ランニングの中では短距離に入るかもしれないが、10kmの全力ランはハーフマラソンと同じくらいチャレンジングだ。
好タイムを記録するためには、高強度(途中でギブアップしない程度の強度)でのランニングをある程度の長さで続けられるようになると同時に、ある程度の痛みと不快感に耐えられるようになる必要がある。
10kmを正しく走れるようになるためには、集中的なトレーニング、戦略的な走り、特定のマインドセットを揃えて、メンタルとフィジカルを強化しなければならないのだ。
そこで今回は、10km自己ベスト更新を連発できるようになるために、英国人ランニングコーチのローラ・ファウンテンにアドバイスとヒントを教えてもらうことにした。
01
1週間の総走行距離を徐々に増やす
10kmランに向けたトレーニングとして1週間にどれだけの距離を走れば良いのかは個人差があり、現在の週平均走行距離によっても変わってきますが、初心者ランナー全員に共通して言えることがひとつあります。それは、走行距離と頻度を急激に増やすのはNGということです。
走行距離は1週間ごとに10〜20%増やしていきましょう。また、ラン1回で増加分すべてを一気にカバーするのではなく、1週間の走行回数で均等に割るようにしましょう。そして、他の週よりも走行距離を減らす週も用意しましょう。走行距離を短くすることで身体を休ませるのです。
週3〜4回走れているなら、質の高い練習を組み込んでいきましょう。スピードトレーニングやテンポラン、持久力アップのためのロングランなどを含めるべきです。週4回以上快適に走れているなら、イージーペースのランも含めましょう。
02
閾値走を取り入れる
乳酸性閾値とは、筋肉内の乳酸が生成されるスピードが、乳酸が除去されるスピードを上回る値を指します。つまり、身体に乳酸が溜まり、疲労を感じ始めるタイミングです。乳酸性閾値の正確な値を知るためには、特別な施設での計測と血液検査が必要になりますが、ある程度予測することはできます。
たとえば、経験豊富なベテランランナーの場合は、10kmラン〜ハーフマラソンのペースのどこかに乳酸閾値が存在しています。通常は、自分の10kmランのペースに約6〜10秒、5kmランのペース(/km)に約12〜20秒足したペースが閾値走のおおよそのペースになります。
トレーニングでは、閾値走の時間を徐々に延ばしていきましょう。3週間のトレーニングブロックを組んでいるなら、次のように増やしていくのが良いでしょう。
- 8分 x 3本(間にリカバリージョグ3分)
- 12分 x 2本(間にリカバリージョグ4分)
- 15分 x 2本(間にリカバリージョグ4分)
尚、上記の閾値走に取り組む際は、毎回前後に最短1.5kmのイージーランを取り入れましょう。
03
インターバル走でスピードとランニングエコノミーを向上させる
短距離・高速のインターバル走はトップスピードの向上に効果的ですが、ランニングフォームとランニングエコノミーの向上にも役立ちます。身体に「速く走れ」と指示を出すことで、身体にその方法を見つけさせるのです。その方法には、ケイデンスやストライドの向上などの生体力学的アプローチも含まれています。
インターバル走にはメンタルへの効果も期待できます。ギブアップしたいと思ったときにもう1本走ったり、あと1周同じペースで走ったりすれば、それだけ強いメンタルが手に入るので、レース当日に役立つはずです。
インターバル走に取り組む前にしっかりとウォームアップしておきましょう。トレーニングの前後に最短1.5kmのイージーランを取り入れてください。また、ダイナミックストレッチやランニングフォーム向上を目的としたランニングドリルにも取り組みましょう。
インターバル走のトレーニング例:
- 800m x 6本(ペース:5kmラン / 間に400mリカバリーイージーラン)
- 200m x 8本(ペース:1,500mラン / 間に200mリカバリージョグ)
- 2分 x 5本(ペース:5kmラン)+ 4分 x 4本(ペース:5〜10kmラン)−
- (間に90秒レスト / 前半終了後に3分レスト)
04
レースペースで走る
10kmレースペースでのトレーニングはメンタルとフィジカルの両方に効果があります。
目標レースペースで走れるようになるためには、フィジカルを調整しつつ、タフな状況を乗り越えられるようにメンタルも調整する必要があります。また、ペースを身体に馴染ませて、数秒ごとにウォッチを確認しなくても正しいペースで走れていることが分かるようにしておくことも重要です。
レースペースのトレーニングはこれらのすべてに効果的です。まずは目標ペースで5分走ることから始めてみましょう。シンプルなインターバルトレーニングなら、目標レースペースでの5分 x 5本(間にショートレスト)が良いかもしれません。そこからレースペースを維持しつつ、1,500m x 4本まで距離を延ばしていきましょう。ウォッチに頼りすぎないようにして、自分のレースペースを身体で覚えましょう。
05
週1回のロングランでスタミナをつける
ロングランは持久力の向上に役立ちます。10kmランなら18km走れば十分です。筋肉の毛細血管密度を高めたり、体内のグリコーゲン貯蓄量を増やしたり、筋肉のミトコンドリアの数とサイズを高めたりすることで、身体の持久力が高まっていきます。
ですが、ロングランの恩恵を最大限受け取るためには、正しいペースで走る必要があります。多くのランナーが犯しているミスは、速すぎるペースでのロングランです。ロングランは10kmランのペースよりも20〜30%遅いペースで走るようにしましょう。
06
レースを賢く選ぶ
出場するレースを賢く選びましょう。大都市での10kmレースは自分と同レベルのランナー(そしてオフィシャルのペーサー)が数多く参加する可能性が高いので、自分のペースで他のランナーにレースを引っ張ってもらえます。ですが、自分が狙っているペースによっては、ランナーが多すぎて思うような走りができないと感じるかもしれません。
自分のペースで快適に走りたいランナーには小規模なレースが良いのかもしれませんが、高速ペースで好タイムを狙っていきたいなら、このようなレースでは孤立してしまい、苦しさが増す可能性があります。レースを選ぶときは、過去の結果を参照して、目標にしているペースまたはタイムで走っているランナーの人数を確認しておきましょう。
また、1年に複数回開催されているレースを探してみるのもグッドアイディアです。1年を通じて同じコースを走るので、自分の進捗を確認しやすくなります。
07
正しい位置からスタートする
過去のレース結果を確認することは、自分のスタート位置の見極めにも役立ちます。一緒に走る仲間がいないときは尚更です。後方からスローペースでスタートしてしまえば、そこからリズムを掴んでいくのが難しくなります。正しい位置からスタートすれば、最初から良いペースで走れます。
とはいえ、スタートでは前に出過ぎないように注意しましょう。自分よりも速いペースのランナーたちと一緒にスタートしてしまえば、オーバーペースになってしまう可能性が高く、そうなれば後半にバテてしまいます。
また、コースを下調べしておくことも重要です。カーブのインとアウトどちらを走れば良いのか、上り坂と下り坂がどこにあるのか、そしてどこにゴールがあるのかが理解できれば、正しいタイミングでスパートをかけられるようになります。
1分
Wings for Life World Run アプリ紹介トレーラー
08
不快感に耐えられるメンタルを手に入れる
ランニングに抜け道は存在しません。10kmランで自己ベストを更新するためには、レース中に不快感や痛みを感じなければなりません。これらに耐えられるようになるためには、「レースは楽ではなく、ラスト3分の1は辛いだけ」という意識を持つことが助けになります。
レースペースでのトレーニングと厳しいインターバルセッションから得られるものがこの意識です。辛いときに「このペースで練習してきた。辛い練習を乗り越えてきた。そしてこの辛さは永遠には続かない」と考えることができれば、自信を得ることができます。
タフなセクションでの意識をあらためてみましょう。辛くなってきたら、「辛くなるのは想定内だ。辛いのは頑張っているからだ」と考え直しましょう。また、このようなタイミングのためのスローガンやメッセージを用意しておきましょう。私の場合は、「ここを目指してきた」や「目標がクリアできたら繰り返さなくて済む」と自分に言い聞かせるようにしています。
(了)
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