Sergio Perez in the cockpit of the RB19
© Getty Images / Red Bull Content Pool
F1

【F1を学ぶ】コックピットとドライバーの視界

普段は外側から眺めることしかできないF1マシンのコックピットへ潜入し、ドライバーには何が見えているのかを調べてみた。
Written by Jakub Winiewski
読み終わるまで:5分Published on
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狭さと安全性を両立

F1マシンのコックピットはドライバーの仕事場だが、コックピットに座る彼らは加速・旋回・減速時の強烈なGフォースからアクシデントによる大怪我までのあらゆる危険に晒されている。そのため、コックピットが外部要因から最大限守られていることがドライバーの健康と安全の確保において不可欠なのだが、一方で、ドライバーができるだけ快適な状態でいることも重要だ。
その快適性を実現するために各ドライバーの体型に合わせて製作したシートが使用されており、腕や脚を最大限自由に動かせるようにしつつどちらも隠せるように着座位置ができる限り低くセットされる
F1黎明期と現代ではコックピット環境にも隔世の感がある

F1黎明期と現代ではコックピット環境にも隔世の感がある

© Jiří Šimeček/Red Bull Content Pool

コックピットはそのマシンに乗るドライバーに合わせて緻密に作り込まれているため、ドライバー交代の必要が生じたときは専用シートを用意するだけでは完全な快適性は確保できない。ヘッドレストの幅が広すぎたり、アクセル&ブレーキペダルが近すぎたりするとコックピット内の正確で安全なポジショニングが妨げられてしまうのだ。
要するに、特定のドライバー専用に調整されたマシンは他のドライバーが乗り込んでも同じ快適性は得られない。たとえば、マックス・フェルスタッペンセルジオ・ペレスが調整なしでお互いのマシンに乗り込むことはできない。少なくとも各自の専用シートとステアリングホイールが必要になるが、いずれせよそれだけでは完全な快適性は得られない。
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ヘルメット&ミラー

ドライバーの頭部は最大限の保護をしなければならないので、頭部を守る機能が必須だ。かつてのヘルメットは頭部の上半分だけを覆う質素なキャップだったが、やがて似た形状のハードシェルが登場した。しかしながら、これらのヘルメットは顔の部分が露出していたため、ドライバーの視界が妨げられることは一切なかった。
フルフェイスタイプのヘルメットは1970年代から採用されるようになり、この形状は様々な改良と進化を経ながら現在も使用されている。近年のフルフェイスヘルメットは比較的小型のバイザーを備え、そのサイズはレギュレーションで規定されている。また、バイザー上部にしばしばスポンサーロゴが貼られており、これらがドライバーの視界をさらに狭める。
結果、ヘルメットを装着したドライバーがコックピットに乗り込んでバイザーを閉じると、前方・側方の視界は狭いヘッドレストの内側で頭を動かせる範囲内だけに限られてしまう
F1マシンのミラーは小さいが非常に重要な役割を持つ

F1マシンのミラーは小さいが非常に重要な役割を持つ

© Getty Images / Red Bull Content Pool

ドライバーは後方の視認性確保のためにミラーを必要とするが、ここで利害の対立が発生する。ドライバーにとってミラーはマシンの周辺確認をアシストしてくれる不可欠なアイテムだが、エンジニアたちにとってはマシン周辺の気流を乱す要素に過ぎないのだ。
そこで、ドライバーに最大限の視認性をもたらしつつ、エンジニアがミラーを極小サイズにするのを避けるべく、ミラーの最小サイズもテクニカルレギュレーションによって定められている
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極めて狭い視界

狭いケージの中に押し込められたドライバーから見える視界はごくわずかだ。ドライバーは正面前方(あるいはわずかに斜め上)しか見ることができず、視線よりも下にあるものは何も見えない
つまり、ドライバーからはフロントウイングはもちろん斜め後方から迫るライバルの姿も視認できない。スターティンググリッドで停止しているときもミラーに映る範囲外のものは何も見えないのだ。
ちなみにスターティンググリッドでは、マシンよりも広い幅までラインが延長されており、ドライバーのフロントタイヤを合わせるべき位置が示されている。定められたグリッド停止位置が近づくと、ドライバーにはシグナル音で知らされる。
近年のF1はドライバーのヘルメット内部に超小型カメラを内蔵して、ドライバー視点の映像をファンに提供している。この映像だけでも時速300kmで疾走するマシンの周囲の小さな物体を視認することがいかに難しく、ライバルをオーバーテイクするときの視界がどれほど狭いかが理解できるだろう。
しかし、F1ドライバーは極限まで訓練されているため、そのような状況でも前方を走るマシンのオイル漏れやコース上に入り込んだ野生動物などに気づくことができる。
私たち一般人が自動車を運転するときは、誰もが道路の前方に目を向ける。しかし、サーキットを走るドライバーたちは、“道路” の考え方をわずかに変える必要がある。何より、ドライバーは目の前にあるコーナーではなく、すぐに近づいてくる次のコーナーに目を向けなければならない
彼らの視点が向けられている方向は、アイトラッカーを装着してシミュレータードライブを行うF1ドライバーを捉えた映像から克明に理解できる。
F1マシンのドライブには優れたスキルと反射神経が要求される。ドライバーは限られたデータと不完全な視界に基づいてコンマ数秒単位の判断を下さなければならない。1回でもミスを犯せば、運が良ければポジションをひとつ落とすだけで済むかもしれないが、最悪の場合は(時として深刻な)アクシデントに繋がる。
マックス・フェルスタッペンセルジオ・ペレスならこのような困難にも上手く対処してオラクル・レッドブル・レーシングにさらなる勝利をもたらすだろう。

9分

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