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『リーグ・オブ・レジェンド』(以下『LoL』)は、マルチプレイヤー・オンライン・バトル・アリーナ(MOBA)のアクセシビリティを高めつつ、ハードコアゲーマーたちが求める複雑なプレイスキルを備えている基本プレイ無料のビデオゲームとして、圧倒的な人気と長寿を誇っている。
前回、『カウンターストライク』の歴史は振り返ったので、今回は『LoL』の歴史を振り返っていこう。10年以上の長い歴史を経て、このタイトルはゲーミング史上最高のeスポーツタイトルのひとつとなったが、その素晴らしい魅力は今も失われていない。
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新たなMOBA
『LoL』は世界数百万人にプレイされており、多くのゲーマーに “MOBA初体験” を提供しているが、世界初のMOBAタイトルではなく、MOBAを世界に広めたタイトルでもない。しかしながら、このタイトルはMOBAとeスポーツのグローバルブームの火付け役になり、オンラインゲーミングシーンを一瞬で変えた。
MOBAを良く知らない人のために、このジャンルの簡単なまとめを以下に用意した。良く知っている人は次の章へ進んでもOKだ。
基本的にMOBAとは、3本のルート(レーン)とNPCクリーチャーがいるジャングルを備えた線対称のマップ上を自分のキャラクター(俯瞰視点)を操作して戦いながら移動していくジャンルだ。
このジャンルの最も一般的なゲームモードは5人チーム対5人チームの対戦で、各チームには拠点と、タワーと呼ばれる破壊可能な防衛施設が与えられる。目標は、最深部に位置する対戦チームの拠点を攻略(破壊)することだ。
プレイヤーは対戦前に自分がプレイするキャラクター(『LoL』では “チャンピオン” と呼ばれる)を選択する。『LoL』には現在167体のチャンピオンが実装されており、それぞれがユニークなアビリティを備えている。プレイヤーはチームにおける自分の担当(ロール)と作戦(ストラテジー)を考慮して、慎重にチャンピオンを選ぶ必要がある。
各チームには人数分のロールがあり、基本的にはそのうち3つがレーン担当で、レーナーと呼ばれる(トップレーナー / ミッドレーナー / ボトムレーナー)。残る2人のうちの1人はジャングル担当で、ジャングラーと呼ばれる。ジャングラーはレーン間を自由に動き回りながら、必要に応じてレーナーたちをアシストする。
そして最後が援護担当のサポートだ。サポートはアシストが必要な場所があればそこへ優先的に向かうが、基本的にはボットレーナーと行動を共にして、終盤のカギを握るボットレーナーを守り、育てていく。
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誕生の経緯
『LoL』のアイディアは、2005年に『Warcraft III』のMOD『Defense of the Ancients』、通称『DOTA』の生みの親、Steve “Guinsoo” Feakと、このMODのサポートサイトの管理人Steve “Pendragon” Mesconが、創設直後のRiot Gamesと出会ったことがきっかけで誕生した。
FeakとMesconは、『Warcraft III』のゲームエンジンに依存しないスタンドアロンMOBAタイトルを開発したいと考えており、ともに『DOTA』のファンだったRiot Gamesの創設者Brandon BeckとMarc Merrillは、シーンから高く評価されていたこの2人に以前から注目していたのだ。
しかし、FeakとMescon、そしてRiot Gamesの開発チームが実際にこのアイディアを現実に変えるまでは4年かかった。そして2008年にようやく『LoL』が発表されると、リリースから長い時間が経過しており、技術的な制限もあった『DOTA』に飽きつつあったMOBAファンたちから熱烈に歓迎された。
『DOTA』黎明期からFeakを支えてきた古参ファンたちが『LoL』を話題にして盛り上げたため、2009年4月にベータ版がリリースされるや否や大成功を収めた。MOBAファンたちは遂に自分たちがのめり込めるフレッシュなタイトルを手に入れたのだ。
Riot Gamesは『LoL』をバランスに優れたMOBAに仕上げることに注力していたため、このベータ版に収録されたチャンピオンは17体だけだったが、2009年10月の正規リリース時には実に40体も収録できた。『LoL』はそのチャンピオンの数とデザイン、アクセシビリティ、そしてMOBAの斬新な解釈が瞬時に高く評価された。
基本プレイ無料もプレイヤー数増加に貢献したが、何よりも重要だったのは、多くのプレイヤーが内容を気に入って長時間プレイし続けたことだった。アクセシビリティの高さがMOBAのベテランプレイヤーとビギナープレイヤーの両方を満足させたが、他の競技性の高いビデオゲームと同じく、マスターするのは難しかった。
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評価の確立
しかし、これらの多くはゲームプレイにアドバンテージをもたらすものではなく、スキン(チャンピオンのコスチューム)をはじめとするルックスが変わるだけのものだったため、『LoL』の競技性が犠牲になることはなかった。自分のお気に入りのチャンピオンのスキンを購入して、自分の強さをアピールしたり、目立ったりするプレイヤーが非常に良く見られるようになった。
正規リリース後、『LoL』は瞬く間に “世界で最もプレイされているゲームのひとつ” となった。イベントやトーナメントが開催されるようになり、地域リーグも創設されて、腕に覚えがあるプレイヤーたちが実力を競い合える環境が整備されていった。
Riot Gamesは、『LoL』のプレイヤー数は正規リリースから約1年後の2011年にはすでに1,500万人を突破していたと発表している。さらに、この人気を裏付けるように、Riot Gamesはこの頃は毎秒10マッチがプレイされていたとしている。
その2011年に、『LoL』初のインターナショナルトーナメント、Season 1 World ChampionshipがDreamHack内で開催されると、このトーナメントは『LoL』の世界最強を決めるトーナメントとして毎年開催されるようになった(通称:Worlds)。
Worldsはこれまでに1億人を超えるオンライン視聴者数を記録しており、その多くを中国人が占めている。中国チームのEdward Gamingが頂点に立ったWorlds 2021年では、このチームの対戦の最多同時視聴者数がなんと7,386万人を記録した。
実は、中国の視聴者数は検証があやふやで、信憑性に欠ける。しかし、それでも昨年開催されたWorlds 2023の視聴者数は圧倒的で、中国抜きで最多視聴者数640万人を記録し、“最も多くの人に視聴されたeスポーツトーナメント” の世界記録を更新した。
『LoL』には、Worldsの他にもMid-Season Invitational(MSI)と呼ばれるインターナショナルトーナメントがある他、地域リーグも抱えている。地域リーグで有名なのは、ヨーロッパ(LEC)、北米(LCS)、韓国(LCK)、中国(LPL)だ。
メタとプレイスタイルは地域リーグごとに異なっているため、インターナショナルトーナメントでは、視聴者は多種多様なゲームプレイを目にするチャンスに恵まれる。
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生きる伝説へ
しかし、Riot Gamesの『LoL』における最大の功績は、正規リリースから15年経った今も人気が衰えていないこと、新規プレイヤーが増え続けていること、そしてトーナメントの規模が毎年大きくなっていることだろう。『LoL』のゲーミングシーンとの関連性はこれまで以上に高まっているのだ。
この継続的な成功の要因のひとつは、定期的なアップデートと変更だろう。Riot Gamesは約2週間ごとにバランス調整パッチを配布して、チャンピオンやアイテム、システム、仕様を修正している。
また、Riot Gamesは定期的にグラフィックもアップデートしている他、ゲームプレイをフレッシュに保つためにチャンピオンのアビリティの完全リワークも行っている。さらにはメタを面白くするために新チャンピオンも定期的に追加している。Riot Gamesは変化を維持するエキスパートなのだ。
さて、ここまで『LoL』が誕生と開発の経緯、eスポーツとして台頭するまでの歴史、そして人気の秘密などを見てきたが、このMOBAビッグタイトルにはどのような未来が待っているのだろうか?
近年の『LoL』はMOBAに留まらず、デジタルカードゲーム、コミック、グッズ、ミュージックビデオなど様々な分野に進出しており、Netflixでドラマ『アーケイン』も配信されている。
Riot Gamesの時代性を維持する能力、変化を加えてゲームをフレッシュに保つ能力、そしてプレイヤーとファン、視聴者を惹きつけ続ける能力は、『LoL』に大きな成功とともに20周年を迎えさせるはずだ。知らない間に、私たちは今と同じ情熱と喜び、そしてより多くを求める気持ちとともにWorlds 2030を視聴していることだろう。
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