フィットネス

HYROX:ワークアウトステーション8種類を完全解説!

究極のフィットネスレースに挑む準備はできているだろうか? HYROXレースのエクササイズ全8種類の詳細をエキスパートが解説!
Written by Greg Williams
読み終わるまで:11分Published on
Fitness trailblazer Ida Mathilde Steensgaard from Denmark pushing a sled at the Hyrox World Championships in Nice, France.
© Baptiste Fauchille/Red Bull Content Pool
HYROX(ハイロックス)は、ランニングファンクショナルトレーニングを組み合わせたユニークなフィットネスレースで、競技者の持久力筋力が試される。現在人気急上昇のこのレースは、2024-25シーズン中には全世界50万人の参加が見込まれている。
その大きな特徴のひとつが、それぞれが異なる筋肉へ刺激を入れる全8種類のワークアウトステーションだ。各ステーションではフィジカルに大きな負荷がかかるが、必要なスキルレベルは低い。これが、HYROXを初心者からエリートまでを含む「あらゆる人のスポーツ」にしている。
今回は、HYROXの競技者・コーチ・コメンテーターとして活躍するRox Lyfeのグレッグ・ウィリアムズに、この8種類のワークアウトステーションの内容、距離またはレップ、ウエイトを含む詳細を解説してもらった。
01

スキーエルゴ

スタート直後の1kmランを終えたあとに待っている最初のワークアウトステーションがスキーエルゴです。競技者はコンセプト2 スキーエルゴ(Concept2 SkiErg)と呼ばれるマシンで1kmをカバーします。
競技者はマシンのハンドルを下に引いて、スキーストック(ポール)で前進する動きを真似ます。身体がブレないようにコントロールして動かさなければならず、レース序盤から体力を消耗しすぎないペースで続けるためにはリズム持久力優れたテクニックが必要です。
このワークアウトは、にフォーカスした簡単なワークアウトに見えるかもしれません。しかしながら、正しいフォームで取り組めば、体幹下半身にも刺激が入るため、全身を鍛えることができます。
距離:1km
02

スレッドプッシュ

2回目の1kmランを終えるとスレッドプッシュが待っています。フィジカルへの負荷が最も大きいワークアウトステーションのひとつに数えられるスレッドプッシュでは、脚のストレングス全身のパワーが問われます。競技者は、レーン上に置かれているウエイトを載せたスレッドを体幹を使いながら50mプッシュします。
HYROXでは8種類のワークアウトに取り組むことになる

HYROXでは8種類のワークアウトに取り組むことになる

© Hyrox

このステーションで脱落する競技者は少なくありません。ここでペースを上げすぎてしまうとその確率がさらに高まります。まだレース序盤なので、このステーションで脚のストレングスを使い切ってしまうと、残りのレースが非常に苦しくなってしまいます。
HYROXに慣れていない競技者は特に注意が必要です。この直後の1kmランに苦しむ可能性があります。私の場合も、デビューレースのスレッドプッシュを一気に片付けようとした結果、直後の1kmランがかなり辛くなってしまいました。
HYROX未経験者がこのステーションの本番の感覚をトレーニングで掴むのは簡単ではありません。レース当日は、使用するスレッドの種類、トラックの表面、室内の湿度など様々な要素がスレッドの動作に影響します。152kgのウエイトを載せたスレッドの感覚は、トレーニングと本番で大きく異なる可能性があるのです。
距離:50m(12.5mを4本)
ウエイト:
  • 男子プロ / 男子プロダブル:202kg
  • 女子プロ / 女子プロダブル / 男子オープン / 男子オープンダブル / 混合オープンダブル / 男子リレー:152kg
  • 女子オープン / 女子オープンダブル / 女子リレー:102kg
  • 混合リレー:102kg(女子)・152kg(男子)
03

スレッドプル

3回目の1kmランを終えると、スレッドプルです。ここでもストレングスが問われます。競技者はロープを使ってスレッドを50m手前に引っ張ります。各レーンには奥行き約1.7mのスペースが設けられており、競技者はこのスペース内を自由に動くことができます。
つまり、上半身だけを使うのではなく、後方に数歩下がることもできるのです。そのため、このワークステーションでは、ポステリアチェーン背面筋肉群:背中・臀部・ハムストリング)に大きな刺激が入ります。
このステーションではテクニックとロープの管理に注意する必要があります。スレッドを引っ張れば足元のロープの量が増えていくので、注意していなければ、ロープに引っかかって倒れてしまうでしょう。
スタート時は、スレッドと競技者の両方がラインよりも後ろにいる必要があります。そのあと、レーン(12.5m)上でスレッドを引き、スレッドがラインを越えたら、レーンの逆側へ向かい、またスレッドを引きます。これを繰り返して50mをカバーします(2往復)。必要に応じて休みを入れても問題ありませんが、自分が動けるスペースを出てしまうとペナルティが科されます。
距離:50m(12.5mを4本)
ウエイト:
  • 男子プロ / 男子プロダブル:153kg
  • 女子プロ / 女子プロダブル / 男子オープン / 男子オープンダブル / 混合オープンダブル / 男子リレー:105kg
  • 女子オープン / 女子オープンダブル / 女子リレー:78kg
  • 混合リレー:78kg(女子)・103kg(男子)
04

バーピーブロードジャンプ

4回目の1kmランが終われば、80mのバーピーブロードジャンプ(BBJ)です。バーピーとブロードジャンプというハードなエクササイズ2種類を組み合わせているこのステーションでは、心臓血管系の持久力脚の爆発力が問われます。
ラインの後ろに両手を置き、胸を床に付けてスタートします。次に置いてある両手より前に足が出ないように注意しながら起き上がっていき、両足が揃ったらブロードジャンプをします(両足を揃えてジャンプ。両足が揃っていないジャンプは認められません)。
ジャンプしたあとは再び両手を床に置きますが、両足から30cm以内に置くようにしてください。そのあとはまた胸を床につけます。
このサイクルを繰り返して80mをカバーします。このワークアウトステーションはかなりハードになる可能性もあるので、効率とリズムを意識する必要があります(言うは易く行うは難しですが!)。
距離:80m
05

ローイング

5回目の1kmランが終わると、ようやく座ることができます! しかしながら、コンセプト2(Concept2)のローイングマシン1kmをカバーする必要があるので、休むことはできません。
ローイングに取り組むHYROXの競技者

ローイングに取り組むHYROXの競技者

© HYROX

ローイングマシンは全身有酸素ワークアウトで、心肺と筋肉の持久力が問われます。効率を高める優れたテクニックがカギとなりますが、間違ったテクニックで取り組んでいる競技者は少なくありません(間違ったテクニックではタイムとエナジーを無駄に消費してしまいます)。
HYROXではペース配分が重要ですが、このステーションでは特に重要です。ローイングマシンで頑張っても全体のタイムに繋がらない可能性があります。たとえば、このステーションで頑張って10秒削れたとしても、残りのレースでかなり疲労してしまうでしょう。
距離:1km
06

ファーマーズキャリー

6番目のワークアウトステーションがファーマーズキャリーです。競技者は重いケトルベル2個を片手に1個ずつ持ちながら、できる限り高いスピードで歩く、または走って200mをカバーします。
デンマークで開催されたHYROXでパフォーマンスするアイダ・マティルド

デンマークで開催されたHYROXでパフォーマンスするアイダ・マティルド

© Jesper Gronnemark/Red Bull Content Pool

ケトルベルは何回床に置いて休んでも構いませんが、言うまでもなく、休まずに完走できればタイムが稼げます。握力肩の安定力体幹の持久力が問われますが、一番時間がかからないステーションです。
距離:200m
ウエイト:
  • 男子プロ / 男子プロダブル:32kg(1個あたり)
  • 女子プロ / 女子プロダブル / 男子オープン / 男子オープンダブル / 混合オープンダブル / 男子リレー:24kg(1個あたり)
  • 女子オープン / 女子オープンダブル / 女子リレー:16kg(1個あたり)
  • 混合リレー:16kg(女子)・24kg(男子)(1個あたり)
07

サンドバッグランジ

最後から2番目のワークアウトステーションがサンドバッグランジです。そろそろ終わりが見えてきますが、この時点ではかなり疲労しているはずです。そして、このステーションでは重いサンドバッグを担ぎながらランジで100mカバーしなければなりません!
競技者はレップごとに膝を床につける必要があります。大腿四頭筋と臀部に大きな負荷がかかりますが、完走するまでサンドバッグを落とせないため、腕と肩にも負荷がかかります。
距離:100m
ウエイト:
  • 男子プロ / 男子プロダブル:30kg
  • 女子プロ / 女子プロダブル / 男子オープン / 男子オープンダブル / 混合オープンダブル / 男子リレー:20kg
  • 女子オープン / 女子オープンダブル / 女子リレー:10kg
  • 混合リレー:10kg(女子)・20kg(男子)
08

ウォールボール

フィニッシュまであと少しです! 最後のステーションがウォールボールです。ここでは、競技者はボールを抱えてしゃがみ込んだあと、立ち上がりながらボールを上のターゲットに投げ当てて、ボールをキャッチしてまたしゃがむというサイクルを100レップ行います。ターゲットの高さとボールの重さは性別と種目によって異なります。
ジェイク・ディアデン

ジェイク・ディアデン

© Baptiste Fauchille/Red Bull Content Pool

正しいスクワットのフォームを取ることと、ボールを投げる精度(ターゲットの中心を捉える必要があります)が重要です。この2つをミスすればジャッジがレップとしてカウントしないため、タイムを失うと同時に疲労が蓄積してしまいます。
このステーションではフィジカルの強度(脚・肩・心肺機能)だけではなく、メンタルの強度と集中力も問われます。
レップ:100
ウエイト:
  • 男子プロ / 男子プロダブル:ボール9kg / ターゲット高3.048m
  • 女子プロ / 女子プロダブル / 男子オープン / 男子オープンダブル / 混合オープンダブル / 男子リレー:ボール6kg / ターゲット高2.743m
  • 女子オープン / 女子オープンダブル / 女子リレー:ボール4kg / ターゲット高2.743m
  • 混合リレー:4kg(女子)・6kg(男子)
09

おまけ:ロックスゾーン

HYROXのレースで用意されるのは8種類のワークアウトステーションですが、最後にひとつボーナスアドバイスを紹介します。
ロックスゾーン(Roxzone)は、レースの重要なセクションなのですが、競技者からはあまり重要視されていません。
ロックスゾーンとは、ランニングとワークアウトステーションの間に用意されているトランジションスペースです。広さはレースごとに異なりますが、レーススタートからフィニッシュまでに平均700mをこのセクションでカバーすることになります。ですので、ここでスピードを落とすことは極力避ける必要があります(スピードを維持しましょう)。
また、好タイムを狙っているなら、このセクションで次に取り組むワークアウトステーションへ意識を切り替えることも重要です。
10

最後に

HYROXの各ステーションにはそれぞれユニークなチャレンジが用意されており、それぞれが異なる筋肉群に刺激を入れながら、持久力ストレングスメンタルが問われます。レースで成功を収めるためには、競技者はランニングだけではなく、8種類のワークステーションを効率よく進めていく必要があります。
各ステーションの対策と準備をしっかりしていけば、レースで活躍できるフィットネスを手に入れることができるでしょう。
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