© Hana Asano / The Red Bulletin
ランニング
ランニングに役立つ呼吸トレーニング
正しい呼吸を身に付ければスタミナがアップする。ビギナー、ベテランを問わず、すべてのランナーのパフォーマンス向上に役立つ呼吸法をまとめて紹介!
ランニングの正しい呼吸方法を知り、練習を重ねていけば、より遠くへ走れるようになる。だからこそ、次のレースに向けた準備には呼吸トレーニングを絶対に含めておきたい。
中には次のレースが【Wings for Life World Run】という人もいるだろう。フィニッシュラインが追いかけてくるこのユニークなランイベントは毎年世界同時開催されており、参加費と寄付金の全額が脊髄損傷の治療法研究へ送られるチャリティーにもなっている。アプリを使えば世界のどこからでも参加できるのも大きな特徴だ。【Wings for Life World Run】アプリはこちらからダウンロードできる。
さて、次のランイベントやレースが何であろうと、それに向けて正しく準備できるように、今回はより遠くへ走れるようになるための呼吸トレーニングをまとめて紹介しよう。
走行スピードと酸素吸入量の関係は「ランニングエコノミー」として知られている。吸入した酸素をより効率良く推進力に変えることができれば、つまりは “燃費” が良くなる。
筋肉の活動量が増えると体内の二酸化炭素量が増えていくが、この二酸化炭素を消してくれる酸素がないと、体内に乳酸が溜まっていき、乳酸によって筋肉痛やけいれん、そして息切れが発生するようになる。
ランナー用呼吸トレーニング 5選
インターバルトレーニングと同じように筋肉への酸素供給量を高めてくれる呼吸トレーニングを5種類紹介しよう。また、メンタルも強化してくれるので、距離と時間の両方で自己ベストを狙いやすくなるはずだ。
01
パターン呼吸
呼吸をパターンで繰り返すトレーニングを重ねれば、横隔膜が整って呼吸を自分でコントロールしやすくなる。このトレーニングの上級者になれば、呼吸が深くなり、ランニングエコノミーが改善される。
やり方:
- ウォーキングから始めて、ストライドに合わせて呼吸をしていく。たとえば、2歩で吸い込み、2歩で吐き出す。このパターンを2:2と呼ぶ。
- 2:2を1〜2分続ける。
- 快適に感じられるようになったら、2:2を維持しながらペースを上げてウォーキングからランニングへ切り替える。
このトレーニングは自分の目指す目標とペースに合わせて様々なバージョンを用意できる。スプリントや短距離レースに向けては2:2で練習し、長距離のトレーニングやレースでは3:3や4:4で練習してみよう。歩数を問わず、呼吸感覚を一定にできればランニングパワーとランニングエコノミーが高まり、疲労していてもプッシュできるようになる。
02
複式 / 横隔膜呼吸
腹部や横隔膜を使用する呼吸は横隔膜を鍛えられる。このトレーニングは、呼吸が浅くて肩に力が入ってしまい、けいれんや腰痛を抱えがちなランナーに特に効果的だ。この呼吸トレーニングは取り入れる空気量が増えるため、脇腹痛も回避できる。
やり方:
- 鼻から息を吸い込み、腹に空気を入れる。
- 腹が膨れたら、横隔膜を押し下げながら息を吐き出す。
- 息を吐くときは吸い込むときよりも “長くゆっくり” を意識する。
このトレーニングは床に仰向けに寝た状態から始めよう。この姿勢で上手くできるようになったあとは、スローペースのランニング中に同じやり方で取り入れてみよう。
03
等量呼吸
この呼吸トレーニングは「息を吸う」と「息を吐く」時間を均等にすることが目的だ。こうすることで呼吸が静かになり、結果的に自分を落ち着かせることができる。「簡単にできそう」と思うかもしれないが、このトレーニングは規律とコントロールが重要になってくるため、最も難しい呼吸トレーニングのひとつだ。
やり方:
- 鼻から息を吸って吐く
- 吸う長さと吐く長さを揃える
- 吸うときと吐くときに同じ言葉やフレーズを頭の中で唱えると揃えやすくなる。
このトレーニングはマスターするのが難しいが、身体のどこかを強く意識する必要がないので、ランニングには一番取り入れやすい呼吸トレーニングのひとつだ。体内で十分な量の酸素が出し入れされるのでスタミナが増強され、より遠くへ走れるようになる。非常に有用だ。
04
片鼻呼吸(ナディショーダナ)
左右の鼻の穴から交互に息を出し入れする片鼻呼吸はヨガの一種だ。“ナディショーダナ” とも呼ばれ、これはサンスクリット語で「呼吸によるエナジーの浄化」を意味する。この呼吸はストレスを軽減し、心肺機能を向上させる。
やり方:
- 右手を持ち上げて、右手の親指で右の鼻の穴を閉じる
- 左の鼻の穴だけで息を吸い込んだあと、右手の薬指で左の鼻の穴を閉じて、親指を離して右の鼻の穴を開く。
- 右の鼻の穴から息を吐き、そのまま右の鼻の穴から息を吸う。
- 親指で右の鼻の穴を閉じて、薬指を離して左の鼻の穴を開き、左の鼻の穴から息を吐く。
- これを5分間続ける。
この呼吸トレーニングは慣れるまでは座って行う(あぐらや正座)。快適に行えるようになったら、ラン前のストレッチやジョギング中に行ってみよう。この呼吸トレーニングは横隔膜を強化して肺により多くの空気を取り入れられるようになるので、息切れを感じなくなっていく。
05
口をすぼめる呼吸
口をすぼめる呼吸トレーニングはランニング中の肺への負担を軽くしてくれる。気道をより長い時間開けるようになれば呼吸がゆっくりになるため、結果的に血中酸素が増えて、体内の二酸化炭素を消しやすくなる。
やり方:
- 鼻から息を吸い込む
- すねたように口をすぼめる
- すぼめた口からゆっくりと息を吐き出していく。吸い込む時間の2倍がベスト。
このトレーニングは横隔膜を動かすトレーニングよりも簡単だが、同様の効果が得られる。やり方だけしっかりと意識できていれば、ランニングにも簡単に取り入れられる。
06
冬季用呼吸トレーニング
上記の呼吸トレーニングの多くは天候に関係なく行えるが、冬季のランニングを大きく助けてくれる呼吸トレーニングがいくつか存在する。
以下の呼吸トレーニングは体温を維持し、酸素吸入量を増加し、肺の機能を向上してくれる。
鼻から吸って口から吐く
寒い日に走ったことがある人は、鼻から息を吸い込むときのあの感覚を良く知っているだろう。しかし、冬季では鼻から吸う方が口から吸うよりも身体に良い。なぜなら、肺に到達するまでの時間が長いため、吸い込んだ空気がより温まるのだ。
「鼻から吸って口から吐く」を自分の呼吸パターンになるまで繰り返してみよう。しかし、ランニングの強度が高まるほど鼻から息を吸い込むのが難しくなるので注意が必要だ。
この呼吸はランのスタート直後から序盤にかけて非常に有用だ。ある程度走り、気温に身体が慣れてきたら、口からだけの呼吸に切り替えてランの強度を上げても構わない。
距離を徐々に延ばす
寒い日に高強度トレーニングに取り組めば、気道に負担がかかり、呼吸がより難しくなってしまうので、最初から飛ばすのは避けよう。徐々にペースアップして、身体を環境に順応させていきたい。
スローペース・短距離から始めて、ある程度回数を重ねて慣れてから、距離を徐々に延ばしていこう。本格的に冷え込む日はイージーペースのロングランだけにして身体への負担を最小限に留めたい。高強度のトレーニングは避けよう。
ビューテイコ呼吸法を取り入れる
片鼻呼吸や腹式呼吸に加えて、ビューテイコ(Buteyko)呼吸法も学んでおきたい呼吸のひとつだ。この呼吸は寒冷時に特に役立つ。ビューティコ呼吸法では1分間あたりの呼吸数を最小限に抑える。
ビューテイコ呼吸法をマスターできれば、呼吸器感染症のリスクを最小限に留めながら、呼吸効率を向上できる。
やり方は、まず鼻から深く息を吸い込み、鼻から息を吐き出し、鼻から吐き出したあと、しばらく息を止める(長すぎるのはNG)。これを繰り返す。数回繰り返せば慣れていくので、自分でやりたいだけ繰り返してみよう。
07
ランニングで正しく呼吸できるようになるためのアドバイス 3選
ランニング中の酸素吸入量を最大限まで増やすためのアドバイスを3つ紹介しよう。これらのアドバイスを参考にすれば、呼吸のコントロール、ペースの安定化、エナジーの最大化が狙えるようになる。
鼻で呼吸すべき状況と口から呼吸すべき状況を理解する:スローペースのランニングでは鼻で呼吸するか、鼻から吸って口から吐くのが良いだろう。しかし、ハイペースでのランニングで呼吸が苦しくなってきたときは口で呼吸する方が良い。
リズムをキープする:呼吸のリズムを一定にできればより多くの酸素を取り入れられるようになる。右足と左足が着地するたびに息を吐けば、着地の衝撃が横隔膜に伝わりにくくなる。着地の衝撃は体重の4倍に相当するのでこれは是非とも取り入れたい。着地の衝撃の軽減は怪我の予防にも役立つ。
フォームを意識する:深く息を吸い込むためには正しい姿勢が取れている必要がある。顎を上げて頭から背中を直線にして、両肩が丸まらないようにしよう。
08
呼吸を強化して自己ベストを狙おう
概して、ビギナー、ベテランランナーを問わず、呼吸トレーニングはスタミナ増強に役立つ。今回紹介したテクニックをストライドトレーニングと組み合わせれば、ランニングパフォーマンスが向上するはずだ。
走れない人たちのために走るグローバルチャリティーランイベント【Wings for Life World Run】の詳細はこちら>>
▶︎RedBull.comでは世界から発信される記事を毎週更新中! トップページからチェック!