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eスポーツ

『CS:GO』:eスポーツレジェンドタイトルの歴史とレガシーを振り返る

『カウンターストライク:グローバルオフェンシブ』の時代は終わったが、記憶には永遠に残り続ける。eスポーツとゲーミングに大きな影響を与えた作品の歩みを今一度振り返っていこう。
Written by Joakim Henningson and Jack Ridsdale
読み終わるまで:6分Published on
『カウンターストライク:グローバルオフェンシブ』(略称:『CS:GO』)はただのビデオゲームではない。ひとつのカルチャーだ。このタイトルは高速かつ高精度だ。またスリリングで戦略性も非常に高い。
序盤のバイから終盤のクラッチまで、オーディエンスはハイレベルなアクションのたびに腰を浮かせている。今回は、比較的静かだったスタートから最も人気の高いeスポーツタイトルのひとつになるまでの『CS:GO』の道のりを辿っていこう。
ヨーテボリで開催された【Red Bull Gibaway】の参加者

ヨーテボリで開催された【Red Bull Gibaway】の参加者

© Stephanie Lindgren/Red Bull Content Pool

『CS:GO』はValve初の本格的なeスポーツタイトルだった
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『カウンターストライク』の誕生

1998年11月、『Half-Life』がPCでリリースされ、この非常に面白いストーリーベースのFPSシューターによってValveは世界にその名を知られるようになった。タイトな銃撃戦や終わりのない探索にプレイヤーたちは虜になった。Minh “Gooseman” LeJess “Cliffe” Cliffeはそのようなプレイヤーで、偶然なことにどちらもアマチュアのゲーム開発者だった。
そしてこの『Half-Life』の優秀なシステムにインスパイアされる形で2人が開発したのが、のちにシリーズ化されるマルチプレイヤー用MOD『Counter-Strike』(以下『カウンターストライク』)だった。
2000年、GoosemanとCliffeがValveと組んで公式スタンドアロン版『カウンターストライク』をリリースすると、瞬く間に大ヒットとなった。プレイヤーたちは複数のラウンドで戦いながら、爆弾の設置と解除、そしてキルによるゲーム内通貨の獲得に夢中になった。
仲間意識は『CS:GO』シーンの魅力のひとつ

仲間意識は『CS:GO』シーンの魅力のひとつ

© Stephanie Lindgren/Red Bull Content Pool

プレイヤーたちは高い反射神経とスピーディーなゲームプレイに共感するとすぐにコミュニティを創出し、さらに自分たちでマップを作成するようになった。そしてその中から人気マップが生まれるようになると、当然ながらゲームもさらに成長していった。
コンペティティブなプレイが人気を獲得するようになると、すぐにeスポーツシーンが形成されていった。Cyberathlete Professional Leagueのようなメジャーイベントが開催されるようになり、Ninjas in Pyjamasのようなチームがワールドステージで活躍するようになった。こうして世界から興味を持たれるようになると、Valveは『カウンターストライク』続編の開発を決定した。
トッププレイヤーは世界中にファンを抱えるビッグスターとなった
前作よりもグラフィックは向上したが反応が鈍いと評価されたその続編『Counter-Strike Source』(略称『CS:S』)は多くのファンが失敗作と捉えた。コミュニティは2作のうちのどちらが優れているかで意見が分かれ、この意見の相違が彼らの分断を招いた。
このような内戦が起きていた一方、eスポーツシーンは新たな高みに到達し、Intel Extreme Mastersが『カウンターストライク』シーン最高のトーナメントとして君臨した。今でもこのイベントは『カウンターストライク』最高峰メジャーイベントのひとつに数えられている。
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唯一無二のシューターへ

2010年を迎えると、『カウンターストライク』シリーズの人気を保つために何かしらの新作が必要なことが明らかになり、『CS:GO』の開発が進められることになった。そしてそれから2年後、リリースが近づき、ファンが盛り上がっていくと、『CS:GO』は『カウンターストライク』シリーズの行方を決める作品になるように感じられるようになった。
『CS:GO』のリリース後の評価は生温かったが、Valveは勝負に出て、アップデートや修正パッチを次々と投入し、ゲームプレイをさらに向上させた。暗視スコープ(ナイトビジョン)のような新機能が実装され、キャラクターの動作も修正されて反応性が向上した。また、武器の種類も増加したため、戦術の幅が広がった。
「投げ物を投げる・ピークする・銃を撃つ・購入する」という中心的なゲームプレイルはそれまで以上に満足度が高くなり、新機能の数々がゲーミングエクスペリエンスを向上させた。往年の『カウンターストライク』ファンが『CS:GO』に乗り換えるまで長い時間はかからなかった。
コミュニティがシリーズ黎明期の成功を支えた
タクティカルなゲームプレイが世界から支持された

タクティカルなゲームプレイが世界から支持された

© Stephanie Lindgren/Red Bull Content Pool

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コンペティティブシーンの台頭

『カウンターストライク』シリーズのeスポーツシーンが爆発的人気を獲得していくと、『CS:GO』の新しいマッチメイクシステムがトッププレイヤーたちの興味を引くようになった。IEM Katowiceのようなイベントが大きな話題となり始めたのはこの頃で、Kenny “KennyS” Schrubのノースコープキルなどがインターネットの掲示板を賑わせるようになった。
2010年代中頃、『CS:GO』フィーバーは世界に広がり、ヨーロッパと北米のプロチームたちが数百万ドルの賞金総額が用意されたビッグトーナメントでの覇権を争うようになった。
勝利の味は病みつきになる

勝利の味は病みつきになる

© Stephanie Lindgren/Red Bull Content Pool

プレイヤー数とメジャーイベントの視聴者数が急増していく中、Natus Vincereに所属するOleksandr “s1mple” KostylievTeam Vitalityに所属するMathieu “ZywOo” HerbautG2 Esportsに所属するNikola “NiKo” Kovačのようなスタープレイヤーたちが人気となった。
『CS:GO』の黄金時代は議論がそれなりに起きた時代でもあった。武器のスキンが追加されたことで、“スキン賭博” が誕生し、Valveをスキャンダルに放り込むことになった。また、プロリーグでのチート行為も問題化していった。
しかし、このような問題が起きても、『CS:GO』の勢いが止まることはなく、ファンたちはこのタイトルに長時間を費やして、ランキング上位を目指し続けた。
『CS:GO』は世界的な現象だった
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色褪せない魅力

2023年、『カウンターストライク』シリーズの新時代が始まった。『カウンターストライク2』(以下『CS2』)というストレートな名前が付けられたこの新作は、他の人気シューターと同レベルの美しいビジュアルが用意された他、物理演算とエフェクトもアップデートされてより現実に近いゲーミングエクスペリエンスが得られるようになった。
現在、『カウンターストライク』のeスポーツシーンは非常に大きく成長しており、世界各地でメジャートーナメントが開催されて数百万単位の視聴者とプレイヤーを集めている。史上最大の『CS:GO』トーナメントとして知られるPGL Major Stockholm 2021最多視聴者数275万人を記録し、『カウンターストライク』シリーズがひとつの巨大な産業になったことを示した。
ファンたちは美しいビジュアルを誇る『CS2』を好んでいるが、『CS:GO』には他では補完できない非常にユニークな魅力が備わっている。すでに『CS:GO』はプレイできなくなっているが、このタイトルはeスポーツシーン、ひいてはゲーミング全体の一大転換点としてファンの記憶に永遠に残り続けるだろう。
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