれだけで十分にタフだが、参加者は2週間分の荷物と共に挑まなければならない。
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2. Race Across America(米国)
《開催日程:2019年6月11日》
Race Across Americaは、1982年、(ほんの少しマッドな)サイクリスト4人がロサンゼルスのサンタモニカ・ピアからニューヨークのエンパイア・ステート・ビルディングを目指してレースしようと決めた瞬間に誕生したイベントで、現在はウルトラサイクリストたちの年間カレンダーに定着している。
近年のルートは、ロサンゼルスのオーシャンサイド・ピアからメリーランド州アナポリスのシティ・ドックまでが設定されており、総走行距離は3,000マイル(約4,828km)、累積標高は175,000フィート(約53,340m=エベレストの6倍以上)、太平洋から大西洋までの12州を横断する。
最大8人のチームでタイムトライアルに挑むのも可能だが、“純粋主義者” のためのソロチャレンジも用意されており、2014年にクリストフ・ストラッサーが7日15時間56分という驚異的な記録を樹立している。
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3. Red Bull Timelaps(英国)
《開催日程:2019年10月26日〜27日》
ワンデイロードサイクリングイベントとしては世界最長を誇るRed Bull Timelapsは2019年も10月に開催される予定で、サイクリストたちは25時間のクリテリウムスタイルレースに挑む。
このレースは、英国のサマータイムが終了する週末に開催され(レース時間が25時間なのはこれが理由)、4人編成のチームが1周6.2kmのコースを時間内に何周できるのかを競い合う。
レースはリレー形式で、コース上を走行できるのは1チーム1人だが、午前2時の “パワーアワー” ではショートルートが使用され、周回数は2倍にカウントされる。このイベントは乗車時、降車時を問わない持久力のバトルで、スティント間の適切な休息とリカバリーが好成績のカギになる。
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4. Silk Road Mountain Race(キルギスタン)
《開催日程:2019年8月17日〜31日》
シルクロードはアジアと地中海世界を結ぶ重要な交易路として数百年間栄えたが、その一部として機能していたキルギスタンにある砂利道と旧ソビエト時代に建造された道路は人々から忘れ去られ、荒廃している。
その姿を見たSilk Road Mountain Raceのオーガナイザーたちは、バイクレースにパーフェクトなロケーションだと考えた。
このレースの参加者たちはほとんど舗装されていないコースをセルフサポート体制で1,600km以上も走ることになる。また、彼らに与えられる栄誉は、完走したという事実だけで、しかも、完走者として認められるのは、首都ビシュケクをスタートし、14日以内にアフターパーティが行われるチョルポン=アタに到着した者だけだ。
尚、それだけでは過酷さが足りないと言わんばかりに、ルート上には累積標高26,000mのヒルクライムが用意されている。
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5. Taiwan KOM(台湾)
《開催日程:2019年10月25日》
その理由が、脚に乳酸が溜まっていくサディスティックな快感なのか、その後に待ち受けている下り坂を高速で飛ばせる確信なのかは分からないが、一部のロードサイクリストたちはヒルクライムを楽しんでいる。
Taiwan KOMは世界で最もタフ(そして長距離)なヒルクライムレースで、参加者たちは海抜0m地点から3,275m地点まで続く全長105kmの坂をひたすら登ることになる。
ルートの4分の3地点から始まる5kmのダウンヒルセクションで軽く息をつけるが、最後の10kmにはこのレースの最もタフなセクション、斜度27.3%という鼻血レベルの激坂が待ち受けている。
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6. Haute Route Alps(フランス)
《開催日程:2019年8月25日〜31日》
ツール・ド・フランス出場を夢見ているが、ビッグチームのサポート、最先端のバイク、実力が不足している? 心配する必要はない。
Haute Routeシリーズなら、参戦障壁に邪魔されずにプロサイクリストとほぼ同じ環境でレースするチャンスが得られる。2019年で9回目の開催を迎える、当シリーズのAlpineエディション(オスカー受賞作ドキュメンタリー『イカロス』の題材となった)では、アドレナリンに満ちた7日間で800kmを走破する。
参加者たちはプロトンとなって累積標高20,000mのヒルクライムにも挑むが、2019年のルートでは、アイコニックなラルプ・デュエズ山頂でジェレイント・トーマス(2018年ツール・ド・フランス総合優勝)気分でフィニッシュを迎えられる。
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7. Dragon Devil(ウェールズ)
《開催日程:2019年6月9日》
ウェールズで開催されるこのワンデイスポーティブは、山岳や疲労、予測しにくい気候などを含む約200マイル(約321km)のライディングを参加者たちに突きつけることで、他のエンデュランスイベントを中途半端に見せている。
ウェールズ南岸のポート・タルボットをスタートするルートは、ライダーたちをブレコン・ビーコンの荒れた路面へと誘ったあと、ミッドウェールズの山岳地帯へと進んでいく。
“悪魔の階段(Devil’s Staircase)” という実に相応しい名称がつけられた登坂区間が最もタフなセクションだが、累積標高約5,000mのこのレースに用意されている、ルートブラック・マウンテン、デビルズ・エルボー、全長10kmのリゴスなどのセクションも実に手強い。
尚、デビルという名称に怖気づいた人のために、3つの短距離(登りも少ない)カテゴリーが用意されている。
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8. Dirty Kanza XL(カンザス州)
《開催日程:2019年5月31日〜6月2日》
米国は何もかもが “ビッグ” なことで有名だが、Dirty Kanza XLも例外ではない。この招待制レースは、カンザス州フリントヒルズの奥地にある350マイル(約563km)の過酷なグラベルコースで開催される。
参加者たちはこの長距離をわずか36時間以内にセルフサポートで走り抜く必要があり、累積標高は15,000フィート(約4,572m)超とされている。
このレースに招待されなかった人は、Dirty Kanza 200と呼ばれる短縮版(タフさは変わらない)へ参加できる。この200マイル(約321km)版では、カンザス州の大草原地帯にある埃っぽいグラベル周回コースを延々と走り続けることになる。
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9. Cape Epic(南アフリカ)
《開催日程:2019年3月17日〜24日》
南アフリカで開催されるCape Epicは、UCIによってカテゴリー外特認された唯一のMTBステージレースだが、このレースでの8日間のライディングを目にすればその理由が簡単に納得できる。
16回目を迎える2019年版では、トレイルやシングルトラック、山岳地帯などを含む全長624kmのルートを8日間で攻略しなければならず、テーブルマウンテン国立公園内には累積標高16,650mの名物ヒルクライムが待ち受ける。
このコースに挑むのは650組のライダーたちで、プロフェッショナルやプロを目指すアマチュアたちが技術的にチャレンジングな地形で接戦を繰り広げる。先ほど紹介したHaute Routeと同じく、このレースもまたプロレベルのサポート体制が用意されているが、このリストに掲載されている他のイベントより楽なわけではない。
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10. Mallorca 312(スペイン)
《開催日程:2019年4月27日》
地中海に浮かぶバレアレス諸島のひとつ、マヨルカ島は、快適な気候、滑らかなアスファルト、長くチャレンジングな登坂区間によって、ロードサイクリストたちにとってのメッカとなっている。この島の封鎖道路で開催されるスポーティブイベントMallorca 312では、サイクリングの素晴らしさを日の出から日没まで味わうことができる。
2019年版には、Coll de FemeniaやColl Puig Major(編注:どちらもスペインで著名なプロロードレース)で使用されるヒルクライム区間も含まれているが、累積標高16,500フィート(約5,029m)の大半は全長312kmのルートの前半に集中している。後半に難所が存在しないレイアウトは参加者にとって朗報だろう。
また、マヨルカ島のライディングを体験したいが長距離に自信がないサイクリストのために、やや短めの距離が設定された225km版 / 167km版も設定されている。
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