モトクロスは極めてフィジカルで危険なスポーツだ。
適切なギアを装着していなければ、怪我のリスクが大幅に増加してしまう。加えて、正しいセットアップを身につけていなければ、自由に自信を持って身体を動かせなくなってしまうはずだ。
正しいギア選びは練習とレースの両方で重要で、レースでは安全基準に適合したモトクロス用ギアの装備が求められる。
しかし、市場では価格帯よって無数の選択肢が存在しているため、一体どこから手をつけるべきか迷うこともあるだろう。そこで、レースデビューをする前に揃えておきたい12種類の必携ギアとその選び方を解説しよう。
1:ヘルメット
モトクロス用ギアバッグの中で最も重要なアイテムがヘルメットだ。
ライダーの頭部を防護するこのギアの重要性については、『モトクロス:ヘルメット購入ガイド』で詳しく解説しているので併せてチェックしてもらいたい。予算に余裕があるなら、ヘルメットに費やすべきだ。
まず、自分のサイズにぴったりと合ったヘルメットの購入が絶対条件だ。頭位を測り、入念にサイズを選ぶことが不可欠となる。
サイズや重量、形状はブランドによって異なる場合もあるので、実際にショップへ足を運んで複数のヘルメットを試着してみるのが最善策だ。インターネットでオーダーしたあと、サイズに違和感がある場合は、購入したショップに電話で問い合わせてアドバイスを得るようにしよう。
昨今のヘルメットデザインで最も進化している部分のひとつが、MIPS(multi-directional impact protection system:多方向衝撃保護システム)テクノロジーだ。脳の保護膜を模して設計されているMIPSは頭部に斜めから入る衝撃を方向転換するので、クラッシュ時の頭部防護に貢献する。
MIPSテクノロジーはモトクロス用ヘルメットに幅広く採用されている。新たにヘルメットを購入する際は是非チェックしておきたいポイントだ。
また、中古のモトクロス用ヘルメット購入は絶対にNGだ。
2:ゴーグル
モトクロス用ゴーグルはライダーの目を守り、視界を向上させ、ライダーのスタイルを決定づける。
優れたエントリー向けのモデルは5千円前後から入手可能だ。上級モデルは3万円近い出費を覚悟する必要はあるが、ライディングのあらゆる面をほんの少し楽にしてくれる機能が得られる。
ゴーグル内に湿気がこもりにくい構造、くもり止め加工が施されたレンズ、ノーズガード、広い視界、偏光レンズなどは上級モデルに備わっている機能のごく一部だ。
レースでは、クリアな視界を終始確保するためにフィルムを剥がせるティアオフ式ゴーグルを用意するのはグッドアイディアだが、環境配慮のためティアオフ式ゴーグルの使用を禁じているレーストラックがあるので注意しよう。
3:モトクロスジャージ&パンツ
モトクロス用のジャージ&パンツには、あらゆる選択肢が存在する。製品によって機能は微妙に異なるが、ウェアについてはライダーの予算とスタイルに合ったものを選べる。
過去数年、Seven MX、Shift、Fasthouseのようなブランドがイノベーティブで斬新なスタイルとクリエイティブなデザインで市場を賑わせている一方、ThorやFoxはこれまで以上にウェアのテクニカルな構造を進化させている。
フルセット割引が得られる時もあるので、ウェアを購入するなら複数のショップを見て回ると良いだろう。また、予算が限られていても、それらしく見えつつきちんと機能を果たしてくれるソリッドなセットが1万5千円前後で入手できるはずだ。
プロっぽく見せたいのなら、モトクロスショップでライダーネームとレースナンバーをプリントしてくれるサービスも利用できる。
4:グローブ
グローブはもはや地味なアイテムではない。過去数年で多くのグローブ専業ブランドが生まれ、その結果グローブのテクノロジーは急速に進歩している。
Deft Family、Fist Handwear、Ninjaz Glovesのようなブランドはそれぞれ独自のスタイルで市場にアプローチしており、薄さとしなやかさを両立したストラップレスグローブがレース現場では一般的な存在となっている。
出費を抑えたいなら、ジャージ&パンツと併せたフルセット購入がグッドな選択肢だろう。
5:ボディアーマー(ルーストガード)
ヘルメット同様、ボディアーマー(ブランドによっては “ルーストガード” と呼ばれる)もモトクロスライダーのマストアイテムだ。
ボディアーマーはクラッシュ時に胸・肋骨・背中を防護するだけではなく、前方を走るライダーが跳ね上げる泥・小石などから身体を守るのにも役立つ。
モトクロス用のボディアーマーには、軽量なアンダージャージスタイルのベストから本格的でヘビーデューティなものまで、ありとあらゆる選択肢が存在する。どれだけの防護性能を求めるかは、ライダーの判断次第だ。
オールラウンダータイプのライダーなら、Fox ProFrameかThor Sentinelを選んでおけば間違いない。
6:ネックブレース
ネックブレースはクラッシュ時に首を深刻な怪我から守ってくれるギアだ。
すべてのライダーがネックブレースを使用しているわけではないが、近年のデザインははるかに薄型で、快適性も向上している。
現在では多くのブランドがボディアーマーとスムーズにフィットするネックブレースを手がけており、LeattやAlpinestarsなどのブランドはプロライダーも愛用する良質なネックブレースをリリースしている。
7:ニーパッド&ニーブレース
モトクロスをライディングする際は、膝にも何らかのプロテクションが必要だ。
ニーパッドのテクノロジーと快適性は過去10年で大いに進歩しており、EVSやFox、Thorなど数多くのブランドが優れた防護性能を備えたリーズナブルなニーパッドをリリースしている。
予算に余裕がある / 膝に怪我に故障を抱えている / 膝を怪我しやすいライダーなら、ニーブレースは良い投資になるだろう。ニーブレースは7万円前後と高価だが、膝が捻れるのを防ぎつつ可動域を大幅に広げてくれるので、普通のニーパッドなら立ち上がれないほどのクラッシュでも無傷でやり過ごせる可能性が高い。
8:ブーツ
TCXやGaerneなどの新興ブランドがFoxやAlpinestarsなどの老舗に対抗する極めて競争力の高いハイエンドブーツをリリースしている一方、初心者 / 中級者向けの市場ではShiftやThorが優れた品質を備えたイノベーティブなブーツをリリースしており、近年のモトクロス用ブーツには実に幅広い選択肢が用意されている。
初心者や中級者ならエントリーレベルで十分だが、レースが高速化し、ビッグジャンプが増えてきたと感じたら、さらに防護性能を高めたハイエンドなブーツに投資するのはグッドアイディアだ。
ヘルメットと同様、モトクロス用のブーツ選びもフィット感が極めて重要なファクターなので、なるべくモトクロス専門ショップに足を運んで様々なブランドの製品を試着し、どれが自分に一番フィットするか確認しよう。サイズが大きすぎるブーツでは足首を痛める可能性が大いに高まってしまう。
9:ソックス
過剰だと思われるかもしれないが、プロパーなモトクロス用ソックスはマストアイテムだ。普通のソックスでは役に立たない。
多くのブランドが十分に機能を果たすリーズナブルなモトクロス用ソックスをリリースしているが、ハイエンドなソックスはずり落ちることなくしっかりとフィットするだけでなく、汗を逃して快適なフィーリングを保ってくれる。
フルレングスのニーブレースソックスは、ニーパッド / ニーブレースの装着感をより快適にしてくれる。
10:ベースレイヤー
ベースレイヤーはモトクロスに絶対必要なアイテムではないが、テクニカルなアンダーシャツ&ボトムスは汗を逃して快適性を保ってくれる上に、冬季のライディングである程度体温をキープしてくれる。
11:インパクトショーツ
パッド付きのインパクトショーツは転倒時に効果を発揮するので、モトクロス用ワードローブに加えておきたいアイテムだ。インパクトショーツはとりたてて高価ではない上に、着座時の快適性を高めて腰・尻・股間を守ってくれる。
12:キットバッグ
ここまで紹介したすべてのギアをバックパックに収めるのは至難の業なので、ギアをきちんと整理してまとめるためにモトクロス用キットバッグを用意したい。
モトクロス用ギアをフルで揃えるとかなりの重量になるため、なるべく耐久性の高い製品を選ぼう。ホイールを備えたキャリーバッグタイプも役に立つはずだ。インナーが取り外し式になっていれば文句なしだ。