Mangrove Float 2017
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ミュージック

ソカ基礎知識

カリブ海のカーニバルに不可欠な大衆音楽の基礎知識を学ぼう!
Written by Jesse Serwer
読み終わるまで:5分Published on
ソカノッティングヒル・カーニバルや、カリブ中南米・北米地域のカーニバルではお馴染みの存在だが、まだ一般的に広く理解されている音楽とは言えない。
そこで今回はソカの基礎知識をまとめてみた。

ソカはなぜノッティングヒル・カーニバルでも重要なのか?

ウエストロンドンのノッティングヒルで毎夏開催されているノッティングヒル・カーニバルでもソカは重要視されている
ソカはカリブ海地域のカーニバルには欠かせないサウンドで、トリニダード・トバゴの首都ポート・オブ・スペインで開催されるトリニダード・カーニバルが特に有名だ。そして、ノッティングヒル・カーニバルはこのカーニバルをベースにしている。これがノッティングヒル・カーニバルでもソカが重用されている理由だ。
ノッティングヒル・カーニバルは独自の進化を遂げており、レゲエやダンスホール、ソウルなどを響かせるサウンドシステムが華を添えているが、ソカの大半はメインカーニバルのフロートやトラックから流されている

ソカと他のカーニバル音楽(例:ダンスホール)との違いは?

ソカはダンスホールよりもテンポが早く、BPM120〜160の楽曲がほとんどだ。様々なムードを表現するダンスホールとは異なり、ソカは祝祭的なムードが主体で、解放と自由というカーニバルのテーマを体現している。
Naya George「Trinidad (Right Hand)」のような楽曲はピュアな愛国心の発露で、カーニバルの参加者たちに「テンションを上げろ」と伝えながら、トリニダード・トバゴの旗を派手に振るように促している。

ソカのルーツ

ソカが生まれたのは1970年代のトリニダード・トバゴで、カリプソの進化版としてLord ShortyことRas Shorty Iによって生み出された。
イーストインディアンとアフリカンが人口を占める2つの島から構成されたトリニダード・トバゴの音楽的一体感を生み出すべく、Shortyはドーラク(dholak)やダンタル(dhantal)など伝統的なインディアン楽器をその30年前から発展していたアフロ・クレオールのリズムに落とし込んだ。
Shortyはこの発明を「The Soul of Calypso(カリプソ版ソウル)」と呼び、これがのちにsokahと短縮され、最終的にはsoca(ソカ)となった。

ソカの踊り方

ソカに合わせたカリブ人の典型的な踊り方は、ワイニングというムーブが基本で、ワイングラスを回すように腰を回転させる
ワイニングはトゥワークと混同されがちだが、男女ソロでも、男女ペアでも構わない。ワイニングのエチケットを詳しく知るには、largeup.comに掲載された『Do’s and Don’ts of Wining』をチェックしてもらいたい。
もちろん、カーニバルの仮装バンドのメンバーとして演奏するなら、パレードのルートに沿った前進運動は必須だ。この前進運動には、“チッピング” と呼ばれるすり足の動きも含まれている。
Patrice Robertsはソカ新世代を代表するひとり

Patrice Robertsはソカ新世代を代表するひとり

© Sean Drakes / Getty Images

ソカの進化

初期のソカはリズムセクションとブラスバンドによる生演奏だった。2016年のトリニダード・カーニバルで話題をさらったTronRR Rhythm」のように当時のトラディショナルなスタイルがリバイバルしたこともあるが、現代のソカの大半は電子楽器で制作されている
近年はEDMアフロビートからの影響が強く、2014年にはアフロ・ソカと呼ばれる融合的なスタイルも登場した。
ソカはバルバドスのような他の島でも独自の発展を遂げており、Krosfyahのようなバンドは1990年代に “スウィート・ソカ” という、よりメロディックでミッドテンポのサウンドを生み出し、これはのちに “グルーヴィー・ソカ” と呼ばれるようになった。
最近では、バルバドスはバッシュメント・ソカと呼ばれるダンスホールとソカのリズムを半々で融合したスタイルの中心地として認識されており、MarzvilleBang Bim」などを生み出している。
一方、セントビンセント島では2000年代初頭にThe Great ZeeeKubiyashiなどのプロデューサーがソカのテンポを160BPM台まで速めた “パワー・ソカ” というジャンルを生み出した。ノッティングヒル・カーニバルで聴かれるソカの大半は、このカテゴリーに属する。

注目のソカ・アーティストは?

Machel Montanoはソカの不動のキングだ。1984年に「Too Young To Soca」で子供タレントとしてブレイクしたMontanoは、1990年代後半にトリニダード・カーニバルで前例のないロードマーチ()連続記録(この記録は未だ破られていない)を達成してから、カリビアンミュージックシーンを制圧している。
(※)・・・ロードマーチとはカーニバルで一番人気だった楽曲 / ロード(通り)で一番かかった楽曲
トリニダード・トバゴには無尽蔵のタレントプールが存在しており、Bunji GarlinDestra GarciaKesFay-ann LyonsIwer GeorgePatrice Robertsなどが、ここ20年で最も人気の高いアクトとして知られている。
ソカの新世代を牽引しているのはLord Shortyの孫娘Nailah Blackman、トリニダード・トバゴのInternational Soca Monarchコンペティション3連覇中のVoiceことAaron St. Louisだ。
東カリブを構成する各島にはそれぞれスターが存在し、セントビンセント出身のSkinny Fabulous、バルバドス出身のLil Rick、アンティグア出身のRicardo Drue、グレナダ出身のSkinny Bantonなどが、毎年のようにカーニバルアンセムを生み出している。