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大胆不敵な言動で知られるG2 Esports共同設立者兼CEO Carlos “ocelote” Rodríguez Santiagoは一体どんな人物なのか? その性格、哲学、美学に迫る。
全世界に4,000万人のファンを抱え、ドメスティック / インターナショナルトーナメントの優勝回数が100を超えるG2 Esportsは、世界で最も大きな成功を収めているeスポーツチームのひとつだ。そして、このチームと同じくらい高い知名度を誇るのが、共同設立者兼CEOのCarlos “ocelote” Rodriguez Santiagoだ。
今回は、eスポーツシーンで最も遠慮がなく、最もバイタリティに溢れる人物のひとりに数えられるoceloteの人生論や、本人が言うところの「勝者のチーム」であるG2 Esportsの経営哲学などに迫っていこう。
01
前史
『World of Warcraft / ワールド・オブ・ウォークラフト』のプレイヤーとしてゲーミングキャリアをスタートさせたoceloteは、やがて、まだベータ版だった『リーグ・オブ・レジェンド』をプレイするようになった。そして、SK Gamingのプレイヤーとして数シーズンプレイしたあと、G2 Esportsの前身Gamer2を設立。ここから歴史が始まった。
02
大胆不敵なビジョナリー
何よりも勝利を求めているoceloteは、彼のチームに所属してきたすべてのプレイヤーにその価値観を教え込んできた。彼は、eスポーツコミュニティ内では、ソーシャルメディアとトーナメントで大胆不敵な態度を取る人物として認識されているが、G2内では仲間を鼓舞するビジョナリーとして認識されている。
G2では、誰であっても2位に甘んじることを許されていない。oceloteのこの高い要求度は、メンバーたちのスキルレベルの成長につれて高まり続けている。本人は次のように語っている。
「勝利することと楽しむこと以外、自分の人生に求めていることはない。俺はいたって正気だよ。俺が生きているなら、あんたは生きてないってことさ」
03
3本の柱
oceloteは、G2 Esportsの経営哲学には、CEOとしての自分が常に体現している高い競争力の他に3本の柱があるとしている。その3本、“野心” “楽しさ” “共感” について、彼は「3本すべてにチームの誰もが100%を注ぐ必要がある」と説明している。
そして、oceloteの辞書に “自己満足” という単語はない。本人は「俺が満足したり、誇りに思ったりすると、もうひとりの俺が “この間抜けめ” と言ってくるんだ」と続けている。
彼のチームへの要求度の高さは、良く知られている特徴のひとつだが、彼は自分自身にもチームと同じレベルを求めている。チームの全員が、彼が本気でG2を勝者にしたがっていることを理解している。
自分がナンバーワンだと信じることが重要だが、自分はもっと成長できると信じることも重要だ
oceloteがチームに浸透させようとしているマインドセットはシンプルだが、維持するためには相当な努力がいる。
「自分がナンバーワンだと信じることが重要だが、自分はもっと成長できると信じることも重要だ」
そのマインドセットをこのように説明する彼は、勝利しか意識していない。こう書くと無慈悲に思えるかもしれない。しかし、だからこそ、G2は高い競争力を備えたトップチームになれたのだ。
oceloteの経営哲学におけるもうひとつの大きな特徴は、チームの成長と発展にoceloteが大きく関わっているところだ。G2の選択のほぼすべてに直接関わっている彼は、G2内のあらゆるチームのグループチャットに目を通しており、すべてのプレイヤーのモチベーションを直接高めている。
さらに、oceloteはマーケティング、ブランディング、PR、ソーシャルメディア、そしてG2関連のすべてのコンテンツにも常に深く関わっている。ひとつ確かなのは、oceloteは非常に忙しい人物だということだ。なぜなら、彼は自分のチームには “最高” が相応しいと常に考えているからだ。
04
勝利と学習
G2はoceloteのすべてだ。彼は持てるすべての時間をチームのトレーニング、またはチームとのコミュニケーションに注いでいる。本人は次のように語っている。
「俺の役割はCEOだけじゃない。俺はチームのボスであり、メンターであり、友人でもある。そして一番嫌われている人物であると同時に、一番愛されている人物でもある」
oceloteは、その遠慮のない性格から、外部からは取っつきにくいと思われるときもあるが、G2のメンバーたちはこの性格に感謝している。oceloteは、自分が正直であればあるほど、より多くの人が学び、成長できると信じている。
また、G2についてどれだけ真剣に考えているのかを問われた彼は、「G2の成功とプライベートのどちらかを選ばなければならないのなら、G2の成功を選ぶね」ときっぱりと回答している。
また、oceloteは、チームメンバーとのすべての会話で、その場に参加している全員の認識が一致するようにしている。たとえ、それが厳しい現実を突きつけることになったとしても彼は全員の理解を求める。
G2のこれまでの戦績を踏まえると、細かい説明が矢継ぎ早に入る会話から自ら陣頭指揮を執るチーム編成までを含むG2におけるoceloteのすべての業務において、彼がメンバー全員の実力を引き出す方法を知っているのは明らかだ。「自分たちが負けることはない、そこにあるのは勝利と学習だけ」という彼の信念がこのチームには浸透している。
では、G2が勝てなかったときはどうなるのだろうか? oceloteの遠慮のない性格はこのときも変わらない。
「俺たちは自分たちの失敗をコメディにする。“上手くプレイできなかった。相手の方が良いプレイをした” と言わせたいのかもしれないが、そういう退屈なチームなら他にも沢山あるだろ」と回答する彼は、G2のプレイヤーたちに、悔しさ、怒り、苛立ちの自由な表現や、遠慮ない罵りやトラッシュトークを勧めている。
「まったく構わないね。俺がプレイヤーたちにいちいち目くじらを立てることはない」
05
G2 = エンターテインメント
エンターテインメント性もG2の経営哲学の大きな部分を占めている。oceloteは、人々を笑わせたいと考えており、彼のソーシャルメディアでの言動はすべてこの考えに基づいている。
今回紹介している『Unfold』の中でも確認できるG2の動画『Samurai Workout with Carlos』は、彼が1980年代のエアロビインストラクターに模してG2のイベントにおける応援マナーを教えるという内容になっている。
G2 Esportsの知名度の高さは、このように、彼らが音楽や映画、ファッションなど他のエンターテインメントに踏み込んでいる結果だ。たとえば、2022年も、彼らはオフィシャルソングを制作している。
自分が踏み込みたい分野のエキスパートを集めつつ、そこに自分を積極的に絡めていくoceloteは、G2でeスポーツシーンの支配を狙いながら、他の意外なシーンや分野でも自分たちのロゴが認識されるようにしたいのだ。
最後になるが、oceloteほど自分の立場を真剣かつ気楽に扱っている人物は少ない。彼がG2に費やしてきた年月は、このチームの形を確かなものにし、本人をレジェンドにした。しかし、突き詰めれば、本人にとっては、『Unfold』内でも確認できる次の発言がすべてだ。
「たかがビデオゲームじゃないか。落ち着けって」
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