プッシュアップ(腕立て伏せ)は、幼い頃に触れる最初のストレングストレーニング(筋トレ)のひとつだが、騙されてはいけない。プッシュアップはシンプルで簡単に見えるが、上半身と体幹の発達、および胸と肩の筋肉増強のための優れたツールで、その効果は実証済みだ。
しかも、様々なストレングスとフィットネスレベルの人に適用できる。プッシュアップには自分を進化させ続けてくれる無数のバリエーションが存在し、最低限の用具しか必要ない。さらに、身体を上下させるスタンダードなプッシュアップに限らず、実に様々な動きのプッシュアップが存在する。
そこで、今回はフィットネス維持、減量、可動性・柔軟性向上に効果がある10種類のプッシュアップをパーソナルトレーナーのベン・ロングリーに紹介してもらった。
01
トラディショナル・プッシュアップ
本リストは難度が低いプッシュアップから順番に紹介しているが、最初は伝統的・基本的なプッシュアップを紹介しておくべきだろう。このプッシュアップの正しいテクニックをマスターすれば、他のバリエーションに応用できる。
他の多くのエクササイズと同じく、このプッシュアップも間違ったやり方で行われている場合が多い。以下に正しいやり方を紹介しておこう:
- 四つん這いになる。
- 横から見たときに両手が両肩の真下に来るように置く。両肩の前に両手を置いてしまうミスは非常に多く見られるので注意したい。
- 前方(頭側)から見たときに、両手が肩幅よりも少し外側に置かれているようにする。
- 両足は尻と同じ幅に開き、両手の指は開いてまっすぐ伸ばして安定性を高める。
- 両膝を床から離し、両手・両腕・両肩を直線にする。
- 背筋が曲がらないようにして(尻や頭が下がらない)、全身に力を入れていく。体幹を緊張させる(腹部を殴られそうになって力を入れるイメージ)。
- 両手を床にねじ込みながら、広背筋と肩(肩腱板)に刺激を入れていく。これがイメージしにくい場合は、「姿勢を維持しながら、脇をくすぐられないようにガードする」をイメージすれば刺激が入りやすい。
- 鼻から息を吸い込みながら、床に向かって身体を下げていく。肘は体側から45度の角度を取り、頭からつま先までを直線にする。曲げていくときは「胸から」を意識して、下半身よりも先に胸が床につくようにする。
- 口から息を吐きながら元の姿勢に戻していく。全身を一緒に戻して、身体が曲がらないようにする。
02
インクライン(ディクライン)・プッシュアップ
インクラインは、久しぶりにプッシュアップに取り組むときのスタートポイントに最適なバリエーションだ。
両手を高い位置に置いて全身を少し起こして行うこのプッシュアップは負荷を軽減できる。上半身が起きているほど重力のアシストが入るので、自分で支える体重が減る。つまり、両手を高い位置に置けば置くほど、簡単になる。
このバリエーションでは「負荷がある程度かかるが、正しい姿勢で目標回数を完了できる位置」を見つけよう。筋力がついていくのに合わせて、両手を置く位置を下げていく。テーブル、ベンチ、イス、スクワットラックなど、安定していて安全なものに手を置くようにしよう。
ディクラインはインクラインの逆で、両足を台などの高い位置に置くバリエーションだ。通常のプッシュアップが簡単に感じるようになったら、両足を高い位置に置いて負荷を大きくしよう。当然ながら、両足を置く位置が高いほど難度が高まる。
03
クローズグリップ・プッシュアップ
両手の位置を狭め、肘を体側につけるようにして行うバリエーション。上腕三頭筋により大きな負荷がかかる。
04
フォームローラー・プッシュアップ
こちらもスタートポイントとして優秀なプッシュアップで、通常のプッシュアップができるようになることが目標になる。
いわゆる「両膝を床についたプッシュアップ」は、フォームローラーを脛(すね)の下に置いて行うことでさらに優れた初心者用プッシュアップになる。この姿勢を取れば体幹への負荷が大きくなり、動作と姿勢が通常のプッシュアップに近くなるので、通常のプッシュアップがより早くできるようになる。
05
スリーポイント・プッシュアップ
片足プッシュアップ(片足腕立て伏せ)とも呼ばれるこのプッシュアップは、通常のプッシュアップからのステップアップに最適で、体幹に大きな刺激が入る。
片足を床から離して、残りの足と両手のみでプッシュアップを行わなければならないため、体幹を安定させるためにより大きな力が必要になる。床から離す足を入れ替えるのを忘れないようにしよう。
06
レジスタンスバンド / ウエイトベスト・プッシュアップ
レジスタンスバンドまたはウエイトベストを使用して自重を増やしてみよう。
レジスタンスバンドを使う場合は、両手の親指の付け根にレジスタンスバンドの両端を通して、バンドを背中の上部(肩甲骨あたり)に回す。こうすることで腕を伸ばしきったときに負荷が最も大きくなり、腕を曲げたときに負荷が最も小さくなるため、負荷が変動するプッシュアップに取り組める。
07
ヨガ・プッシュアップ
他に良い名称がないため、ヨガ・プッシュアップまたはヒンズー・プッシュアップと呼ばれているこのプッシュアップは尻を高く突き上げ、両腕を頭より前に出した姿勢から始めるバリエーションで、複数の角度からストレングスを強化できる。
身体をコントロールしながら、胸で床をかすめるように斜め下方向へ下げたあと、腕の力で背中を押し上げて尻を高く突き上げた姿勢に戻る。このときに、上級者ならオーバーヘッドプレスのように腕を伸ばしながら戻しても良い。
筋力はもちろん、肩と腰の可動性が高いことが取り組むための必須条件だが、肩やハムストリングスが硬く、可動性を向上させたい人にも推奨したい。注意点は、下半身をストレッチしすぎないことだ。尚、このバリエーションは上記必須条件のレベル次第で難度が変わってくる。
08
オフセット・プッシュアップ
片方の手を前に置き、もう片方の手を下げて置く、あるいはメディシンボールで片手を高い位置に置くバリエーション。
この姿勢を取ると手が “オフセット” つまりは不均等の位置になるため、肩、腕、体幹の安定性とストレングスを通常のプッシュアップとは違う形で鍛えられる。左右を入れ替えながら行おう。
09
スーパースローテンポ・プッシュアップ
通常のプッシュアップが20回以上できるなら、このバリエーションに挑戦してみよう。ゆっくり丁寧に教科書通りの正しいフォームでプッシュアップをしていく。5〜20秒かけて身体を下げ、同じ秒数をかけて戻していく。自分の未熟さを痛感できるはずだ。
10
サスペンション・トレーナー・プッシュアップ
TRXのようなサスペンショントレーナーは、非常に不安定なプッシュアップ用プラットフォームになる。これを使うことで、安定した床の代わりにグラグラと揺れるハンドルやリングを掴んだ状態からのプッシュアップに挑める。
時間をかけて取り組んでいけば、肩、腕、体幹で身体を安定させていることが理解できるだろう。TRXやリングを使用したプッシュアップは、身体の角度を自由に変えられるので、自分の筋力や疲労度に合わせてその場で難度を調整できるのが大きなメリットだ。
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