Jack Nowell refuels during training
© Red Bull Content Pool
クライミング

トップアスリートの食事管理&栄養補給テクニック

ベストパフォーマンスのために一流のアスリートたちはどのような食事や栄養補給をしているのだろう? ホッケー、クライミング、ラグビー、スノーボードのトップレベルで活躍するレッドブルアスリートたちに話を聞いた。
Written by Howard Calvert
読み終わるまで:11分Published on
スポーツベストパフォーマンスを維持するためには何を食べるのが良いのだろうか?
Google先生に頼るのはNGだ。調べれば調べるほど混乱はさらに深まるだけだからだ。
炭水化物は摂るべきか、抜くべきか? 肉は食べてもOKなのか? 糖分はゼロにすべきなのか?
ケトン食療法は役に立つのか? セレブの間で一時期流行した5:2ダイエットの方がベターなのか? あるいは、そのどちらも効果はないのか?
そこで今回は、マディー・ヒンチ(ホッケー)、ビリー・モーガン(スノーボード)、ジャック・ノーウェル(ラグビー)、ショウナ・コクシー(クライマー)に、厳しいトレーニングプログラムや試合のために何を食べているのかについて訊ねてみた。
また、yourbodyprogramme.com所属のスポーツ栄養士、テリー・フェアクローが各スポーツでベストパフォーマンスを発揮するために必要な栄養補給術について解説してくれているので、こちらも併せてチェックしてもらいたい。

ショウナ・コクシー(クライマー)

ボルダリング・ワールドカップで2度のタイトル獲得経験を持つショウナ・コクシーは、2020年に英国代表として東京を訪れることが予想されている。
ショウナは好物のケーキも除外せずにバランスのとれた食生活を楽しんでいる

ショウナは好物のケーキも除外せずにバランスのとれた食生活を楽しんでいる

© Red Bull Content Pool

— トレーニング日の食事内容について教えてもらえますか?
朝食にはバナナパンケーキ(バナナ1本・卵2個・小麦粉・ブルーベリー・ラズベリー・アーモンドバター・蜂蜜)を食べて、あとはトレーニングで身体を重く感じないようにドライフルーツやナッツ類、エナジーバーなどの軽食で済ませているわ。
夕食は筋肉のリカバリーと翌日に向けたエナジー補給を念頭に、肉や魚などプロテインを豊富に含んだバランスの良い食事を摂るようにしているわね。
To boost recovery Shauna opts for a high-protein evening meal

To boost recovery Shauna opts for a high-protein evening meal

© Sherry Galey / Getty

— 大会前後の食事内容について教えてください。
必ずプロテイン炭水化物を豊富に含んだ朝食を摂るようにしているの。満腹感なしで十分なエナジーを得るために大会に合わせて内容を調整しているわ。
競技中は軽食を摂るし、前後にはレッドブル・エナジードリンクを飲んでいる。その日の競技が終ったあとは、プロテインを豊富に含んだ軽食で補給しているわ。
— 特定の食事法や栄養補給プランはありますか?
ないわ。以前は栄養士と食事管理に取り組んでいて、かなり興味深かったし、色々と学べたけれど、今は自分の食事管理を信頼しているの。美味しくてバランスの取れた食事をするのが好きね。もちろんそこにはケーキも入るわ。
— お気に入りの食事は?
朝食ね!
— 理想の夕食メニューは?
冬なら、ブフ・ブルギニョン(牛肉のワイン煮)、あとはダークチョコレートとラズベリーガナッシュのタルト。それか、具材たっぷりのサラダ。ツナだけの無愛想なサラダはダメ。
夏なら、デザートはイートン・メス(ストロベリーとメレンゲ、クリームを混ぜた英国の伝統的なデザート)がいいわ。
リヴァプールのClimbing Hangarを訪れたショウナ・コクシー

リヴァプールのClimbing Hangarを訪れたショウナ・コクシー

© Toby Ziff

専門家のコメント:
スポーツ栄養士のテリー・フェアクローは次のように解説する。
「クライミングでは、パワーウェイトレシオが重要なので、体脂肪を低く維持することが不可欠です。プロクライマーには外胚葉型(痩せ型で筋肉が少ない)、あるいは中胚葉型(痩せ型で筋肉質)の体格が多く、総じて体重は軽いです」
「クライミングでは持久力よりも瞬発力がさらに重要ですので、体重と等尺性筋力の良好なバランスが求められます」
「クライミングは有酸素運動で、炭水化物脂質がエナジー源となります。消化吸収の遅い炭水化物を豊富に摂取し、1日の食事を5〜7回に分けて筋肉内のエナジー貯蔵量を最適化しましょう」
自分の身長・体重に応じた適切なカロリー量を摂取するようにしてください。摂取カロリーが少なすぎるとエナジー不足に陥りますし、多すぎると体重が不必要に増加します」

ビリー・モーガン(スノーボーダー)

英国出身のスノーボーダー、ビリー・モーガンは2018年のピョンチャンで銅メダル(ビッグエア)を獲得した。
ビリー・モーガン

ビリー・モーガン

© Pally Learmond

— トレーニング日の食事内容について教えてもらえますか?
朝はカロリーをたくさん補給するようにしている。フルーツ(好みはバナナとパイナップル)と適量のナッツ、あとはほうれん草とマッシュルームを混ぜたスクランブルエッグをトーストに載せて食べる。これで朝のライディングに向けたパワーチャージはバッチリさ。
そして、午前10時にシリアルバー1本で軽食を摂る。昼食はツナサラダラップのようなある程度調理されたものがいいね。それに、レッドブル・エナジードリンクを1本と適量の水も飲む。
夕食はそれこそ何でも食べるんだけど、なるべくいろんな栄養素を取り込むようにしている。
Spinach and mushroom scrambled eggs on toast is Billy's go-to brekkie

Spinach and mushroom scrambled eggs on toast is Billy's go-to brekkie

© robynmac / Getty

— 大会前後の食事内容について教えてください。
トレーニングと同じものを食べるようにしているよ。大会開始の45分〜1時間前にはレッドブル・エナジードリンクを飲んで、ランの前には空腹感を生じないようにヘルシーな軽食をお腹に入れるようにしている。
フリースタイルアカデミーやトランポリンパークには、通常夕食後など遅めの時間に行くんだ。食事したあとにトランポリンなんて無理だと言う人もいるけど、幸いなことに僕は平気なんだ。
— 特定の食事法や栄養補給プランはありますか?
特にないね。でも、別のスポーツをする時は栄養補給法も変わる。サイクリングはすごくお腹が空くし、スケートボードに熱中して軽食を口にするのを忘れてしまうことがある。
たまに水だけを飲んで空腹状態でランニングするのも好きだね。内蔵を綺麗にするような感覚なんだ。
— 大好物のメニューは?
昔からタイ料理や東インドの料理が好きだ。自分で調理すればヘルシーにできるしね。
— 理想の夕食メニューは?
白身魚のマドラス風カレー、それかチキンサグ(チキンとほうれん草のカレー)でバッチリさ!
スノーボード史上屈指のフリースタイラーと称されるビリー・モーガン

スノーボード史上屈指のフリースタイラーと称されるビリー・モーガン

© Greg Coleman / Red Bull Content Pool

専門家のコメント:
フェアクローは次のように説明する。
「通常、スノーボードのトレーニングは瞬間的・爆発的なムーブと、様々な種類の障害物をクリアしていく長時間のムーブの組み合わせです。どちらもアデノシン三リン酸系(最大15秒間)と解糖系(最大2分間)の代謝になります」
「ほとんどのスポーツもそうですが、速やかにエナジーを引き出せるように十分なグリコーゲンを蓄えておくことが重要です」
「クライマーと同様、スノーボーダーもジャンプを最大限に高めるために体重を常にコントロールしておく必要があります。身長や目標に合わせて適切なカロリーを摂取し、エナジーの50〜60%は炭水化物から補給しましょう」

ジャック・ノーウェル(ラグビー選手)

ラグビーのスーパースター、ジャック・ノーウェルはラグビー英国代表とエクセター・チーフス(英・プレミアシップ)でウイングを担っている。
— トレーニング日の食事内容について教えてもらえますか?
起床したら、グルタミン酸コロストラムクレアチンをそれぞれ5gにオレンジジュース(またはアップルジュース)をミックスしたドリンクを飲む。フルーツジュースは飲みやすくするためだね。
朝食はトースト、アボガド、ほうれん草、卵(ポーチドエッグかスクランブルエッグ)、ベーコンまたはソーセージ、あとはポリッジを適量。
昼食はチキンの胸肉かステーキ、ライス(ポテト)、ブロッコリーやグリーンピースなどの緑黄色野菜、サラダなどを合わせる。
夕食も昼食と似た内容だけど、プロテインをより豊富に摂るようにしているから、チキンやステーキ、あとは少しの炭水化物と多めの野菜ってところだね。朝昼晩にしっかり食べるから、間食は食べない。
就寝前にカセインプロテイン20g、クレアチングルタミン酸コロストラムをそれぞれ5gずつ摂取しているよ。
— 試合当日の食事内容は?
試合前日の夕食が重要なんだ。ちょっとした儀式のような感じで、いつも必ずグリルしたファヒータ、ワカモレ、サルサ、サワークリームをがっつり食べている。デザートはアイスクリームかライスプディングだ。
試合当日の朝食はボウル1杯のポリッジ、トースト、卵、それにアボガド。昼食はトマト&チキンのパスタのように少なめでシンプルなものを食べている。
試合後は、テイクアウトのピザかインド料理。試合後だけは食べたいものを食べるようにしているんだ。
— 1日のカロリー摂取量の合計は?
厳密に計算するタイプじゃないから正確には分からないけど、プロテインシェイクも含めると、1日あたり4,000〜5,000kcalじゃないかな。
ジャック・ノーウェルにとって試合前夜のお気に入りの食事はファヒータ

ジャック・ノーウェルにとって試合前夜のお気に入りの食事はファヒータ

© bhofack2 / Getty

— 特定の食事法や栄養補給プランはありますか?
特にないけど、フォワードの連中は体重をコントロールするための食事法に取り組んでいるよ。僕は好きなものを食べているのに体重は変わらないし、フィットネスも維持できるタイプだからラッキーだね。
— 理想の夕食メニューは?
僕は漁師の息子だから、前菜にカニとエビのカクテル、メインは適量の小麦粉をつけてフライパンで揚げたあとグリルした舌平目かレモンソール(カレイの一種)かな。自家製フレンチフライを添えたボリューミーなサラダも作りたいところだね。
最後のデザートも強烈だ。チョコレートファウンテンを思いきり食べるんだ。
英国プレミアシップ・ラグビー、エクセター・チーフスに所属するノーウェル

英国プレミアシップ・ラグビー、エクセター・チーフスに所属するノーウェル

© Getty

専門家のコメント:
フェアクローは次のように解説する。
「ラグビー選手には筋力パワーが必要です。ラグビー選手には中胚葉〜内胚葉性の体格(がっしりとした体型で筋肉がつきやすい体格)が多く、素早く収縮する筋繊維を多く備えています」
「通常、レップ数が少なく15秒程度で終わるストレングストレーニングでは、貯蔵されたエナジー(アデノシン三リン酸:ATP)が必要となり、これを再補給するには3〜4分が必要です」
「ストレングストレーニングでは、運動ニューロンが効率良く機能することが求められますが、神経細胞の機能と伝達・統合には必須脂肪酸が重要です」
「短時間の爆発的なエナジーの放出には、クレアチンリン酸系(最初の10秒間のエナジーを供給)と解糖系(10秒間〜2分間持続する中・高強度の瞬発的なアクティビティのエナジーを供給)両方の代謝が使われます。つまり、大量に貯蔵されたグリコーゲン(炭水化物)が必要になるのです」
「玄米やキヌア、レンズ豆やオーツ麦などエナジー放出スピードが緩やかな炭水化物を多く摂取すれば、体重を増加させることなく身体をタンパク同化状態に保てるので、ストレングスとパワーを最大化できます」
「トレーニング中は必ず分枝鎖アミノ酸BCAA)を含んだドリンクを摂取し、トレーニング後は消化の速やかな炭水化物を適度に含んだプロテインシェイクを摂取するようにしましょう」

マディー・ヒンチ(ホッケー選手)

マディー・ヒンチはホッケー英国代表チームのゴールキーパーとしてキャップ数133を誇り、金メダル獲得経験を持つ。現所属チームはSCHC(オランダ)。
2016年にホッケー英国代表として金メダルを獲得したマディー・ヒンチ

2016年にホッケー英国代表として金メダルを獲得したマディー・ヒンチ

© Patrik Lundin / Red Bull Content Pool

— トレーニング日の食事内容について教えてもらえますか?
標準的な朝食は、グラノーラとクワルクチーズ、それにフルーツを添えたものです。それと朝のトレーニング後にプロテインシェイクを飲んでいます。
昼食はポーチドエッグとサーモン、午後の軽食にはピーナッツバターを塗ってバナナを添えたライスケーキですね。夕食はタイ風グリーンカレーといったところです。
— 試合当日の食事内容は?
試合前にはバナナ1本を食べ、レッドブル・エナジードリンクを1本飲みます。1日全体のカロリー摂取量は合計3,000kcal前後です。
マディーお気に入りの軽食はピーナッツバターとバナナを添えたライスケーキ

マディーお気に入りの軽食はピーナッツバターとバナナを添えたライスケーキ

© MSPhotographic / iStock / Getty Images Plus

— 特定の食事法や栄養補給プランはありますか?
チーム専属の栄養士が作成した栄養計画表が配られています。セッションの前後に必要なプロテインと炭水化物の摂取量など、特定のトレーニング負荷に沿って選手が従うべき食事内容のガイドとして使われています。
— 理想の夕食メニューは?
ローストした野菜と新鮮なポテトを添えたビーフ・ウェリントン(パテで覆ったフィレ肉をパイで包み焼きした英国料理)ですね。
英国ホッケー代表GKマディ・ヒンチ

英国ホッケー代表GKマディ・ヒンチ

© Richie Hopson / Red Bull Content Pool

専門家のコメント:
フェアクローは、ホッケー選手には概ね中胚葉型(筋肉質でがっしりとした体格)が多いとした上で、次のように説明する。
「ホッケー選手に必要なのは敏捷性持久力です。ショートスプリントでは解糖系代謝、持久力では有酸素系代謝を使用することになります」
「ホッケーは1試合の総走行距離が長いので、グリコーゲン貯蔵量を最適なレベルに保つことが不可欠です」
エナジー放出が緩やかな炭水化物(玄米、キヌア、レンズ豆、オーツ麦など)を体重1kgあたり7〜8gを目安に摂取し、試合数日前から体重1kgあたり8〜10gに増やしましょう」
「トレーニングでは1時間後に水を飲みましょう。その際に吸収を良くするために砂糖を溶かし入れ、認識機能と水分吸収力を補助する電解質も入れましょう。レモンを絞れば風味も良くなります」