コンスタンツェ・クロスターハルフェンはストレングストレーニングも欠かさない
© Daniel Hug/Red Bull Content Pool
ランニング

ランニングに効果的なインナーマッスルトレーニング おすすめ12選

地味だが効果的な深層筋や体幹を鍛えるトレーニングは地味だが効果が高いためワールドクラスのアスリートたちも積極的に取り入れている。トップランナーたちからランニングに特に有用なメニューを教えてもらった。
Written by Henner Thies
読み終わるまで:11分Published on
インナーマッスル(深層筋)トレーニングはすべてのアスリートにとって重要だが、ランナーにとっての重要性はひときわ高い。トレーニングルーティンにインナーマッスル系メニューを組み込むべき理由は主に3つある。①全身のバランスの向上 ②筋肉の協調性の向上 ③怪我の予防だ。
今年の【Wings for Life World Run】への参加を考えているなら(考えるまでもない!)、5月5日に向けて以下のインナーマッスルトレーニングメニューに取り組んでいくべきだろう。
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インナーマッスルトレーニングとは? 重要な理由は?

インナーマッスルトレーニングの第一の目的は怪我の予防です。上半身と腰のバランスを整え、強化し、安定させることができます」と語るのはレジェンドトライアスリートのセバスチャン・キーンレだ。経験を元に語られるこの言葉はスポーツ科学の視点から正しい。
プランクのようなインナーマッスルトレーニングは非常に効果的

プランクのようなインナーマッスルトレーニングは非常に効果的

© Jarno Schurgers/Red Bull Content Pool

そしてランナーもインナーマッスルトレーニングから恩恵を得られる。腹部と腰を中心とした上半身の深層筋を強化できるからだ。ここに正しい栄養補給を加えれば、理想の体型に大きく近づくことができる。
コンスタンツェ・クロスターハルフェン

コンスタンツェ・クロスターハルフェン

© Getty Images

インナーマッスルトレーニングはランニングエコノミーのために重要ですが、怪我の予防にも役立ちます
さらに、インナーマッスルトレーニングは脚と腕の左右のバランスの崩れや筋力差を調整してくれるので、全身のバランスの向上にも役立つ。
ヨーロッパを代表する女子中長距離ランナーのコンスタンツェ・クロスターハルフェンは次のように語っている。
「インナーマッスルトレーニングは全身の安定性を高めるために非常に重要です。全身の安定はランニングエコノミーにとって重要ですが、怪我の予防の助けにもなります。たとえば、臀部の深層筋を鍛えるトレーニングをしばらく休んでしまえば、ランニング直後に膝に痛みを感じるようになるでしょう」
02

ストレングストレーニングとの違い

ランナーにとってインナーマッスルトレーニングにはもうひとつのメリットがある。インナーマッスルトレーニングは内側から身体と関節を強化し、抵抗力をつけてくれるが、伝統的なストレングストレーニング、いわゆる “筋トレ” とは異なり、筋肉を大きくするわけではないので、体重を不必要に増やさないで済むのだ。
セバスチャン・キーンレ

セバスチャン・キーンレ

© James Mitchell/Red Bull Content Pool

クロスターハルフェンが最低週4回はランニング後にインナーマッスルトレーニングを組み込んでいるのはこれが理由だ。彼女は「あまり楽しいトレーニングではありませんが、やるだけの価値は十分にありますね」と説明している。
ランナーに最適なインナーマッスルトレーニングを12種類紹介しよう!
03

ランナー用インナーマッスルトレーニング 12選

①プランク

プランクはインナーマッスルトレーニングの基本中の基本で、地味だが非常に効果的だ。体幹から肩、臀部、脚部までのほぼすべての筋肉に働きかける
プランク

プランク

© Runtastic

やり方:前腕で身体を支えるようにうつ伏せになる。両肘を肩幅に開いて肩の真下に来るように床に置く。首、背中、臀部、両脚が直線になるようにする(背中が丸まったり、臀部が上がったり、膝が落ちたりしないようにする)。つま先は腰幅より少し狭めて床につける。腰が落ちないように意識しながら上の画像のポーズを30〜60秒キープする。
自分のフィットネスレベルが高い場合は、2〜3セット行ってから次のメニューへ進む。

②サイドプランク

サイドプランクは主に腹斜筋を鍛えるトレーニングだが、肩と脚も鍛えられる。
サイドプランク

サイドプランク

© Daniel Sommer/Red Bull Content Pool

やり方:横向きに寝そべる。下側の肘を肩の下に置き、前腕を床につけて支える。両脚は伸ばし、上側の脚を下側の脚に乗せる。腰を浮かせて脚、背中、首、臀部が直線になるようにする(プランクと同じ)。この姿勢を30〜60秒キープして左右を入れ替える。自分のフィットネスレベルが高い場合は、2〜3セット行ってから次のメニューへ進む。
別バージョン:直線の姿勢から腰をゆっくりと上下に動かせば、さらに刺激を加えられる。

③シットアップ / クランチ

おそらくインナーマッスルトレーニングで最も知名度が高いのがクランチ(シットアップ)だろう。日本では “腹筋” と呼ばれてきたこのトレーニングには無数のバリエーションがあるが、どれも効果的だ。今回は、その中から腹直筋に効果があるクランチを紹介しよう。
クランチ

クランチ

© Red Bull Content Pool

やり方:あお向けになり、膝を曲げて、腰と太腿、太腿と膝下がそれぞれ直角になるようにする。この姿勢を取ったあと、腹筋だけを使ってゆっくりと丁寧に上半身を拳2個分床から持ち上げる。視線は膝と天井だけを見るようにする。持ち上げたあとはゆっくりと上半身を下ろしていき、床につく直前で止めてまた持ち上げていく。これを10〜20回繰り返す(1セット)。
自分のフィットネスレベルが高い場合は、2〜3セット行ってから次のメニューへ進む。

④プッシュアップ

プッシュアップも全身に効果があるインナーマッスルトレーニングだが、腕と胸、肩を重点的に鍛えられる。
マルク・マルケスもプッシュアップに取り組んでいる

マルク・マルケスもプッシュアップに取り組んでいる

© Jaime de Diego/Red Bull Content Pool

やり方:うつ伏せになり、両脚を伸ばす。つま先は床につけ、両手は胸の位置で床につけて指先を前に向ける。この姿勢から両腕が伸びきるまで全身を持ち上げていく。全身に力を入れて頭からつま先までを一枚の板のようにする。次に胸が床につくまでゆっくりと全身を下げていく。これを10〜20回繰り返す(1セット)。
自分のフィットネスレベルが高い場合は、2〜3セット行ってから次のメニューへ進む。
簡易バージョン:上記のプッシュアップが難しく感じる場合は、つま先の代わりに両膝を床につけて行う。

⑤エアスクワット

エアスクワットは最も効果的なレッグトレーニングのひとつだ。ウェイトを足すことなく両脚と上半身を十分鍛えることができる。
エアスクワットは脚力アップに効果的

エアスクワットは脚力アップに効果的

© Viktor Fremling

やり方:両足を肩幅よりも少し開いて立つ。つま先はやや外側に開き、両腕は前方にまっすぐ伸ばす。上半身は直立させる。この姿勢から臀部をゆっくりと丁寧に斜め下へ下げていく(斜め下へ突き出していくイメージ)。このときに上半身は直立をキープする。下げきったらスタートポジションへゆっくりと戻っていく。これを10〜10回繰り返す。
自分のフィットネスレベルが高い場合は、2〜3セット行ってから次のメニューへ進む。

⑥シングルレッグ・デッドリフト

シングルレッグ・デッドリフトは怪我の予防効果が高いトレーニングだ。ハムストリング、臀部、体幹を鍛えられる上に、バランスと協調性を高め、膝の関節を安定させることができる。
シングルレッグ・デッドリフト

シングルレッグ・デッドリフト

© Runtastic

やり方:片脚で直立する。軸足は膝で軽く曲げて、逆側の脚を少し床から離しておく。両腕はリラックスさせて体側に置く。この姿勢からゆっくりと丁寧に前屈みになっていく(軸足を支点にした天秤のイメージ)。
両腕を床に向かってゆっくりと伸ばしていき、浮かせている脚を伸ばしながら天井に向かってゆっくり振り上げていく。上半身が床と水平になり、浮かせている脚のかかとが臀部、肩と直線になったら止める。
ここからゆっくりと丁寧に最初の姿勢へ戻っていく。これを5〜10回繰り返したら左右を入れ替える。自分のフィットネスレベルが高い場合は、2〜3セット行ってから次のメニューへ進む。

⑦ノルディック・ハムストリング・カール

ノルディック・ハムストリング・カールはハムストリングを効果的に鍛えられるトレーニングだが初心者向けではない。初心者はその代わりにハムストリングカール(簡易バージョンの項で説明)を行おう。
ノルディック・ハムストリング・カール

ノルディック・ハムストリング・カール

© Dan Sheridan/INPHO

やり方:腰幅でひざまずき、上半身を直立させる。足首を押さえてくれるパートナーがいない場合は、代わりに重い家具(ソファなど)で足を押さえるようにする。上半身を起こした姿勢からゆっくりと丁寧に床に近づけていく。
刺激が強すぎる場合は、プッシュアップのように両腕で上半身を受け止め、すぐに元の姿勢へ戻すようにする。上半身を床に向けて近づけていくときに腹筋に刺激が入っていることと背中が丸まっていないことを確認する。これを5〜10回繰り返す。
簡易バージョン:ハムストリングカールを床(すべりやすい床が理想的)で行う。あお向けに寝そべり、膝を直角に曲げる。つま先をすねの方向へ引き上げて、かかとだけが床についている状態にする。腰を浮かせて肩、膝と直線になるようにする。
この姿勢をキープしながら、かかとをすべらせて臀部から遠ざけていき、背中が床につく直前まで両脚を伸ばしていく。次にまたかかとを臀部へ近づけていき、膝が直角、膝・腰・肩が直線になるようにする。これを5〜10回繰り返す。自分のフィットネスレベルが高い場合は、2〜3セット行ってから次のメニューへ進む。

⑧グルートブリッジ

グルートブリッジはシンプルだが非常に効果的なインナーマッスルトレーニングで、臀部とハムストリングを強化できる。
グルートブリッジ(バンドあり)

グルートブリッジ(バンドあり)

© Roy Schott

やり方:あお向けに寝そべる。両脚は腰幅に開き、膝を直角に曲げる。かかとは床につけ続ける。腰を肩、膝と直線になるまで持ち上げていく。直線になったら数秒キープする。次に腰をゆっくりと丁寧に床まで戻していく。これを10回繰り返す。自分のフィットネスレベルが高い場合は、2〜3セット行ってから次のメニューへ進む。
強化バージョン:難度を高めたい人は、膝上にミニバンドを装着して膝を開きにくくして行う。片脚を伸ばして逆脚で支える別バージョンもある。

⑨バックエクステンション

バックエクステンションは背中、臀部、ハムストリングを効果的に鍛えられる。スーパーマンとも呼ばれる。
バックエクステンション

バックエクステンション

© Barış Acarlı/Red Bull Content Pool

やり方:うつ伏せに寝そべる。両脚と両腕を真っ直ぐ伸ばす。両腕と両脚をゆっくりと丁寧に床から約10cm持ち上げる。この姿勢を数秒キープしたあと、両腕と両脚をゆっくりと丁寧に床へ戻していく。これを10〜15回繰り返す。自分のフィットネスレベルが高い場合は、2〜3セット行ってから次のメニューへ進む。
別バージョン:両腕と両脚を持ち上げる代わりに、右脚と左腕、次に左脚と右腕を持ち上げていくバージョンがある。

⑩クラムシェル(バンドあり)

クラムシェルは膝の痛みの防止に最も効果的なトレーニングだろう。クロスターハルフェンは「クラムシェルを少しでも休んでしまうとすぐに調子が崩れてしまいます。ランニング後の膝の痛みが強くなってしまうのです」とコメントしている。
クラムシェルは臀部の深層筋の強化と膝の怪我の予防に効果的

クラムシェルは臀部の深層筋の強化と膝の怪我の予防に効果的

© Barış Acarlı/Red Bull Content Pool

やり方:横向きに寝そべり、下側の腕で頭を支え、上側の腕はリラックスさせて腹部か前方の床に置く。腹筋にやや力が入っていることを確認する。両脚は直角で曲げて揃えておく。ミニバンドを膝上に装着する。ここから腰を動かさないようにしてできる限り両膝を開いていく。このときにかかと同士が離れないようにする。
開ききったらゆっくりと丁寧に元の姿勢へ戻していく。これを10〜15回繰り返したら左右を入れ替える。自分のフィットネスレベルが高い場合は、2〜3セット行ってから次のメニューへ進む。
簡易バージョン:バンドを外しても十分な効果が得られる。

⑪カーフレイズ

セバスチャン・キーンレは「カーフレイズはふくらはぎを鍛えられるトレーニングですが、アキレス腱の怪我の予防にも効果的です。カーフレイズでアキレス腱を強化できます」と説明している。
アキレス腱の強度と自己ベストには相関関係があると言われている。2014年のアイアンマン優勝を経験しているキーンレはアキレス腱の怪我に悩まされた経験があるため、彼の言葉は信じるに値する。
地味だが効果抜群のカーフレイズ

地味だが効果抜群のカーフレイズ

© Barış Acarlı/Red Bull Content Pool

やり方:両足を腰幅に開いて立つ。ふくらはぎの筋肉だけを使ってつま先で立ち、ゆっくりと丁寧に床まで下ろす。これを10回繰り返す。
強化バージョン:シューズを脱げば難度が高まる。

⑫トゥレイズ

カーフレイズと組み合わせて行いたいトレーニングがトゥレイズだ。このトレーニングを何年前から取り入れているキーンレは次のように説明している。
トゥレイズはカーフレイズと合わせて取り組みたい

トゥレイズはカーフレイズと合わせて取り組みたい

© Henner Thies

「トゥレイズはすねの筋肉を鍛えられます。ランナーはハードトレーニング後にシンスプリントなどのすねのトラブルを抱えがちですが、このトレーニングはその予防になります」
やり方:椅子に座り、肩幅より少し狭い幅で両足を平行に置く。両足のつま先を持ち上げてできる限りすねに近づけていき、ゆっくりと丁寧に床へ戻していく。これを10〜15回繰り返す。自分のフィットネスレベルが高い場合は、2〜3セット行ってから次のメニューへ進む。
強化バージョン:上げ下げのスピードを高めれば、強度が高まる。ただし、スピードを高めても丁寧に行う必要がある。
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