A photo of Mia Stellberg posing for the camera
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eスポーツ

esportsとスポーツ心理学

スポーツ心理学者がesportsにおけるメンタルの重要性とプレイヤーのサポート方法について語った。
Written by James Pickard
読み終わるまで:6分Published on
コンピューターのディスプレイの前に座り、大好きなゲームをプレイする生活」は、esportsスーパースターに憧れる多くの人には夢の生活に映るかもしれない。
Dota 2』、『Counter-Strike: Global Offensive』、『League of Legends』のようなゲームに情熱と才能を注ぎ、非常に魅力的なキャリアを作り出すことは可能だ。しかし、このシーンにおける成功条件は純粋なスキルだけではないということに誰もが気づき始めている。
esportsは伝統的なスポーツよりもフィジカルの要求度が高くないという意見が定期的に出てくるが、esportsプレイヤーのフィジカルとメンタルの健康を考えることが非常に重要なのは確かだ。
また、自分を高めるために毎日10時間ゲームをひたすらプレイするのは物理的に可能かもしれないが、それが健康的なのか、または成功を約束するのかと言うと、必ずしもそうではない。
これがesports心理学者、Mia Stellbergの提起する問題点のひとつだ。Stellbergは、esportsシーンの中に存在する旧態依然の価値観を変え、プレイヤーの健康の重要性への意識を高めたいと考えている。
今回は、このゴールを達成したいという熱い思いを彼女に語ってもらいつつ、プレイヤーの心身をベターにするために彼女が用いているテクニックをいくつか紹介しもらうことにした。
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全ては、StellbergがAstralis(彼女がesportsシーンと関わり合うきっかけとなったプロチーム)と仕事をしている時に始まった。
ここで彼女は、チーム全体の機能性を高めたり、コーチやプレイヤーひとりひとりの話を聞いたりと自分がチームメンバーの様々な部分を助けられることに気が付いた。
チーム内のあらゆる部分をつぶさに観察した彼女は、その全てに改良の余地があることに気付くと、コーチの右腕として立ち回りチームが仕事を果たせるように後方からサポートしたり、チームメンバー全員と1対1のミーティングを行って各メンバーの気持ちを理解し、彼らがより優れた自分になるためにどうサポートすれば良いのかを確認したりするようになった。
Stellbergは、そのような “個人面談” における自分の仕事を「教育」として捉えており、「わたしは、プレイヤーに感情をコントロールする方法を教える今の仕事を楽しんでいます。感情的ではなく理性的になる方法を教えているんです。激しい感情はゲームの邪魔になってしまう可能性があります」と語っている。
これは、対戦やトーナメントプレイを経験したことがある人なら誰でも思い当たることだ。上手くプレイできていない時やミスした時に感じる苛立ちは集中力の欠如につながり、ゲームをコントロールできなくなってしまう。
Stellbergは、失敗したあともリラックスして理性的な状態を保つ方法を教えることで、彼らにハイレベルなプレイを維持できるチャンスを提供しようとしている。
Astralisなどのビッグチームと仕事を重ねてきたStellberg

Astralisなどのビッグチームと仕事を重ねてきたStellberg

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「最速の状態を維持したいなら、冷静になり、集中を保つ必要があります。なぜなら、緊張したりストレスを感じたりしている状態では、ハンド・アイ・コーディネーション(手と目の協応動作 / 連動性)と反射スピードに悪影響を与えてしまうからです」
「また、自信を持つことも自分のパフォーマンスに大きな影響を与えます。正しいレベルの自信を持っていなければ、簡単にストレスを感じるようになってしまいます」
しかし、自信は諸刃の剣だ。絶好調なプレイができていると、自分に酔ってしまいがちで、「勝利は確実」と思い込んでしまえば気に緩みが生じる。
良いプレイができている時は、「自信過剰になれば、自分が気付かないうちにゆっくりと確実に勝利が遠ざかっていく」と強く意識する必要がある。
個人的な意見を言えば、esportsアスリートは伝統的なアスリートより求められるものが多いと思います
Mia Stellberg
プレイヤーとの対話の中で彼女が強調しているテーマのひとつが「健康的なワークライフバランスの維持」だ。
繰り返しになるが、毎週何時間も連続でキーボードを叩いたり、コントローラーのボタンを連打したりしても、良いプレイには結びつかない。時間を上手に使い、友人や家族、大切な人と一緒に過ごす時間を作る方が良いプレイに繋がるのだ。
Stellbergは次のように説明する。
「プレイヤーを冷静な状態に保つことがわたしの仕事ですが、彼らのワークライフバランスを整えることも重要です。わたしは、1日10時間の練習を週7日続けるというアイディアに強く反対しています」
「仕事を問わず、全ての人には人生を楽しむ権利があります。社会生活を営んだり、デートをしたりする権利があるのです」
Stellbergは、esportsプレイヤーはかなり多くを求められる仕事だとしている

Stellbergは、esportsプレイヤーはかなり多くを求められる仕事だとしている

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またStellbergは、esportsプロプレイヤーの生活には、外側からは見えない部分や泥沼にハマってからようやく見えてくる部分が数多く存在すると感じており、その例として、長距離移動ゲームプレイとトーナメントの頻度時差ボケソーシャルメディアやファンからの期待などを挙げている。
まとめとして、彼女は「esportsアスリートは伝統的なアスリートより求められるものが多いのです」と発言している。
しかし、上記のような部分は、プレイヤーたちが考えずにこなしてしまう可能性があるものだ。なぜなら、チャンスは限られているからだ。ブレイクするチャンスと捉える若手プレイヤーの場合は、その可能性はさらに高まる。
Stellbergは「19歳なら、自分の好きなことをしてお金を稼げるようになるために闇雲に力を注いでしまいます。ある意味、自分のことを忘れてしまうのです」と説明している。
そして、このような状況こそ自分がサポートするタイミングだとStellbergは考えている。
esportsプレイヤー特有の問題に関する専門知識を持っている彼女は、彼らのキャリアやプライベートをあらゆる面からサポートし、トップレベルに到達したesportsプレイヤーがさらなる成功を掴むためのベストソリューションを見出すことができる存在なのだ。
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