© Clive Rose/Getty Images/Red Bull Content Pool
F1
F1とF2の違いを知る
F1とF2の違いについて不思議に思ったことはあるだろうか? マシン構成から選手権のフォーマットまで似ているようで異なる両カテゴリーの主な違いを解説する。
2年連続でのF1ワールドチャンピオンとなる数年前、オラクル・レッドブル・レーシングに所属するマックス・フェルスタッペンにはわずか1年のF3経験しかなく、F2をドライブした経験は皆無だった。
わずか17歳で史上最年少F1デビューを飾り、さらには史上最年少入賞記録、18歳228日での史上最年少優勝記録などの栄誉を手中に収めてきたマックスは次のように語る。
「僕はF3にたった1年乗っただけだったから、F1への進級は大きな飛躍だった。だから、他のドライバーならF2のうちに経験を済ませていたようなミスをいくつか犯したと思う」
FIA F2はF1に次ぐシングルシーター選手権と位置づけられている。F1昇格を目指すドライバーたちがレーシングスキルを磨く登竜門がF2なのだ。
ドライバーの経験はさておき、今回はマシン構成からシーズンのフォーマットまでのF1とF2の主な違いを詳しく解説していく。
01
マシンの違い
《シャシー》
F1では全チームがそれぞれのマシンの製造を担っており、各チームはそのシャシー(エンジンを含む)を製造するマニュファクチャラーに因んだチーム名称を名乗っている。
2021シーズン、F1は各チームの戦力格差を是正すると同時に接近したバトルを目指すべく1億3000万ユーロのコストキャップ制を導入した。この金額は1チームがマシンのパーツおよびチーム運営に使用できる予算の上限を示している。
2022シーズンはコストキャップの上限が1億2770万ユーロまで引き下げられ、2023シーズンから2025シーズンまでは1億2100万ユーロに定められている。
一方、F2ではイタリアのレースカーマニュファクチャラーのダラーラが手がけるシャシーから英国のヒューランドが製作するギアボックスまでのすべてが全マシン同一となっている。これには優れたマシンを作り上げるチームの能力ではなく、ステアリングを操る各ドライバーの真のスキルセットを明らかにする目的がある。
《重量》
F1マシンの重量は約798kg(ドライバー含む)だが、F2はやや軽く約755kg(ドライバー含む)となっている。
《使用エンジンとトップスピード》
F1で使用されているエンジンは、F2のエンジンよりも格段にパワフルだ。F1エンジン(パワーユニット)は約1,000馬力を誇るが、F2は最大でも約620馬力となっている。
このためF1マシンの平均速度はF2より16〜24km/hほど速い。F1マシンのトップスピードは約370km/hを超えるが、F2マシンのトップスピードは320km/h未満に留まる。
02
レースフォーマットの違い
レースウィークエンドの構成からシーズンの形態まで両シリーズのフォーマットにはそれぞれ違いが存在する。
《レースウィークエンド》
F1レースウィークエンドの大半は、計3回のフリープラクティスセッション(金曜日午前 / 金曜日午後または日没後 / 日曜日午前)とQ1 / Q2 / Q3の計3セッションで行われる予選(土曜日のフリープラクティス3回目のあとに行われる)で構成されている。決勝レースは日曜日に開催される。
しかし、過去2シーズンのF1では、3戦が新たに導入されたスプリントの舞台に選ばれた。また、導入3年目を迎えた2023シーズンは計6戦のスプリントウィークエンドが組み込まれている。
スプリントが初導入された2021シーズン当初、プラクティスセッションは金曜日午前と土曜日午前の2回のみだった。2022シーズンまで採用されていたフォーマットでは金曜日のフリープラクティス1回目のあと同日午後にこれまでと同じ形式の予選セッションが行われ、この結果を元に土曜日のスプリントのスタート順が決定していた。
加えて、スプリント導入後の2シーズンはスプリントでの順位結果で日曜日の決勝レースのスターティンググリッドが決定していたが、2023シーズンから金曜日の予選で日曜日の決勝スターティンググリッドを決める方式へ変更され、フリープラクティスは金曜日午前の1回のみとなった。
同時に土曜日はスプリント・シュートアウトとF1スプリントだけが開催される1日となった(2023シーズンから採用されている新スプリントフォーマットの詳細はこちら>>)。
F2はレースウィークエンド全戦で2022シーズンまでのF1スプリントと非常に近い予選方式を採用しているが、以下の2つの大きな違いがある。
- F2では金曜日の予選結果で日曜日のフィーチャーレースでのスターティンググリッドが決定する。その代わり、土曜日のスプリントレースは各ドライバー / チームがポイントを獲得できる独立したイベントとなっている。
- 土曜日に開催されるF2スプリントレースのスターティンググリッドは、金曜日の予選結果の上位10名が逆順のリバースグリッド制(予選1位は10番手、予選2位は9番手と続き、予選10位がポールポジションからスタートする)が採用されている。11番手から22番手は予選順位と同じスタートポジションとなる。
《レースディスタンス》
F1とF2は同日に同一サーキットでレースを開催する。F2が先にレースを行う。
F2のレースはF1よりも早い時間帯に開催されるため、F1よりもレースディスタンスはかなり短い。F2レースは日曜日のフィーチャーレースでは1時間または約105マイル(170km)で行われ、いずれかに達した時点で終了となる。
F1の決勝レースは最短でも約190マイル(約305 km)だが、モナコGPだけは唯一の例外となる。
F2は全戦がF1のサポートレースとして開催されるが、この2シリーズはすべての週末で併催されるわけではない。2022シーズンのF2は全14戦開催されたが、これはF1の8戦が併催ではなかったことを意味する。
《ポイントシステム》
ドライバーとチームのランキングを決めるポイントシステムはF1とF2で非常に似通っているが同一ではない。
F1決勝レースとF2フィーチャーレースのポイントシステムは同じで、以下の通りとなっている。
- 1位:25ポイント
- 2位:18ポイント
- 3位:15ポイント
- 4位:12ポイント
- 5位:10ポイント
- 6位:8ポイント
- 7位:6ポイント
- 8位:4ポイント
- 9位:2ポイント
- 10位:1ポイント
- 11位〜20位:0ポイント
しかし、ここから先はポイントシステムに違いが生じる。F1では決勝レースでファステストラップを記録しつつ10位以内で完走したドライバーに1ポイントが追加される。
また、スプリントの優勝者には8ポイントが付与され、上位8名(1ポイントずつ減っていく)までが入賞となる。9位から20位まではノーポイントだ。
一方、F2でのポイントシステムはやや異なる。
F2ではフィーチャーレースまたはスプリントレースでファステストラップを記録しつつ10位以内で完走したドライバーに1ポイントが付与される。また、F2では金曜日の予選セッションでポールポジションを獲得したドライバーにも2ポイントが付与される。
F2ではスプリントレースでのポイントシステムもまた異なっている。スプリントレースの優勝者には10ポイントが与えられ、2位には8ポイントが付与される。3位6ポイント以降は順位がひとつ下がるごとに1ポイントずつ少なくなり、9位から22位までのドライバーはノーポイントになる。
このため、F2に参戦するドライバーがレースウィークエンド1回で獲得できる最大ポイント数は以下のように39ポイントとなる:
- スプリントレース優勝者:10ポイント
- フィーチャーレース優勝者:25ポイント
- 予選ポールポジション:2ポイント
- スプリントレースのファステストラップ:1ポイント
- フィーチャーレースのファステストラップ:1ポイント
03
ドライバーの違い
フォーミュラレースを戦うドライバーたちにとって、その頂点はF1だ。つまり、現在F1に参戦しているドライバーたちはすでに最高レベルに到達しており、彼らの唯一の夢はF1ワールドチャンピオンになることだ。あるいは、マックス・フェルスタッペンならさらにタイトル獲得数を重ねていくことが夢になる。
F2に参戦するドライバーたちはこのシリーズをさらなる大舞台に向けた足掛かりと捉えており、F1のシート獲得が彼らの目標だ。現在フェラーリに在籍するシャルル・ルクレールをはじめ、ジョージ・ラッセル(メルセデス)やニック・デ・フリース(元スクーデリア・アルファタウリ)など多くのドライバーがF2での成功を経てF1へ昇格している。
現在のF2も才能の宝庫で、レッドブル・ジュニアチームに所属するドライバーたちも数多く含まれる。2023シーズンのFIA F2に参戦するレッドブル・ジュニアチーム所属ドライバーにはジャック・クロフォード(米国)、デニス・ハウガー(ノルウェー)、岩佐歩夢(日本)、エンツォ・フィッティパルディ(ブラジル)やゼイン・マロニー(バルバドス)などが名前を連ねている。
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