Adam Ondra pictured taking on a climbing route in Flatanger, Norway.
© Sender Films/Red Bull Content Pool
クライミング

世界最強クライマーのひとり、アダム・オンドラを知る

世界最高難度5.15dルートの初登や5.15aルートのファーストアテンプト完登など、数々の衝撃的な記録を打ち立てている26歳チェコ人クライマーの素顔に迫る。
Written by Chris Van Leuven
読み終わるまで:6分Published on

21分

第2話: オンドラの時代 - 前編

第2話あらすじ: チェコ出身のアダム・オンドラは、あらゆる面で最高のクライマーになるよう努力し、それを達成してきた。オンドラの心の中にある、若い頃から彼を焚き付けてきた情熱の出どころはどこにあるのか、隠された謎を解き明かす。【歴史を創るクライマーたち(シーズン5/日本語字幕)】

日本語 +10

Red Bull TV『Reel Rock』でアダム・オンドラをチェック!
アダム・オンドラは2017年9月に初登を達成したノルウェー・フラタンゲルにある巨大洞窟内ルート《サイレンス(Silence)》の最難関シーケンスについて次のように語っている。
「4週間かけてやっとクラックス(ルート上の最重要ピッチ)を繋げることができた」
《サイレンス》の登攀は、オンドラにとって何にも増して特別なものだった。最難関ムーブ攻略までの4週間に加え、このルートを制するまでには遠征7回4年という時間が必要だった。
世界唯一の難度5.15dで知られる《サイレンス》は近代ロッククライミング最難関とされており、この難度を制したクライマーはオンドラしかいない。
足を駆使してサイレンス最難関ムーブに取り組むオンドラ

足を駆使してサイレンス最難関ムーブに取り組むオンドラ

© Sender Films/Red Bull Content Pool

あらゆるクライミングカテゴリーを完全制覇

プロクライマーのウィル・ガッドは、オンドラを次のように評している。
「ビッグウォール、ボルダリング、高難度の新ルート、クライミングコンペ… アダムはまるでスプリントからウルトラマラソンまでこなしてしまうスーパーランナーみたいだ。ロッククライミングシーンで彼ほど数多くのカテゴリーを制覇したクライマーはいない」
オンドラは最も得意とするアウトドアクライミングでの数多の成功に加え、インドアクライミング世界選手権のボルダリングとスポーツクライミングでも優勝している。これはクライミング史上初の偉業だ。
オンドラはクライミングのあらゆるカテゴリーに精通している

オンドラはクライミングのあらゆるカテゴリーに精通している

© David Robinson/Red Bull Content Pool

世界最難関ルートとクライミングコンペの両方を制するために、チェコ・ブルノ出身の26歳は精力的なトレーニングで肉体と精神の両方を鍛え上げている。
天才が天才である理由を確認していこう。

6歳でクライミングを始める

アダムはクライマーの両親(母エヴァ・父ミロスラフ)のもとに生まれ、6歳で2人からロッククライミングの手ほどきを受けた。
「僕はクライミングをするために、というか、ハードにクライミングするためにこの世に生を受けた」と語るオンドラは、弱冠13歳で難度5.14dルートの完登を果たしている。
2013年、アダムは世界最高難度ルート《ラ・デュラデュラ(La Dura Dura)》で当時世界最強クライマーとされていたクリス・シャーマとプライベートで初登を競い合い、シャーマに勝利した。
オンドラが極小のホールドからホールドへ飛び移る中、いつもと同じように彼のシャウトが石灰岩の峡谷にこだまし、滑落時はそのシャウトがさらに大きくなった。《ラ・デュラデュラ》の初登にはアテンプト70回9週間を要した。
シャーマは「極めて精密な “クライミングマシン” にお目にかかれて嬉しいね」とコメントした。

21分

第1話: ラ・デュラデュラ

第1話あらすじ: クリス・シャーマは15年間スポーツクライミングの頂点に立ち続けてきたが、19歳のアダム・オンドラがその背後に迫っている。レジェンドと若き天才がチームを組んでスペイン・カタルーニャ地方へ向かい、世界最高難度ルートのひとつに挑む。【歴史を創るクライマーたち(シーズン1/日本語字幕)】

日本語 +9

世界最高難度のビッグウォール・フリークライミングを次々と達成

2016年、アダムはあるひとつの目標を胸にヨセミテ国立公園を訪ねた。高さ3,000フィート(約914m)を誇るエル・キャピタンが擁する世界最高難度フリークライミングルートドーン・ウォール(Dawn Wall / 難度5.14d)》の第2登がその目標だった。
ホールドがほとんど存在しない花崗岩の巨大な壁を登攀しなければならないこのルートは、2015年にトミー・コールドウェルケビン・ジョージソンが7年の準備を経て19日間連続アテンプトで初登を記録し、世界中でビッグニュースとなっていた。
そしてオンドラはたった7日弱で第2登に成功。「険しくて怖いし、難しいね!」とコメントを残した。
Andre Ondra captured on the Dawn Wall climb on El Capitan in Yosemite National Park.

Ondra on the Dawn Wall in 2016

© Sender Films/Red Bull Content Pool

心身を鍛える

現在、アダムは、クライミングはパトクシ・ウソビアガ、メンタルはフィジオセラピストのクラウス・イゼールから指導を受けている。
また、アダムはボディポジションを最適化してスムーズなムーブを実現するためにバレエインストラクターからも指導を受けている。インストラクターのひとりは『Reel Rock』の最新エピソード内で次のように語っている。
「獲物を捕まえようとするネコが非常にゆっくりと動くのと同じだ」
細部へのこだわりと考察がオンドラの登攀をレジェンドにしている

細部へのこだわりと考察がオンドラの登攀をレジェンドにしている

© Sender Films/Red Bull Content Pool

また、アダムはビジュアライゼーションの集中トレーニングも定期的に行っている。
シャウトのタイミングも含めた高難度ルートの登攀を脳内でリハーサルすることで、彼はパーフェクトなクライミングと目標達成を明確にイメージしている。
他のルートの可能性もビジュアライズする

他のルートの可能性もビジュアライズする

© Sender Films/Red Bull Content Pool

難度5.15aをファーストアテンプトで達成

『Reel Rock』の最新エピソードでは、世界初となる5.15aルートでの “フラッシュ”ファーストアテンプトでの完登)を狙うアダムが確認できる。
理想的ではない高湿度のエリアに足を踏み入れ、他のルートでは途中で足を滑らせてもいたが(ネタバレ注意)、最終的にアダムはフランス・サン=レジェールにある高さ20mのスポーツクライミングルート《スーパークラッキネット(Super Crackinette)》のフラッシュに成功した。

30分

第3話: オンドラの時代 - 中編

第3話あらすじ: アダム・オンドラは、よりスキルを磨くことに重点を置き、同じくらい力強さを身につけることを学んだ。そして彼は、9A+を制覇するために自分自身に挑戦する。それはすなわち、トップに上り詰めるための一歩をついに踏み出したことを意味していた。【歴史を創るクライマーたち(シーズン5/日本語字幕)】

日本語 +9

アダムは自信と共に《スーパークラッキネット》のクラックスへ向かうと、一気にジャンプしてモノポケット(1本指のホールド)へ移り、ファーストトライではほぼ不可能と思われていたシーケンスをクリア。その後もほとんど苦しむことなく登攀を続け、20年に及ぶトレーニングの成果を見せつけた。
また、アダムはカナダ・アルバータ州アセファルにある5.15bルートディスビリーフ(Disbelief)》の初登にも成功している。
トレーニングを積み世界最高難度のラインへ挑むアダムの姿を見ていると、ダイヤモンドの刃物を研いでいるイメージが思い浮かぶ。粗い部分を磨き上げながら、精密かつ確実にパーフェクトへ近づいていくアダムはこれまでに5.15ルートを60本以上クリアしている。
このようなムーブの実現には驚異的な柔軟性と強靭な筋肉が必要

このようなムーブの実現には驚異的な柔軟性と強靭な筋肉が必要

© Sender Films/Red Bull Content Pool

さらなる高みを目指して

現在、アダムは動画シリーズ『Road To Tokyo』に取り組んでいる。このシリーズは、2020年のインドアクライミングとスピードクライミングで表彰台の頂点に登ることを目標にトレーニングに励むアダムの姿を追っている。
アダムは5.16aルートの世界初完登を実現するのだろうか? 果たしてそれは可能なのだろうか? アダムの挑戦にこれからも注目しよう。

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作品名【Reel Rock -リール・ロック-】

地球上で最もワイルドな場所で世界のトップクライマー、アルピニスト、登山家を追いながら、さらなる大冒険を求める過程における勝利、失敗、挽回のストーリーを紹介する。(日本語字幕)

7 シーズン · エピソード55
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